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源氏物語 - Wikipedia

源氏物語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

源氏物語(げんじものがたり)は、平安時代中期に成立した、日本の長編物語、小説

文献初出は1001年で、このころには相当な部分までが成立していたと思われる。

分量、内容、文学的成果のいずれから言っても王朝物語のみならず日本文学史上の雄であり、後世に与えた影響ははかりしれない。

目次

[編集] 題名

この物語の本来の題名がなんであったのかは明らかではない。古写本には題名の記されていないものも多く、記されている場合でもさまざまなものが記されている。古い時代の写本や注釈書などの文献に記されている名称は大きく(1)「源氏の物語」、「光源氏の物語」、「光る源氏の物語」、「光源氏」、「源氏」、「源氏の君」などとする系統と、(2)「紫の物語」、「紫のゆかりの物語」などとする系統とに分かれる。これらはいずれも源氏(光源氏)または紫の上という主人公の名前をそのまま物語の題名としたものであって、物語の固有の名称であるとは言い難いことや、もし作者が命名した題名があるのならこのようにさまざまな題名が生まれるとは考えがたいため、これらの題名は作者が命名した題名ではない可能性が高いと考えられている。『紫式部日記』、『更級日記』、『水鏡』などのこの物語の成立時期に近い主要な文献に「源氏の物語」とあることなどから、物語の成立当初からこの名前で呼ばれていたと考えられているが、作者を「紫式部」と呼ぶことが『源氏物語』(=『紫の物語』)の作者であることに由来するならば、その通称のもとになった「紫の物語」や「紫のゆかりの物語」という名称はかなり早い時期から存在したと見られることなどから、源氏を主人公とした名称よりも古いとする見解もある。なお、『河海抄』などの古伝承には、「源氏の物語」と呼ばれる物語が複数存在し、その中で最も優れているのが「光源氏の物語」であるとするものがあるが、現在「源氏物語」と呼ばれている物語以外の「源氏の物語」の存在を確認することが出来ないため、この伝承は事実ではないと考えられている。

なおこのほかに「源語(げんご)」、「紫文(しぶん)」、「紫史(しし)」などという漢語風の名称で呼ばれていることもあるが、漢籍の影響を受けたものでありそれほど古いものはないと考えられており、池田亀鑑によればその使用は江戸時代を遡らないとされる。

[編集] 作者

一条天皇中宮上東門院彰子藤原道長息女)に女房として仕えた紫式部がその作者であるというのが通説である。

物語中に作者を知る手がかりはないが、以下の書より作者が紫式部であることはまず動かないとされている。ただし、後述の成立・生成・作者に関する諸説のように複数作者説(一部の帖を後人の者とする)もある。

  • 紫式部日記』(写本の題名は全て『紫日記』)中に自作の根拠とされる次の3つの記述
  1. 藤原公任の 源氏の物語の若紫 という呼びかけ、
    「左衛門督 あなかしここのわたりに若紫やさぶらふ とうかがひたまふ 源氏にかかるへき人も見えたまはぬにかの上はまいていかでものしたまはむと聞きゐたり」
  2. 一条天皇の源氏の物語の作者は日本紀をよく読んでいるという述懐により日本紀の御局と呼ばれたこと。
    「内裏の上の源氏の物語人に読ませたまひつつ聞こしめしけるに この人は日本紀をこそよみたまへけれまことに才あるべし とのたまはせけるをふと推しはかりに いみじうなむさえかある と殿上人などに言ひ散らして日本紀の御局ぞつけたりけるいとをかしくぞはべる」
  3. 藤原道長が源氏の物語の前で好色の歌を日記作者に詠んだこと。
    「源氏の物語御前にあるを殿の御覧じて、例のすずろ言ども出で来たるついでに梅の下に敷かれたる紙に書かせたまへる すきものと名にしたてれば見る人の折らで過ぐるはあらじとぞ思ふ たまはせたれば 人にまだ折られぬものをたれかこのすきものぞとは口ならしけむ めざましう と聞こゆ」
底本、宮内庁蔵『紫日記』黒川本
  • 尊卑分脈(『新編纂図本朝尊卑分脉系譜雑類要集』)の註記
「上東門院女房 歌人 紫式部是也 源氏物語作者 或本雅正女云々 為時妹也云々 御堂関白道長妾」
  • 後世の源氏物語註釈書

