機械警備
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機械警備(きかいけいび)とは、警備員や用務員を置かず、代わりにセンサーを設置して建造物侵入や火災等の異常を機械で察知することを指す。
大手は最古参にして業界最大手のセコム(旧日本警備保障)、そしてライバルのALSOK(綜合警備保障)などである。夜間無人になる公共施設などに広く普及しており、特に学校は普及率が高い。目的としては、侵入者を退散させるのではなく、異常を早期に発見することや捕まえることが基本姿勢である。
なお、防犯や火災の分野だけでなく、ビルの設備(貯水槽の満水、減水など)の監視、制御なども行なっており、これも機械警備の分野の一つである。
[編集] 歴史
登場は、日本警備保障の『SPアラーム』が1966年(昭和41年)6月であった。続いてライバルの綜合警備保障が1967年(昭和42年)9月に『綜合ガードシステム』を開始して後を追った。
その後、1969年(昭和44年)4月、『SPアラーム』が連続殺人犯(警察庁指定108号)の逮捕のきっかけになって注目をあび、一般的にも知られることになる。
そして、1970年代から1980年代にかけては、電子技術の進歩による信頼性の向上などもあり、機械警備は一気に普及することになる。
これを受けて、1982年(昭和57年)には警備業法が改正され、国家資格として警備員指導教育責任者とともに機械警備業務管理者が設けられた。
[編集] センサーの進歩
初期からあった防犯用センサーは、窓や扉の開閉を感知するものであった。当時はセンサーの種類が少なく、信頼性を高めるためには、ほぼ全ての窓や扉にセンサーを設置する必要があった。そのため保守に手間がかかり、例えば学校なら、設置箇所も、校長室や職員室など、貴重品の置いてある場所に限られ、一般の教室には設置しないことが多かった。
少し遅れて現れたセンサーとしては、窓を叩いたら、[振動]]で感知するといったものがあった。しかし、窓にボールが当たる、地震が来るなど、どのような振動でも感知してしまい、警備業者はその誤報の多さに苦しんだ。しかし、このセンサーの失敗は、後に圧電素子を利用した改良型ガラス破壊センサーの開発へとつながった。改良型は、ガラスが破壊される際の振動(他の振動とは周波数で区別)だけを感知できるもので、旧型と比較して大幅に誤報が減り、広く利用された。
その後、侵入犯の巧妙化に対応して、機械警備も、精密化していく。機械警備業者は、センサーの死角を減らし、かつ、誤報も減らすために試行錯誤を繰り返した。その過程で作り出された失敗作のセンサーには、風が吹くだけで感知してしまうものや、近くで音が鳴っただけで感知してしまうものさえもあった。
現在、最も広く利用されているセンサーの一つとしては、赤外線センサー(受動型)がある。これは廊下の天井などに設置し、下を温かいもの(赤外線を出すもの)が通過したら、センサーが反応するもので、侵入者の体温を感知しようとしたのである。このセンサーは人間の体温という隠しようのないものを感知することで他のセンサーの盲点をカバーできるため、機械警備の信頼性を向上させるために大いに役立った。しかし、これにしても、鼠が通過してもセンサーが感知する、ファックスが送信されてもセンサーが感知するなど、誤報による警備会社の不必要な出番を却って増やす結果にもなっており、現場の警備員には嫌われている。
警備会社は、機械警備と併用して、夜間数回契約先を巡回するなど、機械警備で不足している点は人手で補うという対策をとっており、これはセンサーの信頼性が高くなった現在でも行なわれている。