日産・パオ
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パオ (Pao) は、日産自動車が1989年に企画・販売した小型自動車である。生産は高田工業がおこなった。型式はE-PK10型。同社のK10型マーチをベースとしたパイクカー第2弾である。いつもと違う気分を演出するディ・リゾート・カー(造語、ディリー+リゾート+カー、日常の都市生活でのリゾート気分が味わえる車の意味)をデザインコンセプトに、自然さ、心地よさ、心の冒険を演出した。
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[編集] 概要、特徴
外観は簡素で暖かみのある2ボックススタイルを基本に、素材の自然感を生かした、金具類や部品類をあしらい、都会での心の冒険を表現した。 パオの外観で特徴のある機能には上下2分割式リアサイドウインドーやリアガラスハッチ及び上下分割式リアゲート、ドアガラスに旧来から知られている、開閉式三角窓が採用されていた。ドア建て付けは外ヒンジ式が採用され、独立したバンパーと合わせ全体的に復古調を表現したデザインであった。車体色は、アーシィーカラー (Earthy color) 、自然で素材自体の持つ色をテーマにし、車体色のボディ鋼板をドアやピラーとして内装へ露出させることにより、楽しい感覚を表現していた。
ボディは外板の一部にフロントフェンダー、フロントエプロンにフレックスパネル(射出成形)熱可塑性樹脂が用いられており、ボンネットフードにはSMC成形樹脂 (FPR) 熱硬化性樹脂(SMC成形方法では当時、日本初の一体成形の)補強リブも1枚構造の樹脂フードを使用、軽量化を図り、またボディ鋼板には、耐食性を大幅向上させたデュラスチール(片面処理鋼板)をサイドシル、リアホイールハウスの外板へ、新デュラスチール(両面処理鋼板)をドア、バックドア、リアエプロンの外版に採用し、高張力鋼板を適所採用、防錆性能、強度、剛性確保、軽量化を図った。特に防錆処理には力を入れ、中空部分に防錆シーラント、防錆ワックスの適所注入や製造工程でも、エッジ錆を避けて塗料の付着性向上を高める目的として鋼板パネル端末部のバリ突出量を抑える様にした。
文中用語解説
- SMCとはSheet Moulding Compoundの略でガラス繊維を含む不飽和ポリエステルのシートを加熱反応硬化させて製品にする成形法。
- フレックスパネルはPPO(ポリフェ二リンオキシド)とナイロン6による非結晶型ポリマーアロイであり、各原料の優位性を兼ね備えた特徴がある。
[編集] 歴史
- 1987年10月 - 東京モーターショーで発表。
- 1989年1月 - 期間限定販売開始。3カ月間限定の受注生産の予定であったが、1987年1月発売パイクカー第1弾の「Be-1」の受注を上回る51657台の申込みがあり増産となった。納期は最長で1年半と言われる。生産は高田工業が受託していた。
[編集] 車名の由来
中国語の包(パオ)で、モンゴルの遊牧民の組立式家屋の意味。ゲルのこと。非日常的な意外性をもった世界を象徴。
[編集] スペック
[編集] 車両形式
- ニッサンE-PK10型
[編集] 車種
- PAO (5MT、PK10GF)(3AT、PK10GA)
- PAOキャンバストップ (5MT、PK10GFW)(3AT、PK10GAW)
- 車台打刻実施No. - PK10-000051~。/エンジン形式No.打刻、MA10-926165~
[編集] 寸法
カッコ内数値はキャンバストップ仕様車
- 全長/全幅 /全高 (mm) - 3740/1570/1475(1480)
- 室内長/室内幅/室内高(mm) - 1735/1265/1185(1205)
- ホイールベース (mm) - 2300
- トレッド前/後 (mm) - 1365/1355
- 最低地上高 (mm) - 165
- 乗車・定員(人) - 5
- 車両重量 (kg) - 5MT 720(730)/3AT 750(760)
- 車両総重量(kg) - 5MT 995(1005)/3AT 1025(1035)
[編集] 性能
- 最小回転半径 (m) - 4.4
- 燃料消費率10モードkm/L - 5MT 18・5/3AT 14・4
- 燃料消費率60km/h定時走行km/L - 5MT 29・4/3AT 23・4
[編集] エンジン
- 形式 - MA10S
- 種類・シリンダー数 - 水冷直列4気筒
