日産・RBエンジン
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RBエンジンとは、主に1980年代後半から2000年代前半にかけて日産自動車が生産していた自動車の直列6気筒ガソリンエンジンである。
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[編集] 概要
直列6気筒のL型シリーズの後継機として開発され、1980年代後半から生産がはじまり、1990年代の日産ミドル~ビッグマシンの心臓部を担った。近年の環境基準対策や国内外の競合メーカーが従来の直6エンジンから比較的軽量なV6エンジンに移行することをうけ、日産自動車も次世代主力ユニットVQシリーズに順次切り替えを行い、2004年のセドリック・グロリアの生産終了と合わせて生産を終了した。国内向けは全車電子制御インジェクション仕様(但しLPG仕様のRB20Pはキャブレター仕様のみである)であり、日産のエンジン名称ルールにより「E」が付く。「D」付きはDOHC、「T」はターボ付きを示す。尚RBの意味は「Response」(レスポンス)&「Balance」(バランス)だといわれる。ちなみに、RBエンジンのディーゼル版がRD28/RD28Eである。
第二世代GT-RであるR32~R34型スカイラインGT-R及びステージア260RSオーテックバージョンに搭載されたRB26DETTエンジンは、名前こそ便宜上RBと付いているものの、同車(当初GT-R専用)専用としての設計であり、かなり性格が異なる。しかしRB20/25用のオイルパンがRB26にボルトオン出来る、あるいは逆に、RB26用オイルポンプ/ウォーターポンプが強化品としてRB20/25にボルトオン出来るなど、補機類単位では互換性が保たれている。
なお、トヨタのG型、1G系がLASRE(レーザー)の名称に対抗してRB20はPLASMA(プラズマ)の名称が付いていた。
また、L型シリーズの生産ラインやコンセプトを活かしつつ、設計・生産されたため、2000ccを主眼に置いて設計されたトヨタの1G系が排気量アップを行うに当たり、JZ型等を新たに設計しなければならなかったのとは対照的に、排気量アップを主眼に置きつつ設計されていた点が異なる。但し、先述のトヨタ製直列6気筒エンジンとは異なり、吸排気系機器の関係から(トヨタと左右が逆である)左ハンドル車への搭載が非常に困難である。そのため、当該エンジンの搭載車の輸出はイギリスやオーストラリアなど右ハンドル車が主流の国に限られていた。
排気量はバリエーション中の数値が大体の排気量を示している。具体的には以下の通り。
- RB20→2000cc (1.998L 内径×行程:78.0×69.7)
- RB24→2400cc (2.428L 内径×行程:86.0×69.7)
- RB25→2500cc (2.498L 内径×行程:86.0×71.7)
- RB26→2600cc (2.568L 内径×行程:86.0×73.7)
- RB30→3000cc (2.982L 内径×行程:86.0×85.0)
- RD28→2800cc (2.825L 内径×行程:85.0×83.0)
[編集] バリエーション
[編集] RB20E
- SOHC 12バルブ 自然吸気型。RB型エンジンシリーズの基礎となったエンジンである。
- 参考スペック:
- 96kw(130ps)/5,600rpm 181Nm(18.5kgm)/4,000rpm(グロス値 C32型前期 ローレル、R31型前期 スカイライン)
- 85kw(115ps)/5,600rpm 167Nm(17.0kgm)/4,000rpm(ネット値 C32型後期 ローレル、R31型後期 スカイライン)
- 92kw(125ps)/5,600rpm 172Nm(17.5kgm)/4,400rpm(C33~C34型 ローレル、A31型 セフィーロ、R32型 スカイライン)
- 96kw(130ps)/5,600rpm 171Nm(17.5kgm)/4,400rpm(R33型 スカイライン、K30型 クルー)
[編集] RB20P
- SOHC 12バルブ 自然吸気型。RB20SのLPG仕様。1987年6月~2002年6月まで製造。Y31型セドリック/グロリア営業車(主にタクシーなどに使用)のみに搭載されていた。
- 参考スペック:
- 69kw(94ps)/5,600rpm 142Nm(14.5kgm)/2,400rpm(Y31型 セドリック営業車)
[編集] RB20ET
- SOHC 12バルブ シングルターボ。RB20Eのターボチャージャー仕様。
- 参考スペック:
