曽根威彦
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曽根 威彦(そね たけひこ、1944年 - )は、横浜市出身の刑法学者。
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[編集] 略歴
[編集] 師弟関係
- 齊藤金作(元法学部長)が直接の師匠である。
- 大学院博士前期課程在籍中に齊藤金作が死去したため、兄弟子に当たる西原春夫(元早稲田大学総長)にも師事している。
- 弟子に恵まれ、現在活躍中の刑法研究者として松原芳博、岡上雅美等がいる。
[編集] 学説
[編集] 犯罪論体系
- 現在の通説である構成要件該当性 - 違法性 - 有責性とする3分説を批判し、行為性 - 構成要件該当性 - 違法性 - 有責性とする4分説を採用する。
[編集] 行為論
- 行為論では社会的行為論を採用する。
- 行為性の要件に有意性を含ませる。
[編集] 構成要件論
- 構成要件論では、内田文昭とともにリスト・ベーリング流の行為類型説をとる。
- 構成要件をあくまでも形式的・没価値的なものとするため、その論理上の違法性推定機能を否定する。
- 行為類型説の原型が客観的・形式的要素のみをその内容とするとしていたのに対し、主観的構成要件要素の存在を認める等その内容を修正している。
- 主観的要素の存在を認めるため、犯罪個別化機能を肯定する。
[編集] 違法性論
- 違法性論については、大学院にて二元的行為無価値論を支持する齋藤・西原両教授に師事し、留学先であるボン大学で一元的行為無価値論者であるアルミン・カウフマン教授に師事したにもかかわらず、結果無価値論を採用している。
- 多数説が承認する主観的違法要素の存在も認めていない。
- ノルにヒントを得て、被害者の同意を優越的利益の原則で説明しうるとする。
- かつては牧野英一等を援用しつつ、行為無価値論を支持していた(曽根威彦「不純性不作為犯における違法性」、早稲田大学法研論集に掲載)。
[編集] 責任論
責任論では法的責任論を採用する。
[編集] 共犯論
共犯論では共同意思主体説をとるが、共謀共同正犯を否定し、師説を離れた。 共犯の処罰根拠論では修正惹起説を支持する。
[編集] 著作
[編集] 教科書
- 『刑法総論』
- 『刑法各論』
[編集] 参考書
- 『刑法の重要問題〔総論〕』
- 『刑法の重要問題〔各論〕』
- 『刑法学の基礎』
[編集] 論文集
- 『刑法における正当化の理論』
- 『刑事違法論の研究』
- 『刑法における実行・危険・錯誤』
[編集] 論文
- 「現代の刑事立法と刑法理論」刑事法ジャーナル 1号
- 「不可罰的事後行為の法的性格」研修668号
- 「刑法からみた民法720条」早稲田法学78巻3号
- 「ヨーロッパの統合とヨーロッパ刑法の形成 序説」比較法学33巻2号
- 「客観的帰属論の規範論的考察」早稲田法学74巻4号
- 「過失犯における危険の引受け」早稲田法学73巻2号
- 「刑法における正当化原理」刑法雑誌22巻2号
[編集] その他の著作
[編集] エピソード
[編集] 単位認定に関する評価
単位に非常に厳しく、早稲田大学の学生の編集による情報誌「マイルストーン」(2006年度版)に掲載されたハマリ講義(単位を取り難い講義)ランキングにて二位以下を大きく引き離し堂々の第一位の座をほしいままにした。このことは学生に周知の事実であり、曽根威彦教授の刑法対策というウェブページさえ存在することがそれを裏付けている(現在は閉鎖されている)。なお、これらの事情については本人も自覚的であり、「法律なければ刑罰なし」「勉強なければ単位なし」がモットーである。
[編集] 学生の人気
前述のように単位評価に厳しいことから敬遠する向きもあるが、その独特のキャラクターに魅入られた学生も少なくない。ミクシィには曽根威彦コミュニティが存在するほどである。
[編集] インターネット上の掲示板での言及
インターネット上の掲示板で言及される際には、単位に厳しいことおよびその学説が異端的・難解であることが強調されることが多い。
前者の例として、たとえば[1]での言及が有名である。
後者の例として、たとえば[2]ではその学説について「曽根ってのは意味の無い少数説が多め。そん代わり妥当性が少なめ」と評されている。ただし、結論の妥当性がないというのは誇張に過ぎず、司法試験受験生に基本書として多く使われていることからも、実際は広く受け入れられていることも多いようである。