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字音仮名遣 - Wikipedia

字音仮名遣

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

字音仮名遣(じおんかなづかい)とは 、日本漢字音読みを表わす「かなづかい」を指すが、特に江戸時代本居宣長が定めた歴史的字音仮名遣のことをいう。

「かなづかい」は言葉どおりに考えると「かなの使い方、書き方」になるが、字音仮名遣いは漢字を仮名で書きかえるものとすると、漢字を説明するものであって仮名を説明する「かなづかい」とはいえない。そのため字音仮名遣を歴史的仮名遣に認めない立場もある。 ただし、日本語の漢語語彙に関して同音語が別の単語でどう書き分けられるかが問題になることが多く、歴史的字音仮名遣を語源主義による同音語の書き分けとし、「かなづかい」と定義する見方もある。

「かなづかい」の定義とその具体的名書き方については意見が分かれており、詳しくは「歴史的仮名遣」を参照。

目次

[編集] 字音仮名遣いの由来

従来、漢語漢字で書くものであり、その字音を仮名で書きとる方法を確立させる必要性はあまりなかった。そのため江戸時代国学において契沖歴史的仮名遣を研究し確立した際にもその適用範囲は和語のみであり、漢語にはほとんど及ばなかった。漢字音の仮名遣いに関する研究は本居宣長の『字音仮字用格』に至ってようやく完成され、本居宣長はこれを「字音仮名遣」と名づけた。現在は「じおんかなづかい」と読むが当時の国学者たちは「もじごえかなづかい」と読んだと推測されている。本居宣長は万葉仮名と中国の韻書の反切を対照させる方法をとっており、字音仮名遣は反切資料を忠実に反映させようとしたいわば理論的な復元作業であった。これをうけて太田全斎は『漢呉音図』を著し、さらに白井寛蔭が『音韻仮字用例』を著すことによって字音仮名遣いは整備された。現在の漢和辞典や古語辞典に記されている歴史的字音仮名遣はこれにもとづいている。

以上のように歴史的字音仮名遣は宣長が契沖の歴史的仮名遣を適応して定めたものであり、奈良・平安・鎌倉・室町の人々が読んだ漢字音を反映しているものではない。例えば平安時代の字音資料において合拗音には「くゎ」「く」「く」の三系統があったが、宣長は江戸時代の発音にもとづき「くゎ」だけを合拗音として認めている。また中国語の中古音韻尾には[m][n][ŋ]の区別があり、これを「む」「ん」「う(い)」で書き分けて例えば「三」は「さむ」と書かれていたが、宣長は「む」を「ん」に統一し「さん」とした。

またこのような字音仮名遣は、反切に忠実な漢字・漢文の読音であった漢音にはうまく適応されたが、日本語の日常語としてもなじんでいた呉音に関しては反切による復元と古来よりの読音とが合わない場合が多く見られ、明治以降の研究によって定められていったが、現在でも辞書ごとにことなるものが少なくない。

[編集] 内容

現代かなづかいと比較して以下のような特徴がある。

  • 「ゐ」、「ゑ」、「を」、「ぢ」、「づ」を使用する。
  • 「イ」の発音に対して「い」、「ゐ」の二通りの表記がある(「ひ」と書いて「イ」と読むものはない)。
  • 「エ」の発音に対して「え」、「ゑ」の二通りの表記がある(「へ」と書いて「エ」と読むものはない)。
  • 「オ」の発音に対して「お」、「を」の二通りの表記がある(「ほ」と書いて「オ」と読むものはない)。
  • 「カ」、「ガ」の発音に対してそれぞれ「か」・「くゎ」、「が」・「ぐゎ」の二通りの表記がある。
  • 長音の表記に「ふ」を使用することがある(長音以外で「ふ」と書いて「ウ」と読むものはない)。
    • ウ段拗長音は、例えば「キュウ」に対して「きう」、「きふ」、「きゅう」のような表記がある。
    • オ段長音は、例えば「ホウ」に対して「はう」、「はふ」、「ほう」、「ほふ」のような表記がある。
    • オ段拗長音は、例えば「キョウ」に対して「きゃう」、「きょう」、「けう」、「けふ」のような表記がある。
    • これらの表記はすべての行に完備されているわけではない。例えばバ行オ段拗長音「ビョウ」に対応する表記は「びゃう」と「べう」しか存在しない(「びょう」、「べふ」は存在しない)。

