大阪市交通局2501形電車
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大阪市交通局2501形電車とは、大阪市交通局が保有していた路面電車車両である。1955年に4両が1001形から更新されて登場した。
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[編集] 概要
戦前の市電の代表車として市電全線で活躍していた1001形も、1950年代に入ると、さすがに老朽化と陳腐化は覆い隠せなくなっていた。そこで1001形の代替車両の投入が検討されたが、同形が97両在籍していたことから、輸送需要の伸びに対応して新車を投入しつつ、1001形の代替車をすべて新車でまかなうことは困難であった。こうした状況の下、2501形は、今後の1001形更新車の試作車として、1955年3,5月に大阪車両工業で更新された。
2501形は、2001形ベースの側面窓配置D5D4、前面3枚窓の中型車として登場したが、方向幕部分は2001形と異なり、行先方向幕が大型化されて中央部に移り、系統幕がその右側に取り付けられる形に変更された。行先方向幕が大型化されたのは、2201形での成果を生かしたものであるが、系統幕の位置を変更したのは、同じく試作車として登場した、3000形同様、乗客やポイント操作員の視認性を考慮してテストしたものと思われる。この他にも2501号で直流蛍光灯が(他の3両は管球)、2504号ではスチールサッシがそれぞれ採用されるなど、試作車として今後の更新に関連するもののテストベッドとなった。このため、スチールサッシの2504号は、木製の窓枠の他の3両に比べると窓枠が細くなっているという外観上の違いがある。また、更新車ゆえ当然であるが、足回り及び電装品は、種車の1001形から流用したブリル77E型台車を履いてモーターは30kw/hのGE-247-Aを4個搭載し、制御器も同じGEのK-39系を装備していた。
[編集] 目立たない更新車
2501形は2001形ベースの車体に1001形の足回りを持つ、堅実な設計の更新車であった。しかし、新・大阪市電スタイルの3000形や2201形がすでにデビューしているにもかかわらず、一世代前の2001形ベースの車体で更新された2501形は、車輌課長の宮本政幸に「改造新車」と命名されたとはいえ、2001形の方向幕が大きくなっただけの地味で目立たない車両であった。大阪市電の車体更新車といえば、戦前に1001形(初代)を更新し、市民からも「水雷型電車」というあだ名を授けられるくらい親しまれ、市電のイメージアップにも一役買った801形が有名であるが、2501形では801形に匹敵するPR効果は期待できないことから、1955年下期からは、2201形(1956年以降は3001形)ベースの車体に更新した2601形で更新することとなった。こうして、2501形への更新は1回4両だけで終了し、形式としても1651形と並ぶ、大阪市電生え抜きの車両の中では最も少ない1形式4両の少数派となった。しかし、1651号は新造時は5両製造され、戦災で1両失って4両となったものであり、同様に阪堺電鉄(新阪堺)引継のボギー車も1301形以外は戦渦に遭う前は各形式6,7両あったことから、4両というのは1301形同様、新造時の最小両数である。
[編集] 地味な生涯
2501形は当初分散配置の後、全車春日出車庫を経て三宝車庫に配属され、同車庫所属の29(出島~芦原橋~桜川二),30(三宝車庫前~芦原橋~福島西通),31(出島~芦原橋~桜川二~湊町駅前~上本町六)の各系統で使用された。更新車とはいえ三宝車庫では数少ない新車であったが、両数が少ないことと、走っている路線が30系統の桜川中之島線や31系統の九条高津線以外は市内中心部を外れた郊外路線であったことから、目立たず、地味に走っていた。その後鶴町車庫を経て再び春日出車庫に転属するが、国道1,2号線上を走る春日出所属の16系統(桜島駅前(1962年以降は島屋橋)~玉川町四~桜橋~東野田~今福)以外はやはり郊外路線を走った(といっても16系統も千鳥橋以西と京橋以東では市街地の中心を外れるが)ことから、同じように「改造新車」と命名され、他形式からの改造車も含めると114両の多数が更新されて市内全域で活躍した2601形に比べると、同じ更新車ながらもずっと地味な存在であった。
そんな2501形であったが、1001形更新の直接制御車であったことからベテランから若手まで幅広い運転手が乗務できたため、市電最末期の1969年2月の16系統の廃止に伴う春日出車庫の廃止まで生き残った。廃車後の保存車及び他社への譲渡車はない。
[編集] 参考文献
- 『第二すかたん列車』 吉谷和典著 1987年 日本経済評論社
- 『なにわの市電』 小林庄三著 1995年 トンボ出版
- 『大阪市電が走った街 今昔』辰巳博著 福田静二編 2000年 JTB
- 『関西の鉄道』各号 29号『大阪市交通局特集PartII』1993年 42号 『大阪市交通局特集PartIII 大阪市電ものがたり』 2001年 関西鉄道研究会
- 『全盛期の大阪市電』 『RM LIBRARY 49』 2003年8月 ネコ・パブリッシング