- シリンダー内径×行程(mm) - 68.0×68.0
- 総排気量(cc) - 987
- 圧縮比 - 9.5
- 最高出力(NET)ps/rpm - 52/6000
- 最大トルク(NET)kgm/rpm - 7.6/3600
- 燃料供給装置 - キャブレター
- 使用燃料・タンク容量L - 無鉛レギュラーガソリン・40
[編集] 諸装置
- ステアリングギア形式 - ラック&ピ二オン
- 懸架方式 - (前)独立懸架ストラット式・(後)4リンクコイル式
- ブレーキ前 - ディスク
- ブレーキ後 - リーディングトレーリング
- タイヤサイズ前・後 ・スペア - 155SR12
[編集] ボディカラー
- (♯FJ-0) アクアグレー(イメージは、天然水の色)
- (♯DJ-0) オリーブグレー(イメージは、オリーブの実)
- (♯EJ-1) アイボリー(イメージは、象牙の色)
- (♯AJ-0) テラコッタ(イメージは、イタリアの素焼きの土器の色)
フッ素樹脂加工を上塗り全色のクリアーに採用、水洗いだけでワックスをかけた状態が得られ、新車時の光沢、色調が長時間持続する様にされていた。
[編集] 内装色
- アイボリー
- ボディカラーとの組み合わせは、(♯FJ-0)アクアグレー、(♯AJ-0)テラコッタ、(♯DJ-0)オリーブグレー
- オフブラック
- ボディカラーとの組み合わせは、(♯EJ-1)アイボリー、
[編集] 主装備
- パワーステアリング、シートリフター(運転席)
- 電磁式ガラスハッチオープナー、間欠ワイパー、
- テンションレスELRシートベルト(前席)、
- 電動式キャンバストップ、
- 専用デザインオーディオ(カセットデッキ一体型アナログ
- AM/FM電子チューナー)←注、メーカーオプション
スピーカー(リア4×6インチ×2))←注、メーカーオプション
[編集] オプション
- 空調
- マニュアルエアコン(日産自動車ディーラーオプション)
- 音響
- コンビステレオ(EC220 15W×2、2スピーカ仕様)
- コンビステレオ(15W×2、2スピーカ仕様、CD対応)
- CDデッキ
- キャリングBOX(パオ専用ステレオ、車外持出用受注生産品)
- 足回り
- アルミロードホイール・オーナメント(標準ナット付)
- スーパーサイル・チェーン(155SR12用)
- スチール・チェーン(155SR12用)
- 電装品
- フォグランプ(BOSCH製品PF-160、白色又は、黄色/アタッチメント 別売のフロントガードバーとセットのみ可)
- フォグランプ(CIBIE製品・VISAGEブランド。黄色/アタッチメント)
- 時計(アナログ電池式・照明アラーム付)
- 外装品
- マッドガード(フロントセット)
- マッドガード(リヤセット)
- サイドバイザー(ステンレス)
- ドアエッジモール(ステンレス貼付)
- ボデーカバー(ポリエステル・カバー)
- フロントガードバー、フォグランプステー付:(シルバー )※パンパー用
- システムラック
- ベースラック(ルーフラックタイプ:最大積載量30kg)
- スキーアタッチメント(スキー4セット積み)
- サーフアタッチメント(サーフボード2枚積み)
- デカールキット(PAOマ-ク&文)
- ウインター用ワイパーブレード(ドライバー側アシスト側共用1本)
- 内装品
- フロアカーペット(チェーンステッチ)
- ファッション・シートウェア(エプロンタイプ:リバーシブル フロント2座席用)
- シートカバー(全カバー:生成調)
- クッション(ひざ掛け付)
- ステアリングカバー(本革製)
- トノカバー
- 防眩ミラー(ブラウン、標準装置ミラーと色仕様が異なる)
- インスト・ロアトレイ(PAO文字入り)
- カップホルダー(ビッグサイズ缶、レギュラーサイズ缶各1本用)
- 車検証トレイ
- PAO・ケアバッグ
[編集] 特記
販売方法は当初、3ヶ月予約期間限定販売。1989年1月15日(日)から4月14日(金)まで、先着順に予約受付であった。
スペシャルショップを開設、 パイクファクトリーとして、情報スペースを設置。ブランドグッズ(パオサイド)(同時期販売のニッサンエスカルゴの、エスカルゴランド)や、レストラン、バーを併設。東京ベイエリア(当時、中央区勝とき橋付近)にあった。
[編集] 関連項目
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