「くゐゃう」、「ぐゑん」等の表記を認めた場合、

  • 「キ」、「ギ」の発音に対してそれぞれ「き」・「くゐ」、「ぎ」・「ぐゐ」の二通りの表記がある。
  • 「ケ」、「ゲ」の発音に対してそれぞれ「け」・「くゑ」、「げ」・「ぐゑ」の二通りの表記がある。
    • 「キョウ」に対して「くゐゃう」のような表記がある(「くゐょう」、「くゑう」、「くゑふ」は存在しない。「キュウ」に対する「くゐう」、「くゐふ」、「くゐゅう」も存在しない)。

さらに、「あむ」のような表記を認めた場合、

  • 「ん」の発音に対して「ん」、「む」の二通りの表記がある。

現代かなづかいとの対応を表にまとめると次のようになる (空欄はそのような字音をもつ字がないことを示す)。

ウ段拗長音
現代かなづかい 字音仮名遣
きゅう きう きふ きゅう
ぎゅう ぎう
しゅう しう しふ しゅう
じゅう じう じふ じゅう
ぢう ぢゅう
ちゅう ちう ちゅう
にゅう にう にふ にゅう
ひゅう ひう
びゅう びう
りゅう りう りふ りゅう
ゆう いう いふ ゆう
オ段長音
現代かなづかい 字音仮名遣
おう あう あふ おう おふ
わう をう
こう かう かふ こう
くゎう
ごう がう がふ ごふ
ぐゎう
そう さう さふ そう
ぞう ざう ざふ ぞう
とう たう たふ とう
どう だう だふ どう
のう なう なふ のう
ほう はう はふ ほう ほふ
ぼう ばう ぼう ぼふ
もう まう もう
ろう らう らふ ろう
オ段拗長音
現代かなづかい 字音仮名遣
きょう きゃう きょう けう けふ
くゐゃう
ぎょう ぎゃう ぎょう げう げふ
しょう しゃう しょう せう せふ
じょう じゃう じょう ぜう
ぢゃう でう でふ
ちょう ちゃう ちょう てう てふ
にょう にょう ねう
よう やう よう えう えふ
りょう りゃう りょう れう れふ
四つ仮名
現代かなづかい 字音仮名遣
じき じき ぢき
じく じく ぢく
じつ じつ ぢつ
じゅ じゅ
じゅく じゅく
じゅつ じゅつ
じゅん じゅん
じょ じょ ぢょ
じょく じょく ぢょく
じん じん ぢん
じむ ぢむ
い・ゐ
現代かなづかい 字音仮名遣
いき ゐき
いく いく ゐく
いち いち
いつ いつ
いん いん ゐん
いつ
え・ゑ
現代かなづかい 字音仮名遣
えい えい ゑい
えき えき
えつ えつ ゑつ
えん えん ゑん
えむ
お・を
現代かなづかい 字音仮名遣
おく おく をく
おつ おつ をつ
おん おん をん
おむ
か・くゎ
現代かなづかい 字音仮名遣
くゎ
ぐゎ
かい かい くゎい
がい がい ぐゎい
かく かく くゎく
がく がく
かつ かつ くゎつ
がつ ぐゎつ
かん かん くゎん
かむ
がん がん ぐゎん
がむ
き・くゐ
現代かなづかい 字音仮名遣
くゐ
ぐゐ
きょく きょく くゐょく
ぎょく ぎょく
きん きん くゐん
きむ
ぎん ぎん
ぎむ
け・くゑ
現代かなづかい 字音仮名遣
くゑ
ぐゑ
けい けい くゑい
げい げい
けき くゑき
げき げき ぐゑき
けつ けつ くゑつ
げつ げつ ぐゑつ
けん けん くゑん
けむ
げん げん ぐゑん
げむ
現代かなづかい 字音仮名遣
あん あん あむ
かん かん かむ
がん がん がむ
さん さん さむ
ざん ざん ざむ
たん たん たむ
だん だん だむ
なん なん なむ
はん はん はむ
ばん ばん
まん まん
らん らん らむ
わん わん
現代かなづかい 字音仮名遣
いん いん いむ
きん きん きむ
ぎん ぎん ぎむ
しん しん しむ
じん じん じむ
ちん ちん ちむ
ぢん ぢん ぢむ
にん にん にむ
ひん ひん ひむ
びん びん
みん みん
りん りん りむ
現代かなづかい 字音仮名遣
うん うん うむ
現代かなづかい 字音仮名遣
えん えん えむ
けん けん けむ
げん げん げむ
せん せん せむ
ぜん ぜん ぜむ
てん てん てむ
でん でん でむ
ねん ねん ねむ
へん へん へむ
べん べん
めん めん
れん れん れむ
現代かなづかい 字音仮名遣
おん おん おむ
こん こん こむ
ごん ごん ごむ
そん そん
ぞん ぞん
とん とん
どん どん どむ
のん
ほん ほん
ぼん ぼん ぼむ
もん もん
ろん ろん

