旅愁
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旅愁(りょしゅう)は歌のタイトル。
- (1)1つは日本の詩人である犬童球渓が明治40年(1907年)に訳詞をした翻訳唱歌。
- (2)もう1つは必殺シリーズの第4作目『暗闇仕留人』の主題歌としてミノルフォンレコードから出た曲で、歌手は西崎みどり。
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[編集] 「旅愁」(1)の歌詞
- 更け行く秋の夜(よ) 旅の空の
わびしき思いに 一人悩む
こいしや故郷(ふるさと) 懐かし父母(ちちはは)
夢路にたどるは 故郷(さと)の家路
更け行く秋の夜 旅の空の
わびしき思いに 一人悩む - 窓うつ嵐に 夢も破れ
遥(はる)けき彼方に こころ迷う
こいしや故郷 懐かし父母
思いに浮かぶは 杜(もり)の梢(こずえ)
窓うつ嵐に 夢も破れ
遥けき彼方に こころ迷う
[編集] 概要
1907年8月に発表された音楽教科書「中等教育唱歌集」で取り上げられて以来、日本人に広く親しまれてきた。原曲はジョン・P・オードウェイ(John P. Ordway)による“Dreaming of Home and Mother”(家と母を夢見て)という作品である。
犬童は熊本県人吉市に生まれ、東京音楽学校を卒業した。大学卒業後、音楽教師として各地を転々とし、新潟高等女学校に勤務していた期間中に、ジョン・P・オードウェイの『家と母を夢見て』の曲を知り、故郷の熊本県から遠く離れた自分の心情と重ね合わせながらこの訳詞を作った。明治40年(1907年)8月に発表された「中等教育唱歌集」において、犬童の訳詞曲として『旅愁』と『故郷の廃家』の2曲が採用された。これはすべて外国からの翻訳唱歌を集めた音楽教科書であったが、当時としては画期的な試みのひとつとして、各曲にピアノの伴奏楽譜がついていた。当時の翻訳唱歌の大半は「学校唱歌校門を出ず」のレベルにとどまっていたが、犬童球渓の訳詞による『旅愁』はすっかり“日本の歌”として広く親しまれるようになり、原曲がアメリカ音楽であることが信じ難いほどになっている。
原作者のジョン・P・オードウェイ(1824年 - 1880年)は、アメリカ音楽史に残る歌曲を数多く作曲したスティーブン・フォスターや、『大きな古時計』の原作者ヘンリー・クレイ・ワーク(1832年 - 1884年)とほぼ同時期に活動した音楽家であった。彼は医学博士であり、医師の仕事の傍ら楽譜出版業も手がけたが、日本では『旅愁』という曲名で現在も歌い継がれている原曲の“Dreaming of Home and Mother”は、アメリカではほとんど忘れられてしまったという。
1982年の中国の映画『北京の思い出(城南旧事)』(沈潔主演)では劇中歌として使われた。
[編集] 外部リンク
[編集] 「旅愁」(2)
『旅愁』(2)は『暗闇仕留人』の主題歌であり、1974年のヒット曲で、20万枚を記録した。
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- 作詞:片桐和子 作曲:平尾昌晃 編曲:竜崎孝路 歌:西崎みどり
- 発売:ミノルフォンレコード(現・徳間ジャパンコミュニケーションズ)
[編集] 概要
この『旅愁』は必殺シリーズの主題歌なので、当然ながらメロディーが本編のBGMに使われた。
この曲は必殺シリーズの歌としては『やがて愛の日が』(歌:三井由美子)に続く女性ヴォーカルのバラードで、しかも初期に男性歌手が歌ったアップテンポの『荒野の果てに』や『望郷の旅』とつながる旅の歌である。
これを歌った西崎みどりは『仕留人』最終回で武家のむすめ役でゲスト出演し、ラストシーンでは彼女が雪の中を歩く場面でこの歌が流れた。さらに必殺シリーズでは主題歌の『さざ波』と『流星』、挿入歌の『もどり道』を彼女が歌い、『仕舞人』から『渡し人』、『仕切人』、『橋掛人』まで非主水シリーズの常連となった。
この曲のヒットが同シリーズの音楽世界に与えた影響は大きく、「哀しい旅の歌」路線はその後、他の女性歌手が歌った『さすらいの唄』や『哀愁』にも受け継がれ、その後の必殺シリーズの主題歌や挿入歌に共通する「孤独」、「旅立ち」、「帰郷」、「哀愁」、「風」、「背負った過去」などのテーマを表す。
また、この曲以降、必殺の主題歌と挿入歌は悲しいバラード曲が主体となり、後期で主題歌がそのままアップテンポだったのは『ゆれる…瞳』ぐらいであった。これに対して中期の『あかね雲』と『夢ん中』から歌と本編BGMでアレンジの違いが大きくなり、『仕事人』と『仕舞人』以降では主題歌はバラード、そのメロディーを使った仕置きのテーマはアップテンポという使い分けが定着した。
『仕留人』本編では力強い曲が少なく、場合によっては西崎みどりの歌のついた主題歌がそのまま出陣や仕置きシーンで使われた。その他、途中から原曲に忠実なバラードの演奏版が多くなったが、『仕留人』終了後、必殺の後半で『やがて愛の日が』と『旅愁』のアップテンポのアレンジ・ヴァージョンが作られた(番組や映画で使われたかどうかは不明)。
後半の『仕事人』シリーズでは本編や映画の予告編などで『旅愁』の歌がそのまま使われた。
80年代初めの『仕事人』ブームによって、夕方に『仕掛人』から『仕留人』までの初期作品が再放送された当時、ラジオの深夜放送でも『荒野の果てに』と『旅愁』がリクエストされて流されていた。
中条きよしも『定番ベスト』(CD;2004/09/01)でこの曲を歌っている。
2007年4月10日のNHK「歌謡コンサート」では田川寿美が歌った。