恒温動物
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恒温動物(こうおんどうぶつ)は、気温や水温など周囲の温度に左右されることなく、自らの体温を一定に保つことができる動物。かつては、定温動物、温血動物とも言われた。
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[編集] 恒温性の意義
恒温動物と言われる動物は、体内で熱を作り出し、体内の熱を外に逃がす機能を持つ。哺乳類・鳥類のほとんどはこれに属する。恐竜は爬虫類でありながら恒温動物だったと思われているが、体温調節機能が備わっていたのか、あるいは身体の巨大さによる慣性恒温に過ぎなかったのかという点で議論が分かれている。恒温動物の体温調節機能は恒常性の一例である。
一般に、恒温動物の体温は37-40℃と、気温に比べても高い温度で維持されている。この温度は、ほぼ酵素活性の最適温度であり、このような動物では、常に安定した体温の元、高い水準の活動能力を維持できることになる。ただし、そのためには、体表から逃げる熱を補うための熱を体内で作り続けなければならず、体温維持のためだけに多くのエネルギーが必要となる。つまり燃費がひどく悪くなる。従って、変温動物に比べて、遙かに多くの餌が必要となる。
[編集] 体温調節の方法
恒温動物は、具体的に以下のような方法で体温を調節している。
体温を上げるもの
- 毛を立てる(身体の回りに空気の層を作り、伝熱を抑える。衣服と同じ効果)
- 身震い(筋肉の摩擦熱による)
- 脂肪の燃焼
- 血管の収縮(末端は冷えてしまうが、重要な臓器に血液を集中し、保温する効果がある。また、しもやけの原因)
体温を下げるもの
他にも体温の上下によって反射的・本能的に様々な行動が引き起こされ個体の体温の調節に役立っているが、変温動物も同様の方法で体温の調節を行っているため、恒温動物に特有の機能とは言い難い。これらは幅広い種に共通するものから、特定の種の生活環境に依存した特有のものもある。
体温を上げるもの
体温を下げるもの
- 日陰に入る
- 身体を広げる(放熱専用の器官を持つ種がある)
- 摂水
- 運動を抑える
- 水に漬かる(水辺に生息する生物)
全体に見渡すと、体温を上げるための方法の方が、体温を下げるための方法より多い。特に、能動的に調節する方法として、体温を下げる方法がない。体外に熱を放出しやすくするのみである。しかも、発汗は水中では効果がない。従って、水中生活のほ乳類の場合、体温上昇への対抗策が少ない。大型種が熱帯水域に少ないのは、そのためでもあるだろう。
[編集] 体温維持と体格
体温は体組織、特に筋肉で作られる。従って、おおざっぱに言えば、その動物が作り得る熱の量は体重に比例する。
放熱は体表から行われる。従って、その動物が放出できる熱の量は体表面積に比例する。
同じ体型であれば、体表面積は体長の2乗に比例し、体重は体長の3乗に比例するので、体が大きいほど、体重あたりの体表面積は小さくなることがわかる。従って、寒い地域では、体が大きい方が有利であり、暑い地域では、体が小さい方が有利になる。これがベルクマンの法則の根拠である。同様に、体表面積を稼ぐためにはしっぽや耳を大きくすることもできる。実際に、そのような傾向も認められ、こちらはアレンの法則と呼ばれる。
また、体格があまりに小さいと、体重あたりの体表面積があまりに大きくなり、表面から逃げる熱を補うために、大量のエネルギーを消費することになるので、小さい方には生活できる限界がある。ほ乳類に於いてはトガリネズミ類がその限界に近いと言われる。彼らは1日に自分の体重程度の餌を採るが、その多くは体温維持にのみ使われているわけである。
[編集] 関連項目
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