宇宙の距離梯子
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
宇宙の距離梯子(うちゅうのきょりはしご)とは、宇宙に存在する天体の、地球からの距離の測定方法の総称である。地球から遠方にある天体の距離を直接測ることは難しいため、測りやすい近距離の天体までの距離を測り、その距離と別の観測値(遠方の天体であっても容易に観測できる必要がある)との間の規則性を発見し、その規則性が遠方の天体にも適用できると考えてさらに遠方の天体までの距離を測り、という操作を繰り返して測ることになる。この過程が、高低差がある地面を梯子をかけながら徐々に進んでいく様に似ていることが、距離梯子という名の由来である。
以下、一般的な距離梯子について、近距離から順に解説する。
目次 |
[編集] レーダーパルス
地球近傍の惑星や衛星の距離はレーダーを用いて測ることができる。惑星に向けてレーダーを発射し、それが惑星表面で反射して戻ってくるまでの時間を計り、光速度をかければよい。ただし、遠方になればなるほどレーダー光は拡散するので、地球に非常に近い惑星にしか使うことができない。
この方法で、ある惑星(例えば金星)までの距離を、地球に最も近づいたときと最も遠ざかったときについて測ることができれば、地球の公転半径が容易に計算できる。この長さが天文単位の定義である。
[編集] 年周視差
天体の位置は、地球の公転のために、季節によって違う位置に見える。これが年周視差である。ここでは、地球と太陽と目的の天体とで三角形を作る。年周視差は三角形のうち目的の天体の角の角度として観測でき、地球から太陽までの距離は既にわかっているので、簡単な三角法により、地球から目的の天体までの距離が決定できる。
この年周視差を用いた距離の測り方は、そのままパーセクの定義である。年周視差は、距離が遠くなればなるほど小さくなっていき、あまり小さい値を高精度で観測するのは困難である。現在の観測制度ではせいぜい0.01秒程度の年周視差までしか高精度では測れないため、この測定法が使えるのはせいぜい100パーセク程度までということになる。
[編集] 散開星団
天体の出す光の波長、エネルギー、及び天体の表面温度の関係はプランク分布に従う。また、天体の見かけの明るさは距離の2乗に反比例する。そのため、同じ色の天体どうしで見かけの明るさを比較すれば、その距離の比がわかる。実際は同じ色の天体を見つけるのは難しいので、いくつかの散開星団についてHR図を書き、HR図どうしを比較することになる。そのいくつかの散開星団の中には、年周視差の方法によって距離がわかっているものもあるので、それによって他の散開集団までの距離もわかる。
ただし、遠方からやってくる光は吸収や散乱の影響を受けているので、色が変化してしまう。そのため、この方法で高精度に距離が決定できるのは、1キロパーセク程度までである。
[編集] セファイド変光星
あまり多くはないが、セファイド変光星という天体があり、半径1キロパーセク以内程度まで幅を広げればいくつか見つかる。上記の方法でこのセファイドについて調べた結果、セファイドの最大の絶対的な光度はセファイドの変光周期の0.9乗に比例することがわかった。この規則性を用いて、さらに遠くのセファイドについても距離が決定できる。セファイド変光星はかなり明るいため、現在20メガパーセク程度までこの方法で測ることができる。
それ以上の距離は以下の方法で測ることになるが、その分ここから先は欠点が大きくなる。
[編集] タリー・フィッシャー関係
タリーとフィッシャーによって、円盤銀河の絶対的な光度は、回転速度の4.5乗に比例することがわかった。銀河の回転速度は光のドップラー効果を用いて観測できるので、この方法によって銀河までの距離が確定できる。
ただし、この関係は理論的裏づけがない経験則なので、今後発見・観測されるすべての銀河がこの関係を満たす保証はまったくない。また、この比例関係の精度はあまり高くないことがわかっているので、距離の精度もあまり高くはならない。
[編集] Ia型超新星
Ia型超新星はどの超新星も同じような超新星爆発の経過をたどると思われる。すなわち、同じような光度の変化をたどる。そのため、地球から遠くない超新星爆発と比較してどの程度暗いかを観測すれば、超新星までの距離を測ることができる。
ただし、Ia型超新星爆発が本当にどれも同じような爆発の経過をたどる保証はないし、そもそも超新星爆発は偶発的にしか起きないため、目標の天体や銀河を先に決めてからそこまでの距離を測るというようなことは不可能である。
[編集] ハッブルの法則
ハッブルの法則とは、天体の赤方偏移と天体までの距離は正比例するという法則である。この法則を用いれば、特に遠方の天体までの距離の測定には効果を発揮する。
しかし、ハッブルの法則は地球からそれほど遠くない天体では確かめられているが、遠方でも成り立つ保証はない。遠方でも成り立つことを示すには、その示したい天体までの距離を測らなくてはならないが、ハッブルの法則でしか距離が測れないような天体の場合は循環論法になってしまう。
カテゴリ: 天文学関連のスタブ項目 | 天文学