日産・L型エンジン
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L型エンジンはかつて日産自動車が製造していた直列4気筒及び直列6気筒SOHCエンジンである。
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[編集] 概要
基本はカウンター(ターン)フローSOHCエンジン。 初搭載は1965年の130型セドリック(L20)である。最大のライバルは同時期に登場したトヨタ・M型エンジンである。こちらはクロスフローSOHCが基本で途中DOHCも設定されたが、L型エンジンは市販車用エンジンとしては最後までSOHCだった。(SOHC以外のL型について、後述)
[編集] バリエーション
排気量はバリエーション中の数値が大体の排気量を示している。具体的には以下の通り。
4気筒モデル
- L13→1300cc (1.296L 内径×行程:83.0×59.9)
- L14→1400cc (1.428L 内径×行程:83.0×66.0)
- L16→1600cc (1.595L 内径×行程:83.0×73.7)
- L18→1800cc (1.770L 内径×行程:85.0×78.0)
6気筒モデル
- L20→2000cc (1.998L 内径×行程:78.0×69.7)
- L24→2400cc (2.393L 内径×行程:83.0×73.7)
- L26→2600cc (2.565L 内径×行程:83.0×79.0)
- L28→2800cc (2.753L 内径×行程:86.0×79.0)
- LD28→2800cc (2.792L 内径×行程:84.5×83.0)
[編集] 4気筒シリーズ
[編集] L13
1296cc
- 搭載車種
- ブルーバード(510)
[編集] L14
1428cc
[編集] L16
1595cc
[編集] L16E
L16のインジェクション仕様
- 搭載車種
- バイオレット(710、A10)
- オースター(A10)
- スタンザ(A10)
[編集] L16P
L16のLPG仕様
- 搭載車種
- ブルーバード(510)
- バイレット(710)
[編集] L18
1770cc
[編集] L18E
L18のインジェクション仕様
- 搭載車種
- ブルーバード(610、810)
- シルビア(S10)
- スカイライン(C210)
[編集] L18P
L18のLPG仕様
- 搭載車種
- ブルーバード(810)
- バイレット(710)
[編集] 6気筒シリーズ
[編集] L20
1998cc
- 搭載車種
[編集] L20E
L20のインジェクション仕様
- 搭載車種
- セドリック/グロリア(330、430)
- スカイライン(GC110、GC210、R30)
- ローレル(C130、C230、C31)
- ブルーバード(G610、G810)
- フェアレディZ(S30、S130)
- レパード(F30)
[編集] L20ET
L20Eのターボ仕様
- 搭載車種
- セドリック/グロリア(430)
- フェアレディZ(S130)
- スカイライン(C210、R30)
- ローレル(C31)
- レパード(F30)
[編集] L20P
L20のLPG仕様
- 搭載車種
- セドリック/グロリア(330、430、Y30)
[編集] L24
2393cc
- 搭載車種
- フェアレディ240Z(HS30)
[編集] L24E
L24のインジェクション仕様
- 搭載車種
[編集] L26
2565cc・140ps
- 搭載車種
- ダットサン260Z
- ローレル(C130)
- セドリック/グロリア(230)
[編集] L26E
L26のインジェクション仕様
[編集] L28
2753cc
- 搭載車種
- ダットサン280Z
- セドリック/グロリア(330)
- ローレル(C130、C230)
- シビリアン(W40、W41)
[編集] L28E
- 搭載車種
- フェアレディZ(S130)
- セドリック/グロリア(430)
- ローレル(C31)
[編集] L28ET
L28Eのターボ仕様
- 搭載車種
- 280ZX(S130フェアレディZの北米仕様)
[編集] LD28
L28のディーゼル仕様
- 搭載車種
- セドリック/グロリア(430、Y30)
- ローレル(C31、C32)
- スカイライン(C210、R30)
[編集] 逸話・エピソード・トリビア
- 通常の市販車としては、4気筒・6気筒共にカウンターフローのSOHCエンジンであるが、レーシングオプションとしてLYヘッド(クロスフロー)やLZヘッド(DOHC)も存在する。これらは、原則ワークスマシーンのみにパーツ供給されていたが、「大森スポーツコーナー」(現・NISMO)で一部のユーザーにも販売されていた。
- L14搭載車は、50年排ガス規制(A-)まで対応し消滅。L16/18は、51年排ガス規制(C-)まで対応し、53年排ガス規制(E-)では、L16を搭載していたB110/B210型サニー・エクセレントシリーズがベースモデルのサニーがB310型へのモデルチェンジしたのを期にモデル廃止された。他のL16/18はそれぞれ急速燃焼方式(ツインスパークプラグ)を採用する直列4気筒OHCのZ16型/Z18型エンジンに変更された。
- キャブレター仕様は原則2バレルシングルキャブ。スポーツ仕様ということにはSUツインキャブで対応していたが、50年排ガス規制に対応しきれずにその後はインジェクション(EGI)に移行した。キャブレターのチューニングに関しては、SUツインをソレックスツインもしくはトリプルに交換して、よりパワーも搾り出すのが定番とされており、現代でもこの手法はよく用いられている。
- 排気量2リッターには4気筒の『L20B』というエンジンが存在する。このエンジンは、510型ブルーバードの輸出仕様に設定され、後に日産が1978年~1980年のWRCにA10型バイオレットで挑戦してグループ2カテゴリーで輝かしい成績を残している。さらに1981年~1982年のシーズンは16バルブDOHC化と若干の排気量アップ(2039㏄)を行った『LZ20B』を搭載したPA10型バイオレットでグループ4カテゴリーにエントリーし、1979年~1982年のサファリラリーで当時日産ワークスに所属した故シェカー・メッタ(Shekhar Mehta)氏が4大会連続総合優勝という快挙を成し遂げ、WRC史上初の同一ドライバーで同一イベント4連覇という記録を打ち立てた。
- LZ20Bエンジンは、ラリーのみならず当時流行したシルエットフォーミュラ(グループ5)でも日産系マシーンの主力エンジンとして使用される。これには、エアリサーチ製T05Bターボチャージャー、およびルーカス製メカニカルインジェクションシステムで武装し570ps/7600rpm、55kgm/6400rpmのスペックを叩き出すまでチューニングされていた。
- LZ20Bエンジンはその後、2400ccの『LZ24B』(グリーンヘッド)へと進化を遂げ、S110型シルビアのグループ4マシンに搭載されて数戦のWRCに実戦投入された。その後、グループBマシンの240RSの登場と共に、240RSに搭載された『FJ24DE』に競技用エンジンの道を譲った。