[編集] 和語と漢語語彙の区別

[編集] (漢語語彙であればオ段+ウ、オ段+オは必ず和語)

「現代かなづかい」で「党利」が「とうり」で、「通り」で「とおり」、「多い」が「おおい」で「王位」が「おうい」という違いがある。これは現在の日本語では「同音語の書き分け」と看做され、「王様」を「おおさま」、「そのとおり」を「そのとうり」と書くなど、混同する人が多い。

この2語の場合、「党利」と「王位」は漢字の音読みでできた漢語語彙、「字音語」で、「通り」と「多い」は日本語固有の和語であり、漢語語彙ではオ段長音は「う」で受け、和語の中にはオ段長音を「お」で受けるものが多いことが原因になる。

「歴史的仮名遣」では「党利」は「たうり」、「王位」は「わうゐ」になり、「通り」は「とほり」、「多い」は「おほい」(さらに古語では「おおき」「おほし」)になる。 このうち漢語語彙を現代の北京語で発音すると、「党利」は dănglì [taŋli]となり、日本語音「たうり」tauri と比較すると、ang が au になっており、語末の ng が u になっている。また、同様に、「王位」は wángwèi,朝鮮語で wangwi となり、これも「わうゐ」wauwi と比較すると、やはり、ng が u になっており、wei が wi に対応している。

「ゐ」は「為」の草書で、「為」も中国漢語で wéi,wèi 朝鮮語で wi であり、日本語音も「ゐ」wi がこれらと同系であることは一目瞭然である。

一方、和語の「とほる」、「おほい」は、「ほ」が[Φo]であったことから古音は[toΦoru],[oΦoi]であったと推測できる。

[編集] 漢語語彙同士の区別

[編集] 中古音との対応

いわゆる終戦後の「現代かなづかい」では、漢字音で[o:]であるものは「おう」と書く事になっている。 一方、いわゆる終戦前の「歴史的仮名遣」では「拗(漢音:あう)」、「欧(おう)」、「央(あう)」、「王(わう)」、「鴨(あふ)」の書き分けがある。

これらは江戸時代からいわゆる終戦直後までの近代日本では、今と同様、「オー」と読まれていたようだが、これらの漢字音を取り入れた古代日本人は、きちんと発音を区別してことを反映している。このうち「鴨」(あふ)や「甲」(かふ)の「ふ」はいわゆる入声で中古漢語の音節末にあった内破音[p]に由来するが、平安時代におきたハ行転呼により「う」に変化し、例えば「甲」は「かう」「かっ」と発音されるようになった。その後、鎌倉時代頃から母音の長音化がおこり、「あう」は[ɔː]になり、「おう」は[o:]になったが、江戸時代になるとこの区別は失われ、ともに「オー」になった。なお中古音の音節末音[ŋ]は「う」または「い」で書き写したため、二重母音の終始音の[u]に由来するものとの区別はできていない。

[編集] 朝鮮語漢字音との対応

日本語の中の漢語系語彙は日本語の中で同音語が集中している箇所であり、「歴史的仮名遣」による書き分けはこの「字音仮名遣」でこそ本領を発揮すると言えるし、それは今の中国漢語や朝鮮語の発音による区別にも対応している。これは朝鮮語漢字音も日本語の漢音・呉音同様に中古音を反映しているためで、これらの漢語音は今の朝鮮語で読むと、「歐(欧)」は u または ku(北京語で ōu),「央」は ang,「王」は wang,「鴨」は ap というように区別している。ただし、朝鮮語においても音韻変化が起こっているため二重母音が単母音化したといった違いがある。

