地域国家
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地域国家(ちいきこっか、Region-state)とは、21世紀のボーダレス世界、グローバル経済の中で繁栄していくのに適切な規模を持った「経済繁栄の自然な単位」のことを指す。あるいは、その経済繁栄の自然な単位を成す「地域」や、「国家」、または「巨大都市(メガロポリス、megalopolis)」のことを指す。
地域国家は道州制 (regional system) や連邦国家 (United States // federal state // federate nations ) 制を採用している国の一地域(人口500万人 - 2000万人の経済の中心地とその周辺地域)に比較的見られやすい。そのように、国の一地域の場合もあれば、政治的な境界(国境)にとらわれることなく、実態として国境をまたいで、地域国家としての境界・関係が形成されている場合もある。つまり、地域国家の境界線は、実線(―)ではなく点線(…)で、生き物の如く頻繁に揺れ動き変動している。
実例を挙げると、
- 国自体が地域国家…シンガポール、アイルランドなど
- 国の一部分が地域国家…マレーシアのマルチメディア・スーパーコリドー、中国の大連を中心とする遼東半島地域など
- 2国間以上が地域国家…シアトル(米国)とバンクーバー(カナダ)など。
地域国家においては、政治的に高度の自治権(立法権と徴税権)を持ち、地域国家住民の自治意識は高い。また、サイバーインフラが高度に発達し、サイバーノウハウの人的水準・蓄積レベルが高く、そのため、地域国家の版図はサイバースペースにまで拡張・拡大している。このような開放経済という環境を整えた「地域国家」には世界中から人、カネ、企業、情報が押し寄せて来るため、たとえて言うならば「世界を呼び込んで」繁栄することができる。このため、地域国家とは「繁栄を世界から呼び込む単位」そのものとも言える。
また、地域国家は都市国家と国民国家の中間に位置する国家形態、国家実態のことである。
この「地域国家」という用語は、大前研一によって発見・観測された現象で、大前の著作で1995年に発刊された "The End of the Nation-State"(邦題『地域国家論』)によって初めて発表・提唱された新しい概念・仮説で、まだ、広く一般に普及し使用されている用語ではない。