有道出人
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有道 出人(あるどう でびと、1965年 - )は米国カリフォルニア州出身の日本国籍取得者で、人権活動家、作家。英名はデビッド・クリストファー・アルドウィンクル(David Christopher Aldwinckle)。外国人の入浴客を拒否していた小樽の銭湯および小樽市を相手取って起こした一連の人種差別訴訟で有名。
北海道情報大学経営情報学部経営ネットワーク学科助教授。
目次 |
[編集] 日本名の由来
「有道出人」は帰化する際に日本語表記の姓名を持って作られた名前で、英名を日本語表記したもの。「有道」は「通れる道があること」の意で、英名の「アルドウィンクル」の第一音節にあわせたもの。[要出典]
[編集] 来歴
- 1980年代に日本に移住。
- 2000年に日本国籍取得。
- 2001年に小樽
- 2002年在札幌米国総領事館から警告を受けて米国市民権を放棄。
- 2005年の3月から4月にかけてピースボートに参加。
- 2006年1月、2ちゃんねるを相手取って起こした名誉毀損訴訟で勝訴(→2ちゃんねるの歴史)
[編集] 小樽温泉入浴拒否問題
1999年9月に、ドイツ人のオラーフ・カルトハウス、アメリカ人のケネス・リー・サザランドと共に小樽市手宮にある入浴施設「湯の花」を訪れた際、外国人であることを理由に入浴拒否される。「湯の花」は小樽に入港するロシア人船員の入浴マナーが悪かったために外国人の入浴を拒否するようになったのであるが、有道らが日本に帰化して日本人となった後に訪れても入浴を断られたため、これを人種差別だとして2001年2月に小樽市及び小樽市内の入浴施設に対して600万円の損害賠償と謝罪広告を求め提訴。
2002年11月、札幌地方裁判所の判決は、外国人の入浴を拒否するのは人種差別に当たる不法行為として「湯の花」に原告3名へ各100万円の賠償支払いを命ずる一方、小樽市については責任を認めなかった。
同月、判決を不服として有道らが小樽市を相手に札幌高等裁判所へ控訴。「湯の花」も有道らを相手取り控訴。
2004年9月、高裁判決は小樽市に対する有道らの控訴、および有道らに対する「湯の花」の控訴を共に棄却。「湯の花」に対する有道らの勝訴が確定。有道らは最高裁判所へ上告。
2005年4月、最高裁は上告を棄却。小樽市に対する有道らの敗訴が確定。
[編集] 大阪眼鏡店入店拒否問題
2004年9月4日、京都府在住のアフリカ系アメリカ人男性が友人と一緒に大阪府の眼鏡店に入店しようとしたところ、店主から「出て行け。黒人が嫌い。ドアに触らない。ショーウィンドウに触らない。あっちに行け!」と言われ追い出された。 2005年1月30日、大阪地方裁判所は原告の請求を棄却。男性は「1950年代の米国アラバマ州やルイジアナ州だという気持ちでした。私は何をしても、何を言っても、私の皮膚の色で台無しにされます。」と述べている。
[編集] その他の外国人差別問題
「Japanese only」(外国人お断り)の看板を出している居酒屋や銭湯、帰化した日本人に対して滞在許可証の提示を求める警察官など、様々な外国人差別問題に取り組んでいる。
有道は、2005年現在、日本が欧州各国、米国とともに国内における外国人差別撤廃に関する条約を締結しているにも拘らず、これに関する法律を未だに整備していない事に不満を持ち、日本政府に対する訴訟を進めている。
[編集] 論争
有道の行動は不必要に対立的であり、その主張に十分な裏付けがなかったり、虚偽や誇張が含まれている場合があると一部から批判されている。
BENCI (Business Excluding Non-Japanese Customer Issho) プロジェクトの元メンバーの一部は、有道が大きな組織内で協調的に行動することを苦手としている批判し、これによる軋轢が、BENCIプロジェクトが分裂してしまった原因のひとつであるとする。[1]彼らはまた有道が個人的な売名行為に走りがちであると批判するが、有道は繰り返しこれを否定している。[2]
法的手段に訴えるという有道の戦略を批判するものもいる。『Dogs and Demons: Tales from the Dark Side of Japan』(ISBN 0-8090-3943-5)の著者である日本研究家アレックス・カーは、彼の戦略を「闘争的に過ぎる」と指摘し、長い目で見た場合、実際には問題の解決に役立たないのではないかと疑問視している。カーはまた、「外人」および「外人の行動様式」が日本の新しい社会の一部になっていることを認めながらも、有道の行動は「外人は扱いにくい」という保守的な日本人が持つイメージを強化しているとする。[3]
調査に関しては、「日本人以外お断り」の看板が日本中で増殖している、という主張を裏付けるためのシステマティックな証拠集めを有道は放棄しているように見える。彼のWebサイトに掲載された「Rogue's Gallery」[4]には、行き当たりばったりに収集されたと思しき写真が並べられているだけである。2006年1月の段階で、掲載された写真は15の施設で撮られた28枚だけであり、人種差別的な営業方針を採用している施設が全国に散らばっているとするなら、この写真の数は非常に少ない。さまざまな出版物で有道は「OECD加盟国の中で人種差別に対処する法律がまったくないのは日本だけである」と主張しているが、それを裏付ける証拠は示していない。[5]北海道国際ビジネス協会 (HIBA) において米国務省に向けられたさまざまな有道の非難に応える形で、在札幌米国総領事のアレック・ウィルシンスキーは、有道の「ふざけた行為」、「省略」、「ばかげた説明」を、停滞する彼の「人権」キャンペーンに耳目を集めるためのわざとらしい試みにすぎないと批判している。[6]
「小樽温泉問題は、一刻を争う重要な問題だ」と有道は繰り返し主張するが、一部の批評家はこれにも疑問を投げかける。その中のひとり、国際教養大学副学長グレゴリー・クラークは、有道の訴訟を神経過敏で西洋的道徳観の押し付けと批判している。[7]一方で、有道は自身が日本人であり、クラークの主張はあたらないと反論している。[8]また、『Japan's Hidden Hot Springs (日本の秘湯)』(ISBN 0-8048-1949-1)などの著書があるロバート・ネフは、外国人を嫌う一部の温泉旅館経営者との軋轢の存在を認めながらも、本質的には有道のキャンペーンは虚偽であり、対立を深める効果しかないとする。[9]