- 125kw(170ps)/6,000rpm 216Nm(22.0rpm)/3200rpm(グロス値 R31型前期 スカイライン)
- 107kw(145ps)/6,000rpm 206Nm(21.0kgm)/3,200rpm(ネット値 R31型後期 スカイライン)
[編集] RB20DE
- DOHC 24バルブ 自然吸気型。RB20Eのヘッドをツインカム化したエンジンである。
- 参考スペック:
- 121kw(165ps)/6,400rpm 186Nm(19.0kgm)/5200rpm(グロス値 R31型前期 スカイライン・レギュラーガソリン仕様)
- 110kw(150ps)/6,400rpm 181Nm(18.5kgm)/5,200rpm(ネット値 R31後期 スカイライン・レギュラーガソリン仕様)
- 114Kw(155ps)/6,400rpm 184Nm(18.8kgm)/5,200rpm(A31型 セフィーロ、R32型スカイライン・プレミアムガソリン仕様)
- 110Kw(150ps)/6,400rpm 182Nm(18.6kgm)/5,200rpm(C34型ローレル・レギュラーガソリン仕様)
- 114kw(155ps)/6,400rpm 186Nm(19.0kgm)/4,400rpm(NEOストレート6 R34型スカイライン・プレミアムガソリン仕様)
[編集] RB20DET
- DOHC 24バルブ シングルターボ、またはインタークーラー付きシングルターボ。RB20DEのターボチャージャー仕様。Z31型フェアレディZ用はセラミックタービンのターボチャージャーを採用していた。
- 参考スペック:
- 154kw(210ps)/6,400rpm 245Nm(25.0kgm)/3,600rpm(グロス値 R31型前期 スカイライン)
- 129kw(175ps)/6,400rpm 226Nm(23.0kgm)/3,600rpm(ネット値 C31型後期 ローレル)
- 132kw(180ps)/6,400rpm 226NM(23.0kgm)/3,600rpm(ネット値 Z31型フェアレディZ、R31型前期 スカイライン・インタークーラー付き)
- 140kw(190ps)/6,400rpm 240Nm(24.5kgm)/4,800rpm(R31型後期 スカイライン・インタークーラー付き)
- 158kw(215ps)/6,400rpm 265Nm(27.0kgm)/3,200rpm(R32型 スカイライン・インタークーラー付き)
- 151kw(205ps)/6,400rpm 265Nm(27.0kgm)/3,200rpm(C33型 ローレル・インタークーラー付き)
[編集] RB20DET-R
- DOHC 24バルブ インタークーラー付きシングルターボ。RB20DETのファインチューニング版。限定800台が生産されたHR31型スカイライン2000GTS-Rのみに搭載された。専用の等長エキゾーストマニホールド(いわゆるタコ足)とギャレット社製T04Eタービンといった、一般的にチューニング界で使われているパーツが標準装着されていた。
- スペック:
- 154kw(210ps)/6,400rpm 245Nm(25.0kgm)/4,800rpm
[編集] RB24S
- SOHC 12バルブ 自然吸気型。RB20の排気量アップ版。基本的に輸出用であり、日本国内市場向けには採用されなかったエンジンである。輸出用のA31型セフィーロに搭載された。ECCSでは無く電子制御キャブレター仕様。
- 参考スペック:
- 107kw(141ps)/5,000rpm 206Nm(21.1kgm)/4,400rpm
[編集] RB25DE
- DOHC 24バルブ 自然吸気型。国内向けとしてはC33型ローレル、A31型セフィーロ、R32型スカイライン(後期)から搭載が開始された。登場当時、自動車税制変更に伴い、2000CCクラスの車両に販売政策の観点から2500CCのエンジンを搭載する事例が多数みられた。NEOストレート6と名乗った改良・マイナーチェンジ版が存在する。そのほか、条件付きながらY33型セドリック/グロリアにも搭載された。
- 参考スペック:
- 147kw(200ps)/6,000rpm 255Nm(26.0kgm)/4,000rpm(NEOストレート6 R34型 スカイライン)
- 尚、RBシリーズの設計者である林義正氏は著書の中で「RBシリーズ自体を2500CCを基準に考えていた」と述べている事から、当エンジンの登場によりRBシリーズは設計担当者の構想に合致するものとなった。
[編集] RB25DET
