大分県の盆踊り
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[編集] 大分県の盆踊りの特色
現在、全国各地で盆踊りという文化が廃れてきている中、大分県には昔ながらの盆踊りが残っている。 踊りの種類と、唄の種類の多さには目を見張るものがあり、これには小藩分立の歴史や、上方からの座敷唄の流入などが深く関係している。新作踊りも数多く作られてきたが、別府市などを除いて、未だに昔ながらの踊りが幅をきかせている。
[編集] 盆踊りの種類(名目)
盆踊りには、様々な種類がある。
- 初盆の供養踊り
- その名の通り初盆供養の踊り。漁師町など、家が狭い土地に密集しているために各家に踊りを踊れるほどの広さの庭がない所は寄せ踊り、その他の所は庭入りを行っていたのだが、現在は寄せ踊りが多くなった。大分県は8月盆だから、9月の13日から15日の間に行われるはずであるが、旧暦から新暦に移行したときに、8月13日から15日の間に行うのが一般的になり、今に至る。
- 先祖の供養踊り
- これは、初盆であるか否かに関係なく、すべての家庭の先祖の供養をする目的であるために、寄せ踊りで行われた。現在は初盆供養と先祖供養を兼ねて、寄せ踊りをすることが多い。初盆供養と区別する場合には、普通は初盆供養の方を先に行う。
- 地蔵踊り
- 地蔵盆の踊りで、8月24日頃に寄せ踊りを行うが、現在では踊らなくなった所もある。
- お大師様の踊り
- 弘法大師の盆踊りで、8月の17日頃に行うが、現在では踊らなくなった所も多い。
- 娯楽としての盆踊り
- かつて、盆踊り以外にたいして娯楽もなかったような時代には、田の草取りなどきつい仕事を皆で片付けた日に、夜、寄せ踊りを行うことがあった。特に農村ではよく見られた。
- 八朔踊り
- 旧暦8月1日に行っていた踊りだが、現在ではほとんど踊らなくなってしまった。従って、地蔵踊りが踊りおさめとなる場合が多い。
- 盆踊り大会
- 行政主体の祭りのときなどに催される盆踊り。大抵は懸賞踊りであり、数人でチームを組んで出場することが多い。多くの場合は個人でも参加できる。
[編集] 庭入り
初盆供養の踊りのときに、その集落内の初盆の家を一軒一軒まわって踊るもの。踊りながら初盆の家の間を行進するのではなく、それぞれの家の庭で踊る。庭入りは一軒あたり2時間はかかるので、踊り終わりが夜半をすぎてしまうことも多く、初盆の多い年は次の日の朝までかかることもざらであったし、高齢化・過疎化の影響で現在では寄せ踊りを行う所の方が多くなっている。 庭入りの概要を述べる。これは一例であって、地域により異なる。
- 初盆の家に到着後、区長などがその家の人に挨拶し、その後全員でおまいりをする。
- 皆で和讃を唱えたあと、まず男性だけで「ばんば踊り」という踊りを踊る。
- その後、女性や男性も加わり、「まっかせ」「大津絵」「レソ」などを次から次に踊る。
初盆の家庭の人も踊りに加わり、遺影を抱いて踊ったりする場合もある。
- 15種類くらいの踊りを踊る場合は、8種類くらい踊ったところで休憩。初盆の家の人から、踊り手にタオルなどが配られる。
- 休憩後、「ヤッテンサンノ」「二つ拍子」などを次から次に踊る。
- 最後に、男性だけで「けだし」という踊りを少しだけ踊る。
- 初盆の家の人に挨拶して、皆で次の家へ急いで移動する。
*踊りの種類が10くらいある所も少なくないが、必ず所定の踊りを残種類踊ってから次の家へ移動する。
[編集] 寄せ踊り
公民館や広場に集まって行う盆踊りであり、現在よく行われるものである。集落ごとの小規模な踊りの場合、何時から踊り始めるかは厳格には決めていない場合が多い。そこで、大抵は寄せ太鼓をたたいたりして、集落の人を呼び集める。小さな輪が立つくらいの人数になったら踊りを開始するのが普通である。
[編集] 踊りの形態
- 唄 新作踊りの場合を除いて、通常は口説き手(音頭取り)の口説きに合わせて踊る。盆踊り唄には、鈴木主水などの長編を延々と口説く「段物」と、7・7・7・5(例・踊り踊るならしなよく踊れ、しなのよいのを嫁に取る)を自由に口説く「切り口説き」と、曲と歌詞が固定しているものとがある。
