源氏物語絵巻
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源氏物語絵巻(げんじものがたりえまき)とは、源氏物語を題材にした絵巻である。本項では、平安時代末期の作とされる、いわゆる「隆能源氏」について述べる。
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[編集] 概要
通称「隆能源氏」と呼ばれる『源氏物語絵巻』は、平安時代末期に源氏物語を題材にして制作された現存最古の絵巻であるとされている。伴大納言絵巻、信貴山縁起絵巻とともに日本三大絵巻の一つにあげられる。
本来は源氏物語の54帖全体について作成されたと考えられている。各帖より1ないし3場面を選んで絵画化し、その絵に対応する物語本文を書写した「詞書」を各図の前に添え、「詞書」と「絵」を交互に繰り返す形式である。全部で10巻程度の絵巻であったと推定される。
現存するのは絵巻全体の一部分のみである。現在は名古屋市の徳川美術館に絵15面・詞28面(蓬生、関屋、絵合(詞のみ)、柏木、横笛、竹河、橋姫、早蕨、宿木、東屋の各帖)、東京都世田谷区の五島美術館に絵4面・詞9面(鈴虫、夕霧、御法の各帖)が所蔵され、それぞれ国宝に指定されている。徳川美術館に所蔵されている3巻強はもと尾張徳川家にあったものである。一方、五島美術館にある1巻弱はもと阿波蜂須賀家にあったものが江戸末に民間に流れたもので、実業家で茶人の益田孝(鈍翁)の所蔵を経て、五島慶太が買い取ったものである。この両者が、それぞれ尾張徳川家・蜂須賀家に入る以前の伝来は不明である。両者とも1932年(昭和7年)、保存上の配慮から詞書と絵を切り離し、巻物の状態から桐箱製の額装に改めた。このほか、東京国立博物館に若紫の巻の絵の断簡があり、書芸文化院の春敬記念書道文庫など数箇所に詞書の断簡が所蔵されている。
かつては藤原隆能が書いたとされたため「隆能源氏」と呼ばれていた。現在は院政期の5つ程度の複数のグループによる作品であると推定されている。
絵巻の詞書として源氏物語の本文が書かれている。このの本文は絵巻物の詞書きという性質上そのまま『源氏物語』の伝本とみなすことはできないが、現在残っている源氏物語の本文として最も古いもので、平安朝の本文を今日に伝えてくれる現存唯一の重要なものである。
[編集] 昭和復元模写
源氏物語絵巻(昭和復元模写)とは、櫻井清香により徳川美術館に保存されている原本を複製した物。最新の科学技術を使って原本を精確に複写した平成復元模写と違い、絵に櫻井清香自身の個性が反映されているため、原本とはまた違った絵画作品となっているとされる。
[編集] 参考文献
- よみがえる源氏物語絵巻―全巻復元に挑む(日本放送出版協会、2006年2月25日) ISBN 4-14081088-0
- だれが源氏物語絵巻を描いたのか 皆本二三江(2004年9月30日) ISBN 4-7942-1341-7
- 源氏物語絵巻を読む-物語絵の視界 久下裕利(笠間書院、1996年10月)ISBN 4-305-70164-0
- 源氏物語絵巻とその周辺 久下裕利(2001年4月、新典社)ISBN 4-7879-2710-1
- 図説源氏物語 (ふくろうの本) 石井正己(河出書房新社、2004年10月)ISBN 4-309-76054-6
- じっくり見たい『源氏物語絵巻』 佐野みどり(小学館、2000年2月10日) ISBN 4-0960-7003-1
- 豪華〈源氏絵〉の世界源氏物語 秋山虔・田口栄一(学研、1999年7月) ISBN 4-05-401117-9