歩行者専用道路
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歩行者専用道路(ほこうしゃせんようどうろ)とは、歩行者による移動の安全性確保や、スポーツ(ジョギングなど)、レクリエーション(散歩など)として、道路の全部を歩行者だけで利用することを目的とした道路である。歩行者道(ほこうしゃどう)ともいう。
なお、歩行者天国(歩行者用道路)は、都道府県公安委員会による交通規制の一種であり、歩行者専用道路とは異なる。
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[編集] 定義
歩行者専用道路という言葉の定義は、法令によって異なる。
- 道路法
- 歩行者専用道路 - もつぱら歩行者の一般交通の用に供する道路又は道路の部分(当該道路の他の部分と構造的に分離されているものに限る)(第48条の13第3項)
- 道路交通法
- 道路構造令
- 歩道 - 専ら歩行者の通行の用に供するために、縁石線又はさくその他これに類する工作物により区画して設けられる道路の部分をいう。(第2条第1号)
[編集] 法令による差異
すなわち、道路法の歩行者専用道路は、道路全体が歩行者専用道路として指定されるか、または道路(延長方向)の一部分であって、その他の道路の部分とは分離されているもの(独立した道路)が指定される。また、歩行者専用道路を供用開始しようとする場合には、そこが道路または道路の部分として未供用である必要がある。
また、道路交通法の通行禁止規制としては、(通常は道路全体が)「歩行者専用」として規制される事もある。歩行者用道路、いわゆる歩行者天国に相当する。この規制の場合は、道路法による場合とは異なり、交通規制であるため、規制対象や日時を限定して規制されることもある。歩行者用道路・歩行者天国においては、歩行者の右側通行義務、歩道等通行義務、横断の方法または禁止に関する規制はすべて適用除外となる。すなわち、通常は車両が走る所の道路の中央寄り部分を、歩行者が好きに通行したり横断したりできる。
交通規制の「歩行者用道路」において、車両が特別な通行許可を受け又はその規制の対象から除外されている場合で通行する場合にも、特に歩行者に注意して徐行(歩行者用道路として、通常は道路全体が歩行者絶対優先)となる事に注意が必要である。
これらに対して、道路交通法や道路構造令の歩道は、「縁石線又はさくその他これに類する工作物により区画」されたものである。そのため、独立した道路ではなく、道路の一部分として取り扱われる。詳細は歩道の項を参照。
[編集] 整備状況
歩行者専用道路は、鉄道の廃線跡を利用した道路や、河川の堤防や道路の側面を利用した道路、などさまざまな形で、全国的に整備されている。また一部は、計画から歩行者専用道路として整備された道路(遊歩道)もある。
[編集] 道路標識
「歩行者専用」(325の4)の道路標識は、道路交通法の規定による歩行者専用道路であることを示し、及び歩行者専用道路の入口に必要な場所に設置される道路標識である。この標識が設置された道路では歩行者の安全確保とその円滑を図るため、補助標識に記載された内容を除き、車両の通行が禁止されている。
標識のデザインは国際的な統一規格である国際連合道路標識に基づいたものであり、大元はドイツで作られた。
[編集] 歩行者専用道路標識の都市伝説
歩行者専用道路標識は、しばし道路標識にまつわる都市伝説の一つとして話題にあがることがある。
日本における道路標識のひとつである「歩行者専用を示す規制標識」には大人(ソフト帽を被った男性)と子供が手を繋いだ姿が描かれているが、そのデザインは子供を誘拐しようとしている瞬間(宮崎勤事件など実際に起こった幼児誘拐事件の現場とされることもある)を、親子と間違われてたまたま撮られた写真がモデルになっているという話である(海外にも同内容のものが存在している)。
「山道で出会った親子連れらしい男性と少女が、実は連続誘拐殺人犯とその被害者であった、と後から新聞あるいはテレビを見て気づいた」という類似の都市伝説(これ自体も宮崎勤事件の影響でオリジナルから変化している)が存在し、その派生と考えられる。
しかし、日本においては道路標識のデザインは一切公募されていない。前述の通り、この標識のデザインは、ヨーロッパ各国における道路標識の国際統一規格である「国際連合道路標識」に属すもので、1968年にウィーンで開催された国連道路交通会議において採択された。日本のデザインもこの規格に準じたものである。つまり、「手をつなぐ親子」は日本固有のものではなく、ヨーロッパ各国で使用されているのである。以上の理由から、この都市伝説は事実無根である。
ドイツでは、男性と子供ではなく女性と子供というデザインになっている。これは、1970年ごろ、旧西ドイツのグスタフ・ハイネマン大統領が「歩行者専用道路標識は誘拐犯を連想させる」と西ドイツ国内で当時使用されていたデザインに関して問題視する発言したことを受けて、デザインが変更されたためである。この発言から「標識の男が誘拐犯である」ということが事実であるかのような内容にすりかわり、まことしやかに語られるようになった可能性はある。