反磁性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
反磁性(はんじせい、Diamgnetism)とは、磁場をかけたとき、物質が磁場の向きと逆向きに磁化される性質のことである。磁化率は負となる。反磁性は、1845年にマイケル・ファラデーによって発見された。
目次 |
[編集] 特徴
物質の持つ反磁性を端的に示す振る舞いとして、反磁性以外の磁性を持たない物質に磁石などを近づけたとき、反発する現象がある。このときの振る舞いは、非常に弱い二つの磁石の同極同士を近づけたときと似ている。この二つの事例で決定的な違いは近づける磁石の極を反転したときに現れる。反磁性を持つ物質に現れる反発力は近づける磁石の極性によらないのである。
このような違いはなぜ現れるのかと言うと、反磁性という性質が、外部磁場の影響により、物質自体が周りの磁場を打ち消す方向の極性の磁石になるという性質であるからである。このようにして現れた物質の磁力は、外部磁場が存在すると言うこと自体に由来しているため外部磁場の消滅と共に消滅する。
反磁性はすべての物質が有しているものの、弱い性質であるため、反磁性による力は、一般的に小さい。反磁性の性質を示す代表的な物質には、水や銅などがある。しかし非常に強い外部磁場のもとでは物体を浮上させることもできる。たとえば 20T 程度の磁場でりんごを浮かすことができる。(外部リンク参照)
[編集] 反磁性の原因
反磁性の起源は、古典的には、次のようになる。 物質中の電子は磁場からローレンツ力を受けて円運動をする。 するとこれは一種の電流であるから、磁場を生じる。 この向きは外部からかけられた磁場とは逆向きである。 この円運動の挙動はジョゼフ・ラーモアによって研究され、さらにポール・ランジュバンによって定式化されたので、これをラーモアの反磁性、もしくはランジュバンの反磁性という。
なお、金属中の電子については量子論的な取り扱いによる定式化がレフ・ランダウによってなされている。 そのため、金属の電子による反磁性は、ランダウの反磁性とよばれている。
すべての物質は電子を持つのでその磁性には多かれ少なかれ反磁性の寄与がある。 しかし、この反磁性の大きさは極めて小さい。ほとんどのものは磁化率にして10-5程度のオーダーしかない。 そのため、常磁性や強磁性などをもたらすような要素、すなわち不対電子によるスピンが存在する場合にはその影に隠れてほとんど見えなくなる。 不対電子が存在しない物質は、弱い反磁性体となる。
[編集] 超伝導体の反磁性
例外的に強い反磁性を持つのが超伝導体である。第一種超伝導体の内部には磁束が侵入できない(マイスナー効果)。 すなわち第一種超伝導体の内部では完全に磁場が打ち消されている。すなわち磁化率が-1である。 このような性質を完全反磁性という。 完全反磁性を用いた例として、物質を浮上させる実験などがしばしば行われている。
[編集] 外部リンク
- 強磁場超伝導材料研究センター (東北大学金属材料研究所) → 研究成果のページに反磁性による磁気浮上の映像がある。