- 楽器 太鼓のみ用いるところが最も多いが、中には三味線を用いたり、楽器は一切用いずに踊りながら団扇で拍子をとる(団扇太鼓という)ところもある。
- 櫓 庭入りの場合、櫓は設置しないため、口説き手(音頭取り)は輪の真ん中、または庭の隅などで口説く。寄せ踊りの場合は櫓を設置し、その上に上がって口説く。
- 踊り手 普通は輪になって踊る、輪踊りである。地域によって右回りか左回りかが決まっており、中には踊りの種類によって進行方向が変わる地域もある。
- 組踊り 組踊りは、アヤ踊りと団七のみ。アヤ踊りは男女一名ずつ、団七踊りは女・男・女というふうに女性が男性を挟むように、三人一組で踊る。
[編集] 地方別の特色
- 代表的な踊り
- イ・切り口説き…博多踊り、思案橋、米搗き、麦搗き、さっさ、番所踊り、サイコロサイなど。
- ロ・段物…レソ、マッカセ、盂蘭盆経、ドッコイサノサ、佐伯踊り、ヤンソレサ、六調子、千本搗き、七つ拍子、九つ拍子、三つ拍子、二つ拍子など
- ハ・固定…大津絵、書生さん、寿司押しなど
- 旧耶馬溪町、本耶馬溪町、山国町では、太鼓を用いない。
- 代表的な踊り
- イ・切り口説き…左ヱ門、ベッチョセ、らんきょう坊主、一つなえ、浦辺の唐芋、粟踏*みなど。
- ロ・段物…三つ拍子、マッカセ、レソ、エッサッサ、杵築踊り(杵築市では踊らない)、六調子、二つ拍子、ヤンテコ、ヤッテンサンノ、ヤンソレサ、豊前踊り、七つ拍子など。
- ハ・固定…ばんば踊り、臼すれなど。
- 別府市街地は「別府音頭」などの新作踊りを踊る場合が多い。
- 旧山香町周辺の「山家踊り」…三つ拍子、レソ、ヤッテンサンノ、二つ拍子、豊前踊りなど。
- 豊後高田市の「草地踊り」…ヤンテコ、レソ、マッカセ、ヤンソレサ、六調子。
- 姫島村の「姫島盆踊り」…きつね踊り、たぬき踊り、アヤ踊り、銭太鼓踊りなど。
- 代表的な踊り
- イ・切り口説き…猿丸太夫、左ヱ門、芸子、かぼちゃ、はんぶし、オヤマカチャンリン、麦搗き、勝五郎、八百屋お七、お夏清十郎など。
- ロ・段物…レソ、マッカセ、三勝、しんぱんくずし、三つ拍子、二つ拍子、一つ拍子、かますか踏み、佐伯踊り、銭太鼓五つ、扇子踊り、切り越え、しょうご節、銭太鼓七つなど。
- ハ・固定…由来、団七、二孝女踊り、平家踊りなど。
- 旧湯布院町の一部地区「津鮎踊り」…チリリン、恋慕、笠づくし、五尺、ヤンサテナなど15種類。
- 大分市鶴崎の「鶴崎踊り」…猿丸太夫、左ヱ門
- 津久見市の「津久見踊り」…扇子踊り、三勝
- 代表的な踊り
- イ・切り口説き…思案橋、ショーガエ、伊勢音頭、千本搗き、竹田踊り、米搗き、など。
- ロ・段物…こやおこし、マッカセ、トコエー、ソレガエーヤ、三勝、六調子、一つ拍子、二つ拍子、レソ、三つ拍子、など。
- ハ・固定…目連尊者、きょくてんまわし、ばんば踊り、東西南北など。
- 玖珠町の「山路踊り」
- 代表的な踊り
- イ・切り口説き…左ヱ門、対馬、大阪節など。
- ロ・段物…扇子踊り、長音頭、どんさく、たもと、はたんだ、一本、兵庫節など。
- ハ・固定…目連尊者、念仏踊り、お夏清十郎、お染久松、淀の川瀬、お塩亀松、牡丹長者、与勘兵衛、一郎兵衛、孝女、小五郎、那須与一、団七、お市後家女、お竹さん、小野道風、初春、ぼんさん忍ぶ、しんじゅ、きりん、いろは、大門、ご繁昌、浮名、花扇、茶屋のれん、恋慕、猿丸太夫、ばんば踊り、白石、様は三夜、高い山、本調子、南無阿大悲、芸子、わが恋、智慧のうみやま、十二梯子など。
- 佐伯市下堅田の「堅田踊り」…全部で50種類以上にのぼる多様で洗練された踊り。
- 扇子、提灯、手ぬぐい、団扇、綾棒など、道具を用いる踊りが多い。
- 代表的な踊り
- イ・切り口説き…猿丸太夫、もの搗き、八百屋、お夏、銭太鼓十三、東山、諸さし、伊勢音頭など。
- ロ・段物…三つ拍子、二つ拍子、九勝、ヨヤセ、風切り、弓引き、銭太鼓七つ、杵築踊り、レソ、かますか踏み、こやおこし、千本搗き、六調子など。
- ハ・固定…団七、ばんば踊りなど。