なお、紫式部ひとりが書いたとする説の中にも(1)短期間に一気に書き上げられたとする考え方と(2)長期間に渡って書き継がれてきたとする考え方がある。(2)著作期間が長期にわたるとする場合は、その間の紫式部の環境の変化(結婚、出産、夫との死別、出仕など)が作品に反映しているとするものが多い。

[編集] 概要

54帖より成る長篇で、800首弱の和歌を含む典型的な王朝物語。物語としての虚構の秀逸、心理描写の巧みさ、筋立ての巧緻、あるいはその文章の美と美意識の鋭さから日本文学史上最高の傑作とされる。ただし、しばしば喧伝されている「世界最古の長篇小説」という評価は誤りで、中村真一郎の説に従って『黄金の驢馬』や『サチュリコン』につづく「古代世界最後の(そして最高の)長篇小説」とするほうがより正確である。20世紀に入って英訳、仏訳などにより欧米社会にも紹介され、その影響を受けて著された『失われた時を求めて』との類似から高く評価されるようになった。

物語は、母系制が色濃い平安朝中期を舞台にして、天皇の皇子として生まれながら臣籍降下して源氏姓となった光源氏が数多の恋愛遍歴をくりひろげながら人臣最高の栄誉を極め(第1部)、晩年にさしかかって愛情生活の破綻による無常を覚えるさままでを描く(第2部)。さらに老年の光源氏をとりまく子女の恋愛模様や(同じく第2部)、或いは源氏死後の孫たちの恋(第3部)がつづられ、長篇恋愛小説として間然とするところのない首尾を整えている。

後続して作られた王朝物語の大半は『源氏物語』の影響を受けており、後に「源氏、狭衣」として二大物語と称されるようになった『狭衣物語』などはその人物設定や筋立てに多くの類似点が見受けられる。また文学に限らず、絵巻(『源氏物語絵巻』)、香道など、他分野の文化にも影響を与えた点も特筆される。

