培養細胞
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培養細胞(ばいようさいぼう)は生体外で培養されている細胞のこと。生体から取り出して、比較的すぐに実験に用いられることは初代培養と呼ばれる。初代培養細胞は、生体内での細胞の性質が比較的よく保たれているが、細胞の純度、性質などがもとの生物の状態や実験条件に左右されるため、均一な条件を整えるのは困難である。一方、長期間にわたって、体外で維持され、一定の安定した性質をもつに至った細胞は、細胞株と呼ばれる。様々な生物種の様々な組織に由来する細胞株が存在する。
これらは、生物学、特に分子生物学や生化学、細胞生物学において in vitro 実験系として広く用いられる。動物実験の縮小のため、動物個体を用いた実験をできるだけ培養細胞で代替しようとする流れがある。しかし、培養条件下では生体内での生理的条件から離れてしまい、また継代するうちに異常染色体などが生じることから、得られた実験結果は元の生物と全く同じに扱うことはできない。利点としては遺伝子導入や RNAi が容易に行えること、凍結により保存可能なことなどがある。
[編集] 有名な培養細胞株
名称 - 由来 - 用途
- CHO - チャイニーズハムスター卵巣
- HEK293 - ヒト胎児腎臓 - アデノウイルス系ベクターのパッケージング
- HeLa - ヒト子宮頸癌由来
- MDCK - イヌの腎臓上皮 - 上皮の細胞生物学
- NIH3T3 - マウス胎児の皮膚
- PC12 - ラット副腎髄質 - 神経細胞分化
- S2 - ショウジョウバエ - 組み替え蛋白質発現
- Sf9 - Spodoptera frugiperda (蛾)- 組み替え蛋白質発現
- Vero - アフリカミドリザル腎臓 - ウイルス感染実験、ベロ毒素活性測定