山野車輪の漫画『嫌韓流』で「朝鮮語は全部ハングルで書くので同音語を区別できない」という意見があり、例として「相関」、「壮観」、「創刊」、「送還」、「総監」を挙げているが、これらは日本語で同音語になる例であって、日本語で「そうかん」になるのに対し、朝鮮語では以下のように区別する。

「相關」sang-gwan,「壮觀」jang-gwan,「創刊」chang-gan,「送還」song-hwan,「總監」chong-gam

これらは日本語の旧「字音仮名遣」でも大方、区別できる。

「相關・壮觀(さうくわん)」sau-kwan,「創刊(さうかん)」sau-kan,「送還(そうくわん)」sou-kwan,「總監(そうかん)」sou-kan

  • 「現代かなづかい」で「そう」sou
  • 「現代かなづかい」で「かん」kan

[編集] 開合の区別

朝鮮語の sang と jang が日本語で「さう」sau になり、song が「そう」sou になるように、ng が u になると同時に、その前の母音(a または o)が日本語古音でも保存されていた。近代まで使われた「字音仮名遣」はそれを反映していた。これらは鎌倉時代頃から長音化したが区別は残っており、a系統の長音を「開音」、o系統の長音を「合音」と呼んでいる。開合の区別は江戸時代には失われた。

[編集] 合拗音

また朝鮮語の gan,gam が日本語で「かん」kan になり、gwan と hwan が「くわん」kwan になるように、唇を丸める w が日本語古音では残っていた。これを合拗音と呼んでいる。日本の近代文学が英語圏で紹介されると、「怪談(くわいだん)」が Kwaidan,「貫一(くわんいち)」が Kwanichi になるように、近現代でも[kwa]の発音が日本に残っていた。北京語で読めば「怪談」は Guaitan,「貫一」は Guanyi になり、Gua が「くわ」kwa になっていることがわかる。

[編集] 同音語

このように「かなづかい」による同音語の区別とは、かつて、発音が違っていたころの表記をしているわけで、漢語語彙の「り(利)」と「り(理)」、和語の「ひ(火)」と「ひ(日)」のように、平がなが発明された時点で既に日本で同音語だったものについては、「かな」で書き分けることはできない。

「かなづかいは同音語を書き分けるもの」という見解は、以前、同音でなかった語の組み合わせについて言える結果であって、「かな」創造や表記の目的ではない。「歴史的仮名遣」も本来は表音表記から始まっているので、もとの中国漢語や朝鮮漢語音で同音であれば、区別しようがない。

また、日本語に入った段階で同音になってしまった例も多い。牙音と喉音がその一例で、中国語の中古音では軟口蓋音破裂音牙音(見母・渓母・郡母)、摩擦音喉音(暁母・匣母)に分類していたが、日本語の漢音ではどれもカ行で書きとった。一方、朝鮮語では牙音は k で表し、暁母や匣母などの喉音は h で表している。見母の「光・廣」が kwang 「果・菓」が kwa 、渓母の「科」がkwa というように k で表し、匣母の「黄・皇」が hwang 、「華」が hwa、暁母の「化・花」が hwa になるように h で書きとったが、日本語では「くわう」kwau や「くわ」kwa になるように、古代の日本人が漢語語頭の牙音と喉音を同じ k で取り入れた結果、同音になったため「歴史的(字音)仮名遣」でも書き分けることができない。ただし、匣母に関しては呉音ワ行あるいはガ行で書きとっており、「黄・皇」を「わう」、「華」を「げ(ぐゑ)」というように区別できるため、呉音による読音が定着したものが多く、例えば「和」(漢音「くわ」呉音「わ」)・「画」(漢音「くわい」呉音「ぐわ・ゑ」)・「惑」(漢音「こく」呉音「わく」)といった字で漢音を使うことは少ない。

これが影響して、近代になって使われるようになった「科学(くわがく)」と「化学(くわがく)」、「文科(ぶんくわ)」と「文化(ぶんくわ)」は、新旧どちらの「仮名遣」でもそれぞれ同じになり、漢字を使わないと区別できない。

