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フリーター - Wikipedia

フリーター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

フリーターとは、日本で正社員以外の就労形態(アルバイトパートタイマーなど)で生計を立てている人を指す言葉。フリーアルバイターとも。

本項では、一般的な呼称である「フリーター」で記述する。

目次

[編集] 語源

1987年に「フロムエー」(リクルート社のアルバイト情報誌)の編集長、道下裕史が生み出した言葉。現在では、広辞苑にも記載されるほどに一般化している。

1980年代後半のバブル経済の時期に、ミュージシャン俳優になるという夢を持ちながら、日々の生活はアルバイトでつなぐという若者に対し、プータローと蔑視するのではなく、人生を真剣に考える若者として応援したいという意味からフリーターという言葉が生まれた。

語源は

  1. 英語のフリー free (時間の自由なという意味、あるいはフリーランスの略)
  2. ドイツ語で労働を意味し、日本語では非正規雇用を意味するアルバイト Arbeit
  3. 「~する人」という意味の英語-er(ドイツ語でも同様に-erだが、1.でドイツ語のフライ frei でなく英語のフリーを使ったことを考えると英語と取るのが自然)

の3つをつなげた和製英独語の造語(「フリーランス・アルバイター」の略称)である。

造語であるため、入国審査の際に職業欄にフリーターと書いても通じない。英語圏では「パーマネント・パートタイマー(permanent part timer)」と呼ぶ事が多い。

[編集] 変遷

パートタイム労働者の職業紹介状況の推移
新規求職者数 新規求人数 新規求人倍率
1975 13,074 15,669 1.20
1980 15,516 24,447 1.58
1985 27,526 43,370 1.58
1990 27,713 103,609 3.74
1995 62,211 102,832 1.65
2000 86,849 185,979 2.14
2005 132,574 260,463 1.96

資料出所:" 職業安定業務統計

この言葉が使われ始めた1980年代後半は、日本の経済が好調だったことに加え、24時間営業のチェーン店の急増や、建設業界の慢性的な人手不足によって、若い労働力が求められていた。しかしその後バブル経済が崩壊し、企業の経営状態が悪化すると、正社員の採用は抑制され、低賃金で簡単に解雇のできる「アルバイト」が、代替の労働力として活用されるようになった。そのため当時、就職活動をしていた多くの若者が正社員になれず、フリーターになることを余儀なくされた(就職氷河期も参照)。

[編集] 定義

この言葉は道下裕史による造語であり、当初、明確な定義というものは存在しなかったが、調査・分析のため統計による数値を算出する必要性が生じたことから、厚労省が平成3年版の労働白書において集計した際、定義が設けられた。

  • 平成16年版労働経済の分析厚生労働省)では、年齢15歳から34歳、卒業者であり、 女性については未婚の者とし、さらに
    1. 現在就業している者については勤め先における 呼称が「アルバイト」、「パート」である雇用者で、
    2. 現在無業の者については家事も通学もしておらず「アルバイト・パート」の仕事を希望する者

と定義している。(厚生労働省より)

  • 平成15年版 国民生活白書内閣府)では「15~34 歳の若年(ただし,学生と主婦を除く)のうち、パート・アルバイト(派遣等を含む)及び働く意志のある無職の人(いわゆる失業者)」と定義している[1]

なお、一般的に用いられる場合には、上記定義よりさらに広範である場合が多い。また労働基準法などの法律上は、正規雇用・非正規雇用・正社員・アルバイトなどの区分は一切なく、単に労働者(被雇用者)となる。

[編集] 無職との違い

無職とは無職業の略称であり、職業が定まっていない状態を示す。それに対しフリーターは、アルバイト等に従業しており、以下の何れかの要件を満たしていれば、それが職業とみなされる。なおフリーターとは就労形態を現す用語であり、職業の区分として用いるのは誤りである。

職業の定義
  1. 毎日・毎週・毎月等の周期を持って行われている。
  2. 季節的に行われている。
  3. 明瞭な周期を持たないが続けて行われている。
  4. 現に従事している仕事を引き続きそのまま行う意志と可能性がある。

日本標準職業分類一般原則より

[編集] ニートとの違い

フリーターは、しばしばニートと同様に扱われることもあるが、これは両者がいずれも労働経済問題であるからで、本来はフリーターが非正規雇用という形で労働をするのに対し、ニートはそれをしていないという違いがある。しかし内閣府の定義では「就労意思のある無職の人」がフリーターに含まれており、ニートの定義と一部重複する。

[編集] 規模

[編集] 定義別推移

15~35歳までの労働力人口とフリーターの推移(単位:万人)
年\定義 労働力人口 内閣府定義 厚労省定義
1991 2,109 182 62
1993 2,171 215 79
1995 2,213 248 94
1997 2,271 313 119
1999 2,272 385 143
2001 2,275 417 159
2003 2,200 - 217

資料出所:内閣府・国民生活白書/厚生労働省・労働白書

※厚労省定義の数値は2001年以前が1~12月の平均値であり、2002年以降は毎年2月の数値のため、その前後の数値は接続しない。

厚生労働省が定義するフリーターの総人口は、1991年のバブル期には約62万人であったが、その後急増し、2003年には217万人に達した。しかしその後は緩やかに減少し、2005年の時点では201万人となっている。内閣府の定義するフリーターの総人口も同様の傾向を示している。

