火災
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
火災(かさい)は、災害の一種。火事(かじ)とも呼ばれる。建造物や山、森などが燃えることで、生命が危険にさらされたり、財産がその機能を果たせなくなったりする。雷のような自然現象を原因とする場合もあるが、多くは放火や、タバコの不始末などの過失、人工物の不具合(電気コードのショートなど)が原因で起こる。小規模な火災の場合はボヤ(小火)と呼ぶ。
これに対して大規模な火災は大火(たいか)と呼ばれ、消防白書では33,000平方メートル(1万坪)を超える焼失面積を生じたものを区別しこう呼んでいる。日本は江戸時代より大火が多く、明暦の大火など江戸市街の相当部分を焼失する火災がしばしば発生した。近代では函館市の大火(1907年、1934年)や、大正12年(1923年)の関東大震災による大火が有名である。
ロンドンやシカゴ、サンフランシスコなど大都市が大火に見舞われた事例は少なからずある。
目次 |
[編集] 火災の三要素
日本では、次の3つの要素を満たすものを火災として取り扱っている。(消防庁「火災報告取扱要領」による)
- ア 人の意思に反して発生(放火も含む)
- イ 消火の必要がある燃焼現象である
- ウ 消火施設の利用を必要とする
しかし、爆発現象(人の意図に反して発生し若しくは拡大した爆発現象をいう)の場合はイ及びウの有無にかかわらず火災とする。
[編集] 日本での主な火災原因
日本での主な火災原因は、上位から順に放火・たばこ・コンロ・たき火となっている。特に放火は、刑法上、殺人より罪が重い(最高刑は死刑)が、殺人年間件数約1,300件に対して、放火年間件数は約8,000件と数倍にのぼっている。なお、放火(現住建造物放火)が殺人より罪が重い理由は、殺人はあくまでも特定個人の生命を奪うにとどまる(注意:あくまで放火との対比上の表現であり、決して殺人を是認するものではない)が、放火は特定個人のみならず、不特定多数の生命、身体や財産、すなわち公共の安全をも脅かし、多くの人々の生活基盤を根底から崩壊させる危険性があるからだ、と考えられている。 ちなみに、昔からの隠語で放火のことを"赤猫(あかねこ)"と呼ぶ場合がある(赤猫のほかに、赤午とも呼ばれている)。
また、火災原因の究明は法に基づき消防が行うこととされているが、特に放火など不審火の場合、犯罪捜査の名目で警察が介入することが多く、警察の功績となりがちなのが現状である。 (最近は、放火が出火原因のトップに位置し続けているため、警察が、まず、不審火の可能性を前提に原因調査をしているからだと思われる)
[編集] 日本での火災発生状況
日本では、毎年約6万件の火災が発生している。
月別に見てみると、2月・3月に多い。これは、乾燥した気象条件の時に火災が発生しやすいからであり、実効湿度・風速と火災発生件数は相関関係にあることが判っている。そこで、毎年この時期に「春の全国火災予防運動」が実施されている。
火災による死者は、高齢者になるほど多くなる。年齢階層ごとに火災で死亡する確率を求めると、40歳を超えた当たりから、年齢に比例して死亡確率が高くなっている。これは、加齢するに従い、判断力や身体機能が衰えるからだと考えられている。ただし、直近の傾向として無職や一人暮らしの男性熟年層(45~64歳)の死亡者数が急増していることが、消防庁の調査で判明している(詳細は熟年男性の危険が顕著に増大 -住宅火災による死者急増の背景を参照)。
火災発生率の地域的な傾向を見ると、北陸地方では特に低く、東北地方では特に高くなっているが、その原因はよく判っていない。
また、日本は諸国と比べて火災発生率が非常に低い(欧米の数分の1程度)。これは「火災予防意識が非常に高いからだ」とする説もあれば、「火災のような恥ずべきことは公にしたくない、という国民性によるものであり、火災の実数は、把握数の数倍にのぼるはず」とする説もある。
管理の行き届かない建築物における火災も問題となっている。(雑居ビル火災)
[編集] 主な大規模火災
Category:火災の歴史も参照のこと。
- 1932年12月16日 - 白木屋百貨店火災 (東京都、死者14名。日本初の高層建築火災)
- 1934年3月21日 - 函館大火(函館市、死者2166名、焼損棟数11105棟)
- 1951年4月24日 - 桜木町事故(横浜市、死者106名)
- 1955年2月17日 - 聖母の園養老院火災(横浜市、死者99名)
- 1955年10月1日 - 新潟大火(新潟市、行方不明者1名)
- 1969年2月5日 - 磐光ホテル火災(郡山市、死者31名)
- 1972年5月13日 - 千日デパート火災 (大阪市、死者118名)
- 1972年11月6日 - 北陸トンネル火災事故(敦賀市、死者30名)
- 1973年11月29日 - 大洋デパート火災 (熊本市、死者104名)
- 1976年10月29日 - 酒田大火 (山形県酒田市、死者1名)
- 1979年7月11日 - 東名高速道路日本坂トンネル火災事故 (静岡市及び焼津市、死者7名)
- 1980年11月20日 - 川治プリンスホテル火災 (栃木県川治温泉、死者45名)
- 1982年2月8日 - ホテルニュージャパン火災(東京都千代田区、死者33名)
- 1990年3月18日 - 長崎屋火災(兵庫県尼崎市、死者15名)
- 2001年8月31日 - 歌舞伎町ビル火災(東京都新宿区、死者44名)
- 2003年9月26日-28日 - 出光興産北海道製油所タンク火災(死者0名)
- 2004年12月13日 - ドン・キホーテ浦和花月店火災(さいたま市緑区、死者3名)
[編集] 火災で死亡した人物
[編集] 迷信、俗信など
- 妊娠中に火事を見ると、赤い痣のある子供が生まれる。
- 建物の屋根や壁に「水」と書いておくと、火災にならない。