朝鮮語であれば「科學」は kwahak,「化學」は hwahak,さらに「文科」は mun-gwa,「文化」は munhwa で、今の朝鮮民族の発音でも区別が明確になっている。

[編集] 日本語で「同音」になっている漢字、熟語の例

[編集] 「航・講・江(かう)」「廣・光・黄(くわう)」、「公・紅(こう)」、「甲(かふ)」→こう

朝鮮語で「航」は hang,「講・江」は kang,日本語で「かう」kau になった。

朝鮮語で「廣・光」は kwang,「黄」は hwang,日本語で「くわう」kwau になった。

朝鮮語で「公」は kong,「紅」は hong,日本語で「こう」kou になった。

朝鮮語で「甲」は kap,これが日本語で「かふ」kahu(kaFu)になった。

[編集] 「医・意・以・衣(い)」「為・威・胃・位(ゐ)」→い

「医・意・以・衣」は北京語で yi,朝鮮語で eui,これが日本語では「い」i になった。

「為・威・胃・位」は北京語で wei,朝鮮語で wi,これが日本語では「ゐ」wi(ウィ)になった。

[編集] 「音・陰・印(いん)」「院・員(ゐん)」→いん

「音・陰・印」は北京語で yin,朝鮮語で「音・陰」が eum,「印」が in,これが日本語で「いん」in になった。

「院・員」は北京語で yun,朝鮮語で weon で、唇をまるめる音で始まり、これが日本語の「ゐん」win になった。

[編集] 「延・演・炎(えん)」「遠・圓・園(ゑん)」→えん

「延・演・炎」は北京語で yan,日本語で「えん」en だが、*「イェン」*yen だった可能性もある。

「遠・圓・園」は北京語で yuan,朝鮮語で weon,日本語で「ゑん」wen.

朝鮮の貨幣単位には won(圓、weon)の他に hwan(圜)があった。

「圜」は日本語音読みで「くわん」kwan である。

[編集] 「音・陰・恩(おん)」「温、遠(をん)」→おん

「音・陰」は北京語で yin,朝鮮語で eum,「恩」は北京語で en,朝鮮語で eun,これが日本語では「おん」on になった。日本語の「陰陽」は「いんよう」と「おんみょう」の2種類。「いんよう」は「いんやう」in-yau が訛った物で、北京語 yinyang に近い。「おんみょう」は旧仮名で「おんやう」も有りうるが「おむやう」も考えられる。

朝鮮語で「陰陽」は eumyang である。

北京語で「温」は wen,「遠」は yuan で、日本語では「をん」won になった。

[編集] 「光州・広州/廣州(くわうしう)」「杭州(かうしう)」→こうしゅう

朝鮮語「光州」Kwangju,北京語「廣州」Guangzhou,「杭州」Hangzhou

guang, kwang が日本語の「くわう」kwau になり、hang が「かう」kau になった。

[編集] 「黄海(くわうかい)」、「公海・紅海・公開(こうかい)」、「航海(かうかい)」、「後悔(こうくわい)」→こうかい

北京語で「黄海」Huanghai,「公海」gonghai,「紅海」Honghai,「公開」gongkai,「航海」hanghai,「後悔」houhui

huang が日本語で「くわう」kwau になる。

gong,hong,hou が日本語で「こう」kou になる。

hai,kai が日本語で「かい」kai になる。

hui が日本語で「くわい」kwai になる。

[編集] 「級友(きふいう)」、「旧友・球友(きういう)」→きゅうゆう

「級(きふ)」kihu は朝鮮語 keup と同系。

「旧(舊)」は朝鮮語で ku,北京語で jiu であり、漢語語彙「友」は朝鮮語で u, 北京語で you.この iu, you は日本語で「イ段+ウ」iu になる。

[編集] 「子宮(しきゆう)」、「至急・支給(しきふ)」、「四球・死球(しきう)」→しきゅう

朝鮮語で「子宮」jagung,「至急」shigeup,「支給」jigeup,「四球・死球」sagu.