- DOHC 24バルブ インタークーラー付きシングルターボ。RB25DEのターボチャージャー仕様。NEOストレート6と名乗ったマイナーチェンジ版は、R34型スカイラインに搭載された仕様で、ついに国内馬力規制枠上限(当時)の280馬力を発生するに至った。
- 参考スペック:
- 184kw(250ps)/6,400rpm 294Nm(30.0kgm)/4,800rpm(R33型 スカイライン5速MT車)
- 181kw(245ps)/6,400rpm 275Nm(28.0kgm)/4,800rpm(R33型 スカイライン4速AT車)
- 173kw(235ps)/6,400rpm 275Nm(28.0kgm)/4,800rpm(C34型 ローレル)
- 206kw(280ps)/6,400rpm 343Nm(35.0kgm)/3,200rpm(NEOストレート6 R34型前期 スカイライン5速MT車)
- 206kw(280ps)/6,400rpm 362Nm(37.0kgm)/3,200rpm(NEOストレート6 R34型後期 スカイライン5速MT車)
- 206kw(280ps)/6,400rpm 333Nm(34.0kgm)/3,200rpm(NEOストレート6 R34型 スカイライン4速AT車・AT車は前期・後期共通)
- 191kw(260ps)/6,400rpm 324Nm(33.0kgm)/2,800rpm(NEOストレート6 Y34型セドリック/グロリア)
- 184kw(250ps)/6,400rpm 319Nm(32.5kgm)/2,800rpm(NEOストレート6 Y34型セドリック/グロリア・2002年9月~最終型)
- C34型後期 ステージアにも搭載された。
[編集] RB26DE
- DOHC 24バルブ 自然吸気型。RB26DETTをNA化し専用チューニングしたエンジン。鍛造ピストンの採用やハイカム等が組み込まれ、専用の自然吸気用ステンレスエギゾーストマニホールドを装着していた。R32型スカイラインGTS-4をベースにオーテックジャパンが開発したオーテックバージョンにのみ搭載された。
- スペック:
- 162kw(220ps)/6,800rpm 245Nm(25.0kgm)/5,200rpm
[編集] RB26DETT
- DOHC 24バルブ インタークーラー付きツインターボ。第二世代GT-R(R32/R33/R34)用に開発されたツインターボエンジン。詳しくはリンク先へ。
- 参考スペック:
- 206kw(280ps)/6,800rpm 353Nm(36.0kgm)/4,400rpm(R32型スカイラインGT-R)
- 206kw(280ps)/6,800rpm 368Nm(37.5kgm)/4,400rpm(R33型スカイラインGT-R)
- 206kw(280ps)/6,800rpm 392Nm(40.0kgm)/4,400rpm(R34型スカイラインGT-R)
[編集] RB-X GT2
- DOHC 24バルブ インタークーラー付きツインターボ。R33型スカイラインGT-RをベースとしたNISMOのコンプリートカー「NISMO 400R」専用のエンジン。RB26DETTの排気量を2771ccまで拡大し、強化シリンダー&シリンダーヘッド、メタルヘッドガスケット、鍛造クランクシャフト、N1仕様タービン等を組み込みチューニングされたスペシャルエンジンであった。
- スペック:
- 331kw(450PS)/6,800rpm 469Nm(47.8kgm)/4,400rpm
[編集] RB-XII
- DOHC 24バルブ インタークーラー付きシングルターボ。R33型GTSのRB25DETをベースにREINIKがチューン。RB-XGT2のクランクシャフト&コンロッド、日産工機製のピストンを使用し排気量はRB-XGT2同様2771ccまで拡大されている。タービン等はR33後期型RB25DETに準ずるため、エンジン本体のポテンシャルを使い切るには補機類の交換が必要だった。日産プリンス神奈川の限定車「280 TYPE MR」専用エンジン。
- スペック:
- 221kw(300PS)/6,400rpm 343Nm(35.0kgm)/4,800rpm
[編集] RB30S
- SOHC 12バルブ 自然吸気型。海外向けに存在したシングルカム3リッターエンジン「RB30」のシングルキャブレター仕様。中東(主にサウジアラビア)向けに輸出されていたR31型スカイラインや日産パトロール等に搭載されていた。
[編集] RB30E
- SOHC 12バルブ 自然吸気型。海外向けに存在したシングルカム3リッターエンジン「RB30」のインジェクション仕様。主に豪州向けのR31型スカイラインやGM系のホールデン・コモドアに搭載されていた。また、少数ではあるが、西アフリカ仕様のR31型スカイラインにも別スペックのものが搭載されていた。
