比較言語学
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比較言語学(ひかくげんごがく)とは、言語学(歴史言語学)の一分野であり、親縁関係や同系性が推定される諸言語を比較することにより、同系性や親縁性を見出したり、あるいは共通祖語を再構したりしようとする学問。関係が不明な言語間で比較する研究は、対照言語学と言う。インドからヨーロッパの言語をまとめた「インド・ヨーロッパ語族」(印欧語族ともいう)に関するものが代表的。
比較言語学の手法は、同系性が前提とされる限り、どのような言語にも適応できる。たとえば、文献資料のないオーストロネシア語族にも使われ、数多く業績をあげている。方法論的には、音声学に基づいた音韻対応が最も有意な手続きとして用いられる。
しかし印欧比較言語学の伝統に依拠するあまり、音韻対応が見いだせない言語間の研究は認められない傾向がある(近代比較言語学が確立されるまでは、ただ発音や意味が似ているだけで精密な検証を行わず、現代においてもいわゆるトンデモ学説として一部で行われている)だが音韻対応以外にも、比較言語学が可能な方法論の構築は必須である。だが、音韻対応の紐帯を緩めておこなわれた比較言語学も無効であり、単なる「語呂合わせ」による言語間の研究を避けるためにも、音韻対応の公準は一定レベルは守られるべき、と考えられている。
言語の分類一覧も、比較言語学の成果をまとめたものである。
なお語族と人種・民族は必ずしも一致しない。
[編集] 基礎文献
- 風間喜代三『言語学の誕生-比較言語学小史』(『岩波新書』)、岩波書店、1978年(比較言語学の泰斗の書いた新書)。
- 高津春繁『比較言語学入門』(『岩波文庫』)、岩波書店、1992年(印欧比較言語学の概説、方法論など懇切な入門書)。
- 服部四郎『日本語の系統』(『岩波文庫』)、岩波書店、1999年(1959版 単行本有)(日本語、琉球語、朝鮮語、アルタイ諸語間の比較言語学的論究を集めたもの。「言語年代学」に依拠し、日本語と琉球語の祖語からの分岐年代は必ずしも言語学界で認められている訳ではない。しかし、氏の厳密な音声学に基づく音韻対応への考究は「日本語の系統」研究をするものの参照するべき公準ではある。
以上が廉価で比較的入手容易な基礎文献と考えられる。(但し、品切れが多い)