[編集] 年齢階級別推移(厚労省定義)

年齢別・推定人口(単位:万人)
年\年齢 15~19歳 20~24歳 25~29歳 30~34歳
1992 10.5 31.0 19.7 91.0
1996 13.7 46.1 28.1 12.4
2000 19.5 62.4 46.2 20.1
2004 25.5 88.5 62.4 37.2

資料出所:内閣府・国民生活白書/厚生労働省・労働白書

[編集] 増加の要因

大きく分けて、「企業側の要因」と「学生等被雇用者側の要因」がある。その中でも、どちらかといえば企業側の要因が、より大きな影響を及ぼしている[2]

[編集] 企業側の要因

企業はバブル崩壊後の景気低迷期に、正社員の採用を抑え、労働力を非正規雇用に置き換えることによってコスト削減を図った。また、正社員も新卒よりも訓練する必要が無く、即戦力となる中途採用を増やす動きがあった。そのため、正規雇用での採用を希望していた若者の多くが、新卒時に正社員になることができなかった。また、産業構造の変化等により、求人数が業種ごとの求人数が変化し、雇用のミスマッチを誘発することとなった[2]

また、企業の採用態度が、新卒一括採用に偏っているため、一度新採で正社員になれなかった者は正社員になりづらいことも指摘されている[3]

[編集] 被雇用者側

学生の質が低下し、企業が求める水準まで達していないという。また、大学等学校のフォローが十分でないことも指摘されている[2]

学生の意識の問題もある。学生がフリーターとなる動機としては、「希望する就職先に決まらなければ、就職しなくともよい」「他にやりたいことがあるから」などがある[2]。直近の調査では、「自分に合う仕事を見つけるため」にフリーターになったというものもある[4]。ただし、上述したようにフリーター増加の要因はもっぱら企業側の採用に寄るところが大きい。

[編集] 実態

[編集] 業務内容

就業形態別業務内容(単位:%)
業務内容 雇用者 うち正社員 うちパート
アルバイト
責任ある仕事を任されている 77.4 81.8 65.2
新しい仕事に取り組む機会がある 51.0 53.9 43.2
職業訓練を受ける機会がある 34.1 38.0 23.3
業務を指導する立場にある 34.2 38.1 23.6
部下がいる 21.0 24.9 10.2

資料出所:平成15年版国民生活白書

フリーターは、パート・アルバイトで働いていても、正社員に比べ「責任ある仕事を任されている」「新しい仕事に取り組む機会」「職業訓練を受ける機会」といった割合が低くなっている。

[編集] 労働内容

リクルートワークス研究所が実施した「非典型雇用労働者調査2001」によると、フリーターの労働時間および労働内容は、週20時間未満が10.5%、20~40時間が37.9%、フルタイムが43.1%、フルタイムかつ正社員並みのスキルを持っているのは8.5%という結果が示されている。

[編集] 意識

現在フリーターとなっている者は、正社員となることを希望する者が非常に多い。男性の9割以上、女性の7割以上が定職に就くことを希望している。

希望する仕事の種類別構成比(2002年)
性別\希望 定職に就く 現状を維持 家庭に入る 他・無回答
男性 90.9% 8.0% 0.0% 1.1%
女性 74.1% 19.8% 5.6% 0.4%
合計 78.8% 16.6% 4.1% 0.6%

資料出所:2006年版 中小企業白書

[編集] 問題点

[編集] 社会保障制度

雇用者は、社会保険労働保険への加入義務や、有給休暇育児休業などを、労働者に対し提供しなければならないが、実態としてフリーター(アルバイト)に対しては、これらの制度を適正に運用しない雇用主が多く、問題となっている。

[編集] 高年齢化

フリーターは、一度フリーターとなると、そのまま続く傾向にある。大半の企業が、正社員の雇用には新卒一括採用を採っているために就職する機会が少ないことと、短期のアルバイト等で培った技能や経験が職歴として見なされず、学校を卒業してから何もしていない「ブランク」と看做される事、また「フリーターからの就職では長続きしない」「フリーターはトラブルを起こしやすい」といった固定観念が障害となり、不採用になることが多いためである[3]

[編集] 少子化への影響

配偶者および子供がいる者の割合(%)
所得\年齢 20~24歳 25~29歳 30~34歳 35~39歳
~99万円 0.7 0.6 10.8 12.8
100~199万円 2.3 7.9 19.1 30.0
200~299万円 4.2 11.4 25.2 37.9
300~499万円 7.8 18.9 37.8 51.1
500~699万円 8.2 28.9 50.5 62.4
700万円~ 10.3 27.1 52.0 70.7

資料出所:2006年版 中小企業白書中小企業庁

中小企業庁によると「配偶者や子供がいる割合」は概ね所得の高い層」に多く、所得が低くなるに従って未婚率が高くなるという傾向が示されている。これはフリーターの増加が少子化を助長することを示唆しており、年金など社会保障制度の崩壊につながることが懸念されている。

