形而上学
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形而上学(けいじじょうがく。ギ:Ta Meta Ta Physika ラ:Metaphysica 英:Metaphysics 独:Metaphysik)とは物理的または概念的な対象が存在する理由や根拠についての問い、およびそれをめぐる議論のこと。
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[編集] 概説
物理学を「対象の振る舞い」について考えるものだとするなら形而上学は「対象が存在する理由」を問うものだと言える。「りんごが落ちる理由」は物理学で説明出来るが「りんごが存在する意味」は物理学で説明出来ない。このような問いかけを形而上学的だと表現する。
また形而上学は哲学の一部門であり、物理学や心理学や脳の生物学といった自然諸科学に、あるいは神秘主義や宗教や精神的主題に関係付けられる。 存在、実在、普遍、属性、関係、因果性、空間、時間、出来事、その他諸々の諸概念が、まさにそれに基づくところの現実性の基礎的本性に関する、最も根本的な概念や信念の研究として概略的に定義される。
形而上学を定義することの困難の一部は、何世紀も前にアリストテレスの編者によって、西洋の哲学者たちが最初にその名を受け取って以来、変化してきた非常に多くの領野の内にある。根源的に形而上学的と考えられなかった問題が、次々に形而上学に加えられてきた。何世紀にも渡って形而上学的と考えられていた他の問題は、概して現在、宗教哲学、心の哲学、知覚の哲学、言語哲学、科学哲学といった、その独特の分離した副次的主題へと追いやられている。形而上学の部分と、ある時代または別の時代に、考えられてきた全ての問題について考察するには、非常に長い時間が要求されるだろう。
核心的な形而上学的問題と呼ばれうるものは、常に形而上学的でないと考えられたことがない問題である。そのような問題はたいてい、一般に存在論の問題、「存在としての (qua) 存在の学」である。
別の哲学的伝統は、西洋の哲学的伝統におけるそれよりも、形而上学的問題の非常に困難な概念を持っている。例えば、道教、そして実際多くの東洋哲学はアリストテレス形而上学の最も基礎的な教義のいくつかを、完全に拒んでいる。今では、西洋哲学においてはもはやほとんど完全に内面化し、疑いの対象になることはほとんどないが、しかしヘーゲルの論理学のように、アリストテレス形而上学の多くの反対者は西洋にも現れた。
[編集] メタフィジカ、形而上学の語源
古代ギリシアの哲学者アリストテレスは大量の書き物を残し、それが西暦30年頃アンドロニコスにより整理されたが、その際『ta physikaタ・フィジカ(自然について)』の巻の後に、自然の探求の基礎・根本に関わる著作群が置かれた。その著作群は明確な名を持たなかったので、初期アリストテレス学派は、この著作を"ta meta ta physikaタ・メタ・タ・フィジカ(自然についての後の書)" と呼んだ。これが短縮され、ギ:μεταφυσικά、ラ:metaphysicaメタフィジカ、として定着、後の時代の各印欧語の語源となり、例えば英語ではmetaphysicsメタフィジックスという語となった。
上記のごとく、書物の配置に着目した仮の名称「meta physika自然・後」が語源なのだが、偶然にも、その書物のテーマは"自然の後ろ"の探求、すなわち自然の背後や基礎を探るものであり、仮の名前が意味的にもぴったりであったので、尚更その名のまま変更されずに定着した。
印欧諸語のmetaphysics、Metaphysikなどの訳語として、日本語では「形而上学」を当てており、これは『易経』繋辞上伝の“形而上者謂之道、形而下者謂之器”(形よりして上なる者これを道と謂い、形よりして下なる者これを器と謂う)という表現に因んだ造語なのだが、印欧語に含まれる「後ろの」の意が「上の」に置き換わってしまっており、語感にズレが生じている。
[編集] アリストテレスの形而上学
アリストテレスの著作物の『タ・メタ・タ・フィジカ(形而上学)』は、(1) 存在論 (2) 神学 (3) 普遍学と呼ばれ西洋形而上学の伝統的部門と現在みなされている三つの部分に分けられた。また、いくつかのより小さな部分、おそらくは伝統的な問題、すなわち哲学的語彙集、哲学一般を定義する試みがあり、そして『自然学』からのいくつかの抜粋がそのまま繰り返されている。
- 存在論は存在についての研究である。それは伝統的に「存在としての (qua) 存在の学」と定義される。
- 神学はここでは神あるいは神々そして神的なものについての問いの研究を意味する。
- 普遍学は、全ての他の探求の基礎となるいわゆるアリストテレスの第一原理の研究と考えられる。そのような原理の一つの例は矛盾律「あるものが、同時にそして同じ点で、存在しかつ存在しないことはありえない」である。特殊なリンゴは同時に存在しかつ存在しないことはありえない。普遍学あるいは第一哲学は、「存在としての (qua) 存在」を扱う―それは、誰かが何かある学問の個別的な詳細を付け加える前に全ての学問への基礎となるものである。これは、因果性、実体、種、元素といった問題を含む。
[編集] 形而上学的問題の諸例
[編集] 関連文献
- 『形而上学』アリストテレス著、出隆(訳)、岩波書店、1959年、 ISBN 4003360435