就職氷河期
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就職氷河期(しゅうしょくひょうがき)とは就職難の別称で、バブル崩壊後の就職が厳しかった時期を差す言葉。就職雑誌『就職ジャーナル』が1992年11月号で提唱した造語。
1994年の流行語大賞に選ばれた。
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概要
バブル崩壊以降、景気が悪くなり企業の新規採用が抑制されたことと、同年代の人口が多い第二次ベビーブーム(団塊ジュニア)世代が大学を卒業し就職する時期が重なったことにより、新卒者の就職が困難になった。
また、この時期は単に求人が抑制されただけでなく、雇用のミスマッチ(企業の求める人材と就職希望者の求める仕事とが一致せず、求職があるにもかかわらず、失業率が高い状態。転職#需給のミスマッチも参照)が増加し、単純に求人数が増えても失業率が下がりにくくなっていった。特に若年層は、他の年齢層に比べると雇用のミスマッチが大きい。
一方、企業側では、この時期に新卒者の採用を控えたために、多くの企業で従業員の年齢構成が歪になり、技術・技能の伝承が困難になっているという指摘がある。また、雇用の抑制は社内の人手不足を招き、労働環境が苛酷になる企業が増加した。
世代
就職氷河期に就職活動を行った世代(概ね1970年代生まれ)は、氷河期世代と呼ばれることが多い。他に「貧乏くじ世代」(香山リカ)、「ロストジェネレーション」(朝日新聞が、2006年8月及び2007年1月の特集で使用)というような呼び方もある。
この世代は、正社員になれなかった者が多く、フリーターやニートと呼ばれるカテゴリーに属する者が多いとされる。
新規採用
高卒
高卒者[1]の雇用環境は、この時期に大きく悪化した。平成17年3月高校・中学新卒者の就職内定状況等によれば、求人数は1992年の約34万人をピークに、2003年には約3万人にまで激減した[2]。要因としてはいくつか言われており、例えば高学歴化へのシフトなどが指摘されている[3]。
大卒
大卒者の雇用環境も、この時期に大きく悪化した。リクルートワークスの調査によれば、1991年をピークに求人倍率は低下傾向で推移し、2000年には1倍を下回った。その後、景気の回復に伴う求人増もあり、徐々に上昇している。
中途採用
中途採用については新卒よりも就職は厳しく(企業が“即戦力”を要求する為)、新卒時に正社員へと就職できなかった者の多くがその後も正社員となれず、就職活動を諦める者も現れた(ニートも参照)。十分なスキルを蓄積できなかった者は再就職も困難な状態にある。
企業業績の回復により就職氷河期が終焉を迎えると、新卒者の求人数が急増し、一方で既卒者の雇用環境は厳しいことから「世代間による雇用機会の不均衡」を指摘する声が強まった。この問題は国会でも議論されるようになる。
景気回復に伴い求人が活発化、売り手市場となった2006年は、新卒者が働きがいや社会貢献より待遇重視の傾向が強まり、安定志向・保守化し、大企業指向が強まっている[4]。そのため、中小企業は人材集めに苦慮しているところが多いが、氷河期世代に着目している企業はあまりない。農業分野や福祉産業といった、人手不足が深刻な業界では、氷河期世代のフリーターなどに就業を求めているところもある。
また、2007年の団塊世代の退職(2007年問題)によって大量の雇用の創出が見込まれているが、ほとんどの企業は新卒者ないしは定年者の再雇用によって補う意向で、就職氷河期世代の救済にはつながりにくいという見方が支配的である。就職氷河期で就職できなかった世代は既に卒業後相当の年数が経っており、企業からすれば新卒者に比べて扱いにくいことも一因だと言われている。
資料
有効求人倍率の推移(既卒者)
年 | 有効求人倍率 | 有効求人数 | 有効求職者数 | 就職件数 |
---|---|---|---|---|
1990 | 1.40 | 1,814,807 | 1,294,185 | 113,332 |
1991 | 1.40 | 1,805,631 | 1,290,153 | 106,709 |
1992 | 1.08 | 1,553,333 | 1,433,026 | 108,284 |
1993 | 0.76 | 1,275,820 | 1,669,074 | 111,747 |
1994 | 0.64 | 1,186,463 | 1,848,098 | 120,628 |
1995 | 0.63 | 1,233,449 | 1,954,365 | 126,684 |
1996 | 0.70 | 1,393,689 | 1,980,970 | 128,680 |
1997 | 0.72 | 1,493,094 | 2,070,944 | 132,306 |
1998 | 0.53 | 1,265,216 | 2,394,818 | 137,300 |
1999 | 0.48 | 1,206,889 | 2,529,993 | 144,177 |
2000 | 0.59 | 1,472,596 | 2,506,804 | 155,421 |
2001 | 0.59 | 1,534,182 | 2,597,580 | 157,206 |
2002 | 0.54 | 1,486,484 | 2,768,427 | 168,366 |
2003 | 0.64 | 1,670,065 | 2,596,839 | 176,143 |
2004 | 0.83 | 1,956,329 | 2,368,771 | 178,754 |
2005 | 0.95 | 2,163,164 | 2,271,675 | 176,954 |
関連項目
- 就職活動
- 就職難
- アジア通貨危機
- 2007年問題
- 完全雇用
- ニート
- フリーター
- ジェネレーションX・ジェネレーションY
- 団塊ジュニア
- ポスト団塊ジュニア
- 新人類
- 新人類ジュニア
- バブル世代
- ゆとり世代
脚注
- ^ 高校卒業後、就職する者は、大学進学率上昇に伴い数は減少してはいるものの、依然として雇用市場で大きな集団を形成している。
- ^ 若年者の雇用支援 ―現状と課題―
- ^ 「高卒者の職業生活の移行に関する研究」中間報告
- ^ MYCOMジャーナル「2006年度、大学生の就職意識調査 - 社風や待遇面気にする声増加」