さらに詳しいあらすじは源氏物語各帖のあらすじを参照。

[編集] 各帖の名前

読み   備考
 1 桐壺 きりつぼ 源氏誕生-12歳 a系
 2 帚木 ははきぎ 源氏17歳夏 b系
 3 空蝉 うつせみ 源氏17歳夏 帚木の並びの巻、b系
 4 夕顔 ゆうがお 源氏17歳秋-冬 帚木の並びの巻、b系
 5 若紫 わかむらさき 源氏18歳 a系
 6 末摘花 すえつむはな 源氏18歳春-19歳春 若紫の並びの巻、b系
 7 紅葉賀 もみじのが 源氏18歳秋-19歳秋 a系
 8 花宴 はなのえん 源氏20歳春 a系
 9 あおい 源氏22歳-23歳春 a系
10 賢木 さかき 源氏23歳秋-25歳夏 a系
11 花散里 はなちるさと 源氏25歳夏 a系
12 須磨 すま 源氏26歳春-27歳春 a系
13 明石 あかし 源氏27歳春-28歳秋 a系
14 澪標 みおつくし 源氏28歳冬-29歳 a系
15 蓬生 よもぎう 源氏28歳-29歳 澪標の並びの巻、b系
16 関屋 せきや 源氏29歳秋 澪標の並びの巻、b系
17 絵合 えあわせ 源氏31歳春 a系
18 松風 まつかぜ 源氏31歳秋 a系
19 薄雲 うすぐも 源氏31歳冬-32歳秋 a系
20 朝顔(槿) あさがお 源氏32歳秋-冬 a系
21 少女 おとめ 源氏33歳-35歳 a系
22 玉鬘 たまかずら 源氏35歳 以下玉鬘十帖、b系
23 初音 はつね 源氏36歳正月 玉鬘の並びの巻、b系
24 胡蝶 こちょう 源氏36歳春-夏 玉鬘の並びの巻、b系
25 ほたる 源氏36歳夏 玉鬘の並びの巻、b系
26 常夏 とこなつ 源氏36歳夏 玉鬘の並びの巻、b系
27 篝火 かがりび 源氏36歳秋 玉鬘の並びの巻、b系
28 野分 のわき 源氏36歳秋 玉鬘の並びの巻、b系
29 行幸 みゆき 源氏36歳冬-37歳春 玉鬘の並びの巻、b系
30 藤袴 ふじばかま 源氏37歳秋 玉鬘の並びの巻、b系
31 真木柱 まきばしら 源氏37歳冬-38歳冬 以上玉鬘十帖、玉鬘の並びの巻、b系
32 梅枝 うめがえ 源氏39歳春 a系
33 藤裏葉 ふじのうらば 源氏39歳春-冬 a系、以上第一部
34 34 若菜 わかな -じょう 源氏39歳冬-41歳春  
35 -げ 源氏41歳春-47歳冬 若菜上の並びの巻
35 36 柏木 かしわぎ 源氏48歳正月-秋  
36 37 横笛 よこぶえ 源氏49歳  
37 38 鈴虫 すずむし 源氏50歳夏-秋 横笛の並びの巻
38 39 夕霧 ゆうぎり 源氏50歳秋-冬  
39 40 御法 みのり 源氏51歳  
40 41 まぼろし 源氏52歳の一年間  
41 雲隠 くもがくれ 本文なし。光源氏の死を暗示。以上第二部
42 匂宮
匂兵部卿
におう(の)みや
におうひょうぶきょう
14歳-20歳  
43 紅梅 こうばい 薫24歳春 匂宮の並びの巻
44 竹河 たけかわ 薫14,5歳-23歳 匂宮の並びの巻
45 橋姫 はしひめ 薫20歳-22歳 以下宇治十帖
46 椎本 しいがもと 薫23歳春-24歳夏  
47 総角 あげまき 薫24歳秋-冬  
48 早蕨 さわらび 薫25歳春  
49 宿木 やどりぎ 薫25歳春-26歳夏  
50 東屋 あずまや 薫26歳秋  
51 浮舟 うきふね 薫27歳春  
52 蜻蛉 かげろう 薫27歳  
53 手習 てならい 薫27歳-28歳夏  
54 夢浮橋 ゆめのうきはし 薫28歳 以上宇治十帖。以上第三部
  • 以上54帖の名は、紫式部自身がつけたとも、後世の人々がつけたとも言われている。後世では、源氏香投扇興の点数などに使われ、また女官や遊女が好んで名乗ったり(源氏名)した。

[編集] 成立・生成・作者に関する諸説

現在では、3部構成説(第1部:「桐壺」から「藤裏葉」までの33帖、第2部:「若菜上」から「幻」までの8帖、第3部:「匂宮」から「夢浮橋」までの13帖)が定説となっているが、古来よりその成立、生成、作者、原形態に関してはさまざまな議論がなされてきた。以下に特に重要であろうと思われるものを掲げる。

[編集] 巻数

現在、『源氏物語』は通常54帖であるとされている。但し巻名が伝わる中でも「雲隠」は題のみで本文が現存しない。そのためこの54帖とする数え方にも

  1. 巻名のみの「雲隠」を含め「若菜」を上下に分けずに54帖とする(中世以前によく行われた)
  2. 「雲隠」を除き「若菜」を上下に分けて54帖とする(中世以後に有力になった)

の2つの数え方がある。また鎌倉時代以前には、『源氏物語』は「雲隠」を含む37巻と「並び」18巻とに分けられており、並びの巻を含めない37巻という数え方が存在し、更に宇治十帖全体を一巻に数えて全体を28巻とする数え方をされることもあった。37巻とする数え方は仏体37尊になぞらえたもので、28巻とする数え方は法華経28品になぞらえたものであると考えられている。これらはいずれも数え方が異なるだけであって、その範囲が現在の『源氏物語』と異なるわけではない。

