林泉忠
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林 泉忠(りむ ちゅあんてぃおん 通称:りん せんちゅう LIM, John Chuan-tiong 1964年11月27日 -)は、在日香港人(英国籍)政治学者。専門は、国際政治学。現在、琉球大学助教授。
2004年、ユニークな歴史的経験と「祖国復帰」後の国民統合およびアイデンティティ問題の発生などの共通点をもつ沖縄・台湾・香港を包括して「辺境東アジア」という新たな地域概念を『国際政治』で発表、東アジア研究に新風を吹き込んだ。
独特な経歴と教育背景を持つ林の思想には、バランスを意識しながらも通説と社会通念を超えるものが多く見られ、それは新聞で発表された諸論考にも反映される。2005年10月25日、朝日新聞で「日中韓 ナショナリズムは時代遅れ」を発表、高揚する東アジアのナショナリズムを批判、「ナショナリズム不要論」を提唱。朝日新聞のほかに、沖縄タイムス、琉球新報、明報(香港)、信 報(香港)、中國時報(台湾)、聯合報(台湾)などにおいて多数の論評を発表。中国語(北京語、広東語、閩南語)・日本語・英語に堪能で、論文や講演においてもその語学の才能を発揮。
2005年から3年間、林助教授は台湾政治大学および香港大学の協力を得て、「『辺境東アジア』地域住民のアイデンティティ国際調査~沖縄・台湾・香港・マカオ~」を初実施。沖縄県民のアイデンティティに関する本格的調査としても初めてのため、注目を受ける。
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[編集] 履歴
中国アモイ生まれ、1978年に香港へ移住。1989年来日、翌年に桜美林大学国際学部に入学。1994年に東京大学大学院法学政治学研究科修士課程に入学、1994年 - 95、カナダ・ヴィクトリア大学へ留学。1996年に、東京大学大学院法学政治学研究科博士課程に進学、1997年 - 99年に、ハーバード大学・フェアバンク東アジア研究センター、リサーチ・アソシエート。2002年、東京大学より博士号(法学)取得、同現在、琉球大学法文学部国際関係論講座助教授。
[編集] 著書
- 単著『「辺境東アジア」のアイデンティティ・ポリティクス:沖縄・台湾・香港』(明石書店2005年2月)。
- 共著『時代変局与海外華人的族国認同』(中華民国海外華人研究学会、2005年3月)担当部分:「『九七回歸』與香港華人的認同問題」(91-108頁)。
- 共著『新世紀移民的変遷』(夏誠華編、玄奘大學海外華人研究中心、2006年4月)担当部分:「『香港共同體』創建的明與暗:從『多元移民文化』的摸索到『新港粤文化霸權』的建立」(頁401-430)。
- 共著《北大講堂》(北京大学出版社、2006年)担当部分:「『辺陲東亜』的認同政治:沖縄、台湾、香港」。
[編集] 主要論文
- 「台湾政治における蒋経国の「『本土化』政策」試論(1972-1991)」『アジア研究』44巻第3号、アジア政経学会、1998年8月、65-95頁。
- John Chuan-Tiong Lim, “Democracy in Taiwan: KMT Transforms Itself” in Harvard China Review, Vol. 2, Spring/Summer 2000, Nov 1, pp.76-77.