- 参考スペック:
- 114kw(155ps)/5,000rpm 247Nm(25.2kgm)/3,600rpm(オーストラリア向けR31型スカイライン)
- 126Kw(170ps)/5,000rpm 260Nm(26.5kgm)/3,600rpm(西アフリカ向けR31型スカイライン)
[編集] RB30ET
- SOHC 12バルブ・シングルターボ。海外(主に豪州)向けに存在したRB30Eにターボチャージャーを組み合わせたエンジン。GM系のホールデン・コモドアの高性能モデル「VLコモドア」のみに搭載されていた(実質、専用エンジンだった)。
[編集] RB30DE
- DOHC 24バルブ 自然吸気型。シングルカムのRB30EのシリンダーヘッドをRB26DETTのシリンダーヘッドに換装し、ツインカム化したエンジン。トミーカイラM30(R31型、R32型ベース)に搭載された。
- スペック:
- 177kw(240ps)/7,000rpm 294Nm(30.0kgm)/5,800rpm
[編集] RD28
- SOHC 12バルブ(1993年以降はSOHC 18バルブも混在)。RB型をベースにしたディーゼルエンジン。Y30型セドリック/グロリアに初搭載され、以後Y31~Y33型、R31型スカイライン、C32~C35型ローレル、K30型クルーなどに搭載された。
- 参考スペック:
- 74kw(100ps)/4,800rpm 181Nm(18.5kgm)/2,400rpm(グロス値 Y30型後期 セドリック/グロリア、R31型前期 スカイライン)
- 69kw( 94ps)/4,800rpm 177Nm(18.0kgm)/2,400rpm(ネット値 Y31~Y32型前期 セドリック・グロリア)
- 74kw(100ps)/4,800rpm 178Nm(18.2kgm)/2,400rpm(Y32型後期 セドリック・グロリア、C34型後期 ローレル)
[編集] RD28T
- SOHC 18バルブ シングルターボ。RD28のターボチャージャー仕様。Y60型サファリの2ドアハードトップ・スピリット系に搭載された。
- スペック:
- 92kw(125ps)/4,400rpm 255Nm(26.0kgm)/2,400rpm
[編集] RD28E
- SOHC 18バルブ。RD28の電子制御燃料噴射装置付。SY31型セドリックセダン、C35型ローレル、K30型クルーなどに搭載された。
- 参考スペック:
- 74kw(100ps)/4,800rpm 179Nm(18.2kgm)/2,400rpm(K30型 クルー)
[編集] RD28ETi
- SOHC 18バルブ インタークーラー付きシングルターボ。RD28Eのターボチャージャー仕様。Y61型サファリの2ドアハードトップに搭載された。
- スペック:
- 99kw(135ps)/4,000rpm 287Nm(29.3kgm)/2,000rpm(Y61型 サファリ・4速AT車)
- 99kw(135ps)/4,000rpm 261Nm(26.6kgm)/2,000rpm(Y61型 サファリ・5速MT車)
[編集] RB型(RD型)エンジンを搭載していた車種
- スカイライン(R31~R34型)
- ローレル(C32~C35型)
- セフィーロ(A31型のみ)
- フェアレディZ(Z31型)
- セドリック・グロリア(Y33型、Y34型の4WD車)
- ステージア(WC34型)
- クルー(サルーン系・パトロールカー仕様車)(K30型)
- セドリック営業車(Y31型)
[編集] チューニングベースとしてのRB20/25
RB26DETTがあるために、そのデチューン版エンジンとよく言われるが、前出の通りにかなり性格の違う物である。そのためにRB20/RB25搭載車にRB26DETTを容易に積みかえる事は出来ない。
しかしRB20搭載車にRB25はほぼボルトオンであることから、ベース的にはRB25を用いる方がRB20改・RB23/RB24を作るより安いとされている(一時期テスタロッサがRB20改・RB23チューンを行っていたが、現在ではこのチューンの代わりにRB25コンプリートエンジンへの積み替えを推奨している)。
ストリート仕様とそれ以外の仕様とのターニングポイントは450psとされている。HKSやコクピット館林がこの辺りを狙ったタービンを販売している。
ちなみに、AT車しか存在しないRB26DEを搭載したR32型スカイラインオーテックバージョンに、R33型スカイラインGTS-t用RB25DETの5速MTがスワップ可能なことが判明しており、実際に乗せ換えを行った車両が構造変更を受けた中古車として一部中古車店にて販売されている。