また、南アフリカのアパルトヘイトやアメリカ南部における人種差別との類似性を見出そうとする有道の議論にも一部の批評家は反論する。[10][4]たとえば、日本に関するさまざまな著作のあるピーター・タスカーは、「ジョージ・ウォレス(人種差別推進で知られる1960年代前半のアラバマ州知事)時代のアラバマに日本をなぞらえることによって、有道は現実の残酷な差別を矮小化している」と指摘する。[11]また、人種差別的であるとされる少数の公衆浴場、風俗営業店、ナイトクラブなどをランダムにあげつらうことが、日本の公民権に関する状況に現実的にどのような意味があるのだろうか、と疑問を投げかけるものもいる。[12]
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有道氏と彼の家族を小樽の温泉は拒否すべきではなかった。しかし、不愉快だが本質的に些細なこの出来事が、キャリアオポチューニティとして利用されるていくことに違和感を持つのは私だけではないと思う。 | ![]() |
——Peter Tasker [11] |
[編集] 著書
- 『ジャパニーズ・オンリー:小樽温泉入浴拒否問題と人種差別』明石書店 ISBN 4750316997
[編集] 注釈
- ^ Anna Isozaki, "Narratives: a Matter of Perspective," Letters, JapanReview.Net, June 2005.
- ^ Yuki Allyson Honjo, "The Dave and Tony Show," Book Reviews, JapanReview.Net, January, 2005.
- ^ Tony McNicol,"Japan Sees Beginning of Change: Tony McNicol Talks to Dogs and Demons author Alex Kerr,"The Japan Times Online, October 25, 2005.
- ^ a b Debito Arudou, "The Rogues' Gallery."
- ^ For a few such examples, see Debito Arudou, "Japan's Misguided 'Kokusaika'," Japan Today, June 27, 2001; Debito Arudou, "JCLU Proposes Anti-Discrimination Law," Tokyo Professive, May 21, 2003; Debito Arudou, "Japan, the tourist destination?," Research Institute of Economy, Trade and Industry, May 23, 2003; and Debito Arudou, Japanese Only: The Otaru Hot Springs Case and Racial Discrimination in Japan (Tokyo: Akashi Shoten, Inc), pg. 305. For a few articles that repeat the allegation, see Mark Magnier, "Japanese Court Ruling Favors Foreigners: Bathhouse Must Pay Three Men who Were Denied Entry. Decision is Called 'Significant' in a Nation that Tolerates Discrimination," Main News, Los Angeles Times, November 12, 2002, pg. 3; and "Japanese Bathhouse to Pay 25,000 Dollars for Barring Foreigners," International News Section, Agence France Presse-English, Tokyo November 11, 2002.
- ^ Debito Arudou, "How to Lose Your American Passport," Debito.Org, January 10, 2003.
- ^ For two articles, see Gregory Clark,"Destroying a Fragile Trust," Opinon, The Japan Times Online, February 12, 2001; Gregory Clark, "Racist banner looks frayed," Opinion, The Japan Times Online, February 17, 2005
- ^ Debito Arudou, [1]
- ^ Interview with Robert C. Neff, JapanReview.Net, January 31, 2005.
- ^ Interview with Debito Arudou, JapanReview.Net, November 17, 2001.
- ^ a b Peter Tasker, "Opportunism Trivializes Real Discrimination," Letters, JapanReview.Net, June 2005.
- ^ Alexander Kinmont, "UN CERD and Representative Government: Sense or Nonsense?," Letters, JapanReview.Net, June 2005.