- 「『香港人』とは何か:戦後における『香港共同体』の成立から見た新生アイデンティティの性格」『現代中国』第74号、日本現代中国学会、2000年9月、98‐116頁。
- 「戦後台湾における二つの文化の構築:「新中国文化」から「新台湾文化」への転轍の政治的文脈」『日本台湾学会年報』』第6号、日本台湾学会、2004年、46-65頁。
- 「『辺境東アジア』:新たな地域概念の構築」『国際政治』(第135号、日本国際政治学会、2004年、133-152頁。
[編集] 新聞論考
朝日新聞
- 「日中韓・ナショナリズムは時代遅れ」2005年10月22日
沖縄タイムス
- 連載「沖縄人アイデンティティー 比較の視点から」
- 1. 「繰り返す『反復性』 ユニークな125年の葛藤史」2004年7月5日
- 2. 「異民族支配が大きく影響 『辺境東アジア』と類似性」2004年7月6日
- 3. 「『民族性』独立左右せず 決定的要因は自立の能力」2004年7月7日
- 4. 「共通点多い香港と沖縄 政治性帯びた強い地元意識」2004年7月8日
- 連載 「5.15 アジアから考える」
- 1. 「『住民不在』が軋轢の要因、沖縄と香港の復帰に差異」2005年5月16日
- 2. 「必要なシステムの見直し、総意になりつつある『自立』」2005年5月17日
- 連載「『辺境東アジア』:躍動するアイデンティティー」
- 1.「『祖国との距離 意識 三地域と共通点 『脱辺境化』の現れか」(元旦特集号)2006年1月1日
- 2. 「帰属意識の中で葛藤:競合する『沖縄人』と『日本人』」2006年1月4日
- 3. 「台湾と沖縄:独立に相違点」2006年1月5日
- 4. 「相似する構造と特徴:香港と沖縄の帰属意識」2006年1月9日
- 5. 「経済自立で流動化:沖縄・マカオ人の帰属意識」2006年1月10日
- 「複雑化する『歴史問題』」2006年6月28日
琉球新報
- 連載「徘徊する沖縄アイデンティティー」
- 1. 「日本とどう付き合うべきか:『国家』や『民族』に翻弄 沖縄社会の対応再検討を」2005年5月10日
- 2. 「起源:『併合』機に帰属意識 公同会、特別県政要求の起点に」2005年5月11日
- 3. 「豹変:独立志向から復帰へ 根強かった『日本人』意識」2005年5月12日
- 4. 「『復帰』と『反復帰』:国家絶対主義を批判 反権力的な自立精神を求める」2005年5月14日
- 5. 「4度目の方向転換:挫折した官民運動 必要な自律性ある歴史経験」2005年5月16日
- 「アジア・太平洋の一員、一層の自覚を」2006年2月。
(以下は華字新聞) 信 報(香港)
- 「日本近現代史教育問題」2004年4月19日
明報(香港)
- 「真正港獨的虚實」2004年11月21日
- 「港獨由虚變實?」2004年11月22日
- 「軍國主義復辟?」2004年12月24日
- 「從對辜馬態度 看京對台政策矛盾」2005年1月8日
- 「新身分認同建構的困境」2005年2月7日
- 「愛國教育 反日教育?」2005年3月23日
- 「日本教科書檢定制度的利弊」2005年4月8日
- 「右翼教科書影響力多大?」2005年4月12日
- 「當韓流遇上竹島日」2005年4月16日
- 「反日運動中的政府責任」2005年4月23日
- 「日本與德國道歉的異同」2005年5月6日
- 「大陸熱後 兩岸問題回到原點」2005年5月18日
- 「『靖國』僵局下 北京舉棋不定」2005年5月31日
- 「馬掌國民黨 北京面臨挑戰」2005年7月20日
- 「日本傳媒的「戰後60年」2005年8月26日
- 「小泉第五度冒險的政治成本」2005年10月25日
- 「告別民族主義」2006年1月6日
- 「後小泉時代的『靖國壓力』」2006年2月16日
- 「麻生台灣言論 兩岸反應落差」2006年2月25日
- 「馬英九『台獨選項』的影響」2006年3月6日
- 「新一輪日本教科書之爭」2006月4月12日
- 「反日風暴周年 中日關係前瞻」2006年4月19日
- 「美國後院火勢何以蔓延?——中南美洲政治左傾化的啓示」2006年7月6日
- 「『靖國』的吊詭」2006年7月27日
中國時報(台湾)
- 「内緊外鬆 北京新走向」2005年10月7日
- 「両岸磨合的起点」2006年3月1日
聯合報(台湾)
- 「日對馬 想拉攏 又疑慮」2006年7月18日
波士頓新聞(米国)
- 「『台湾人』與『香港人』的創造——回避『中国人』的雙胞胎?」1999年5月21日、8頁全版
[編集] 担当科目
- 現代アジア論 (共通教育科目)
- 現代の国際関係 (共通教育科目)
- 東アジア国際関係史 (専門教育科目)
- 現代中国の政治と外交(東アジア地域研究Ⅲ) (専門教育科目)
- 台湾の政治と社会(東アジア地域研究Ⅱ) (専門教育科目)
- 沖縄をめぐる国際関係 (専門教育科目)