万葉仮名
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万葉仮名(まんようがな)とは仮名の一種で、主として上代に日本語を表記するために漢字の音訓を借用して用いられた文字のことである。『萬葉集』(万葉集)での表記に代表されるため、この名前がある。真仮名(まがな)、借字ともいう。仮借の一種。
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[編集] 概要
漢字の一字一字を、その義に拘わらずに日本語の一音節の表記のために用いるというのが万葉仮名の最大の特徴である。万葉集を一種の頂点とするのでこう呼ばれる[1]。『古事記』や『日本書紀』の歌謡や訓注などの表記も万葉集と同様である。『古事記』には呉音が、『日本書紀』α群には漢音が反映されている[2]。江戸時代の和学者、春登上人は「万葉用字格」(文化15年)の中で、万葉仮名を五十音順に整理し〈正音・略音・正訓・義訓・略訓・約訓・借訓・戯書〉に分類した。
[編集] 万葉仮名の歴史
万葉集や日本書紀に現れた表記のあり方は整っており、万葉仮名がいつうまれたのかということは疑問であった。正倉院に遺された文書や、木簡資料の発掘などにより万葉仮名は7世紀ごろにはなったとされている。実際の使用が確かめられる資料のうち最古のものは、大阪市中央区の難波宮(なにわのみや)跡において発掘された652年以前の木簡である。「皮留久佐乃皮斯米之刀斯(はるくさのはじめのとし)」と、和歌の冒頭と見られる11文字が記されている。
[編集] 種類
- 字音を借りたもの(借音仮名)
- 一字が一音節を表わすもの
- 全用 以(い)、呂(ろ)、波(は)、…
- 略用 安(あ)、楽(ら)、天(て)、…
- 一字が二音節を表わすもの
- 信(しな)、覧(らむ)、相(さが)、…
(2)字訓を借りたもの(借訓仮名)
- 一字が一音節を表わすもの
- 全用 女(め)、毛(け)、蚊(か)、…
- 略用 石(し)、跡(と)、市(ち)、…
- 一字が二音節を表わすもの
- 蟻(あり)、巻(まく)、鴨(かも)、…
- 二字が一音節を表わすもの
- 嗚呼(あ)、五十(い)、可愛(え)、…
[編集] 現代の万葉仮名
現在でも万葉仮名は至る所で使用されており、特に地名と人名で多く見られる。「麻奈」「亜紀」「美嘉」(女性の名前)とかいて「まな」「あき」「みか」と読むのがそうである。 「魚群」を「なぶら」または「なぐれ」と読むなど地方に存する難読地名などは、万葉仮名または万葉仮名からの変化音に由来するものが多い。また、若者言葉で、わざと漢字をあてたりすることもある。(例 よろしく→夜露死苦 アイラブユー→愛羅武勇)しかし、そのわざと漢字をあてたものは族言葉であり、万葉仮名と言い難い所がある。
[編集] 注
[編集] 参考文献
- 沖森卓也「万葉仮名」平川南・沖森卓也・栄原永遠男等編『文字と古代日本』5「文字表現の獲得」、吉川弘文館、2006年2月、318-33ページ。