心理主義
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心理主義(しんりしゅぎ)とは、価値、真理、妥当性などの抽象概念を何らかの心理的作用として把握しようとする学問上の態度を意味する。これは、特定の思想というよりもむしろ、功利主義、唯物論、科学主義などのように形而上学的思弁的議論を好まない思想に広く見られる方法論のひとつである。
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[編集] 心理主義の意義
心理主義は、多くの場合、実験や観察によって確定できない概念(価値、正しさなど)を実証可能なものとして扱うために採用される。確かに、「価値とは何か?」という議論を思弁的に行うよりも、「価値とは個々人の嗜好である」と定義して誰が何を嗜好するかを観察する方がずっと明快である。しかし、このような手法は、自然主義的誤謬などの哲学上の難問を伴うため、強い批判に晒されることが多い。
[編集] 心理主義の具体例
[編集] 価値に関する心理主義
価値に関する心理主義によれば、価値とは個々人の欲求すなわち「欲しいと思う気持ち」である。その帰結として、普遍的な価値は存在せず、価値は同一人物においてすら不断に変化し続けることになる。このような立場を徹底すると、「価値あるものが欲されるのではなく欲されたものが価値あるものである」という考え方に辿り付く。経済学や功利主義においては、しばしばこのような割り切った捉え方が見られる。
[編集] 真理に関する心理主義
真理に関する心理主義によれば、真偽とは個々人の納得すなわち「尤もらしいと思う気持ち」である。この考え方によれば、時代や地域によって何が真であるかは変化する。
[編集] 妥当性に関する心理主義
妥当性に関する心理主義によれば、妥当性とは個々人の服従意欲すなわち「従いたいと思う気持ち」である。ある法が妥当かどうかは、その社会で生活する法の人々がどれくらいその法に従いたいかを調査すればよい。これは北欧リアリズム法学に代表される考え方である。