「急・給」keup→geup が日本語の「きふ」kihu(kiFu<*kipu)に対応。

「宮」kung のように ung や ong で終り、「現代かなづかい」で「きゅう」のように「ゅう」で終わる漢字音は、「歴史的字音仮名遣」でも「きゆう」のように「ゆう」になる。

[編集] 「関心(くわんしん)」、「感心(かんしん)」→かんしん

「関(關、くわん)」kwan は朝鮮語で kwan,「感(かん)」kan は朝鮮語で kam になる。

フィギュアスケートミッシェル・クワン(Michelle Kwan)の姓は「関」Guan である。

日本で「函数(凾數、かんすう)」を「関数」と書き換えたのは「関(くわん)」kwan の発音が「函(かん)」kan と同じになったことによる。

朝鮮語では「關」kwan と「凾」ham の違いは維持されているので、function は「凾數」hamsu である。

北京語でも「函数」hanshu であって、「関」guan の字で代用することはない。

[編集] 「過激(くわげき)」、「歌劇(かげき)」→かげき

「過激(くわげき)」kwageki は朝鮮語の kwa-gyeok になる。

「歌劇(かげき)」kageki は朝鮮語で ka-geuk になる。

「菓子(くわし)」(朝鮮語で kwaja)と「歌詞(かし)」(朝鮮語で kasa)も同様。

[編集] 「火事(くわじ)」、「家事(かじ)」→かじ

「火」は北京語 huo,朝鮮語 hwa から日本語の「くわ」kwa に。

「家」は北京語で jia だが、朝鮮語 ka が原音に近く、日本語でも「か」ka になっている。

「鍛冶(かぢ)」は和語で本来は kadi>kadzi である。

[編集] 「方法(はうはふ)」→「ほうほう」

朝鮮語で pangpeop である。pang が「はう」hau(<*pau)に対応し、peop が「はふ」hahu(<*papu)と同系である事は一目瞭然。

[編集] 「除・女(ぢよ)」、「徐(じよ)」→じょ

北京語では「除」が chú,「女」が nü で、最初に舌先が上歯茎に着く点が共通しており、「ぢよ」dyo という「仮名遣」はその名残である。一方、「徐」は北京語で xu,朝鮮語で seo であり、舌が上歯茎に近づくだけで着かない。「じよ」zyo はそのことを示している。

「地面(ぢめん)」、「地震(ぢしん)」の「地」は本来、「地球(ちきゅう)」や「大地(だいち)」などの「ち」との関連もあって「ぢ」であったが、いわゆる終戦後の「かなづかい」改訂で「じめん」、「じしん」になった。

[編集] 「自画(じぐわ)」、「自我(じが)」→じが

「自画自賛」を「自我自賛」と誤記する日本人が多い。

「画」は北京語で hua,朝鮮語で hwa になり、日本語では「ぐわ」gwa になる。

「我」は北京語 wo だが、中古漢語で ŋa のような発音で、朝鮮語では a,日本語では「が」ga になる。

[編集] 字音仮名遣の「揺れ」

国語辞典で「原・源」を調べると「歴史的仮名遣」でも「げん」になっているが、藤堂明保など現代の漢字学者は「ぐゑん」を採用している。これは本居宣長が江戸時代の発音にもとづき合拗音を「くわ」「ぐわ」だけとしたのを、以前の字音史料にもとづき復活させたものである。「ぐゑん」を採用すると北京語 yuan,朝鮮語 weon に残るような唇音化音を反映することができ、「語源(ごぐゑん)」と「語言(ごげん)」を区別できる。

いわゆる「終戦」前の『尋常小學校・國史』の教科書では、「權」の振り仮名が今と同じ「けん」になっている。藤堂明保などは「くゑん」と「ごん」を採用している。これも「権(權)」が北京語で quan,朝鮮語で kweon であることから唇音化した kwen だと言える。音符が同じ「観(觀)」は「くわん」で唇音を表わしている。

また宣長は中古音の音節末鼻音[m]を書きとった「む」を採用せず、「ん」に統一した。このため「三」(さむ)「陰」(おむ・いむ)「覧」(らむ)といった平安時代にあった表記をとられず、「さん」「おん・いん」「らん」といったようにした。これでは「三位」を「さんい」ではなく「さんみ」、「陰陽」を「おんよう」でなく「おんみょう」と発音したかが説明できないため、再び「む」を復活させようとする試みがある。

[要出典]

Static Wikipedia (no images)

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