[編集] 対策

政府は2010年までに、フリーターをピーク時の8割(約174万人)に減少させるという目標を掲げている。現在、政府がフリーター対策として検討しているものには、以下のようなものがある。

[編集] 雇用における年齢制限の禁止

雇用対策法により、企業には雇用の際の年齢制限をしないという努力義務があったが、フリーターへの年齢制限による門前払いを防ぐために、自民・公明党による与党協議会で、雇用対策法改正案で年齢制限の禁止を努力義務から禁止事項にすることで合意した[5]

[編集] 就業支援

厚生労働省はフリーターに対する就業支援策として、職業能力の開発に主眼をおいた制度の拡充に尽力している。しかし多くのフリーターは「学習時間が固定されている」「通学時間を確保できない」「経済的なゆとりが無い」等の理由から、こうした制度を利用する事ができず、さらに踏み込んだ内容の支援策が求められている。

[編集] インターンシップ

学生が在学中に企業に赴き、職場体験を行う制度。フリーターになる要因の一つとして、働くことの意味を考える機会が少ないことが挙げられており、インターンシップで職場体験の機会を得ることによって、社会人意識を持つことを期待されている[6]

[編集] 日本版デュアルシステム

失業者やフリーターを主な対象者とし、企業や各種専門学校と連携しながら、原則無償(1年以上は有料)で就職を支援する制度。しかし「期間が短い」「分野が限定的」などの問題も指摘されており、より充実した内容の支援策が求められている。

[編集] トライアル雇用

原則3ヶ月の試用期間を経験し、その後、雇用主と求職者の双方の合意によって、正社員に採用されるという制度。申し込みはハローワークを通じて行う。雇用主には奨励金が支給される等の利点があり、求職者には就職の機会が広がるという利点がある。ちなみに2004年度はこの制度を利用した人の8割(約3万人)が正社員として採用されている、35才未満の求職者が対象。

[編集] ジョブカフェ

若年者を対象とする就業支援施設。単に仕事を紹介する以外にも「就職基礎能力速成講座」など、就職に役立つセミナーなども開催されている。

[編集] 教育

文部科学省はフリーター増加の問題を受けて、学校教育における職業観の醸成や、職業能力の向上に注力している。その一例については後述するが、文部科学省が教育面を重視しているのは「若年層の勤労意識の低下がフリーター増加の原因である」という考え方によるものである。しかし、フリーターの増加は基本的に過去の就職難や、企業の雇用・採用姿勢(上述の「階層の固定化」を参照)に起因するものであり、「若者の職業観が低下している」という事実を証明する客観的な裏付けも存在しないまま、こうした対策を行う姿勢に異論を唱える研究者も多く、また「雇用主側も低賃金の労働者を求めていること」など、社会的な問題として捉えるべきという意見もある。

[編集] キャリア教育

文部科学省は近年、フリーター・ニートの増加が、産業構造の変化や若者のモラルの低下が主因であるとの判断から、通常の授業時間を削減し、企業側の要請に応じた様々なキャリア教育を積極的に推進している。

[編集] キャリア育成支援

職場体験、トライアルウィークなどと呼ばれる、主に中学2年生を対象とした就業体験プログラム。地元の企業と連携し、1日~5日間、生徒は学校を離れ、様々な仕事を実体験する。なお2004年の公立中学校の実施率は89.7%となっている。

[編集] 予防授業

文部科学省はフリーターの増加は教育の問題とし、小中高校の総合的な学習の時間において「フリーター・ニートになる前に受けたい授業」と題するワークショップを実施している。内容は主に「フリーターやニートになるのは本人の甘えや努力不足が原因であるから、そのような生き方を選択しないように」というもの。しかし、バブル崩壊以降の採用抑制・採用基準の引き上げがフリーターやニートを生む一つの原因となった事を考えると、このような授業は当事者に原因の全を帰結させ、社会構造の問題が無視されていると言った指摘がある。

[編集] 労働組合

首都圏青年ユニオンは「フリーターは企業戦士徴兵拒否組だ」と述べ、非正規雇用者も加入できる労働組合だと述べている。また既存組合も組織率の低下にともない、パート・アルバイトへの組合への加入を呼びかけているが、フリーターの労組加入率は極めて低いのが現状である。

[編集] 海外

[編集] 諸外国の雇用形態

諸外国、特にEUアメリカなどの先進国では、同じ仕事に従事する人の中に、フルタイムで働く人と短時間で働く人がいるという感覚であるため、日本のような「正社員・非正社員」という概念が無いところが多い。労働者全員を同基準の待遇とすることで失業者の解消を目指すワークシェアリングを実施する国もある。

[編集] 関連項目

[編集] 脚注

  1. ^ 平成15年版 国民生活白書より
  2. ^ a b c d 平成15年版国民生活白書
  3. ^ a b 平成18年版国民生活白書
  4. ^ 2006年12月1日付 読売新聞フリーター選択の理由は「夢追求」…5年前に比べ増
  5. ^ 2007年1月24日付け朝日新聞
  6. ^ 千葉県インターンシップ推進事業について

[編集] 外部リンク

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