但しそれらとは別に現在存在しない巻を含めるなどによって別の巻数を示す資料も存在する。

[編集] 失われた巻々

かつて、『源氏物語』には、現在の『源氏物語』には存在しないいくつかの「失われた巻々」が存在したとする説がある。そもそも『源氏物語』が最初から54帖であったかどうかというそのこと自体がはっきりしない。

現行の本文では(a)光源氏と藤壺が最初に関係した場面、(b)六条御息所とのなれそめ、(c)朝顔の斎院がはじめて登場する部分、に相当する部分が存在せず、位置的には「桐壺」と「帚木」のあいだにこれらの内容があってしかるべきであるとされる(現にこの脱落を補うための帖が後世の学者によって幾作か書かれている)。藤原定家の記した「奥入」には、この位置に「輝く日の宮(かかやくひのみや)」という帖がかつてはあったとする説が紹介されており、池田亀鑑や丸谷才一のようにこの説を支持する人も多い。つまり「輝く日の宮」については(1)もともとそのような帖はなく作者は(a)(b)(c)のような場面をあえて省略した、(2)「輝く日の宮」は存在したがある時期から失われた、(3)一度は「輝く日の宮」が書かれたがある時期に作者の意向もしくは作者の近辺にいた人物と作者の協議によって削除された(丸谷才一は藤原道長の示唆によるものとする)、の3説があることになる。なお、「輝く日の宮」は「桐壺」の巻の別名であるとする説もある。

それ以外にも古注の一つ、『白造紙』に「サクヒト」、「サムシロ」、「スモリ」といった巻名が、また藤原為氏の書写と伝えられる源氏物語古系図に、「法の師」、「すもり」、「桜人」、「ひわりこ」といった巻名が見えるなど、古注や古系図の中にはしばしば現在見られない巻名や人名が見えるため、「輝く日の宮」のような失われた巻が他にもあるとする説がある。また、『無名草子』や『今鏡』のように古い時代の資料に『源氏物語』を60巻であるとする文献がいくつか存在する。一般的にはこの60巻という数字は仏教経典の天台60巻になぞらえた抽象的な巻数であると考えられているが、この推測はあくまで「60巻という数字が事実でなかった場合、なぜ(あるいはどこから)60巻という数字が出てきたのか。」の説明に過ぎず、60巻という数字が事実でないという根拠が存在するわけではない。この他『更級日記』では『源氏物語』の巻数を「五十余巻(よまき)」としているが、これが54巻を意味しているのかどうかについても議論がある。

[編集] 並びの巻

鎌倉時代以前には、「雲隠」を含む37巻と「並び」18巻とに分けられていた。(なお並びがあるものは他に『宇津保物語』、『浜松中納言物語』がある)このことに対して「奥入」と鎌倉時代の文献『弘安源氏論議』において、その理由が不審である旨が記されている。帖によっては登場人物に差異があり、話のつながりに違和感を覚える箇所があるため、ある一定の帖を抜き取ると、話がつながるという説がある。その説によれば、紫式部が作ったのが37巻の部分で、残りの部分は後世に仏教色を強めるため、読者の嗜好の変化に合わせるために書き加えられたものだとしている。

[編集] 並びの巻に関する寺本直彦の説

「源氏物語目録をめぐって―異名と并び」(『文学・語学』1978年6月)による。

『源氏物語』の巻名の異名は次の通りであるが、

  • a桐壺 - 壺前栽
  • b賢木 - 松が浦島
  • c明石 - 浦伝
  • d少女 - 日影
  • e若菜(上‐箱鳥、下‐諸鬘、上下‐諸鬘)
  • f匂宮 - 薫中将
  • g橋姫 - 優婆塞
  • h宿木 - 貌鳥
  • i東屋 - 狭蓆
  • j夢浮橋 - 法の師

寺本は、hで「貌鳥」を並の巻の名とする諸書の記述に注目し、「貌鳥」は現在の「宿木」巻の後半ないし末尾であったことを明らかにし、e「若菜」に対する「諸鬘」なども同様であったと推論した。 その他a、jもそれぞれ、「桐壺」が「桐壺」と「壺前栽」、「夢浮橋」が「夢浮橋」と「法の師」に二分されていたことを示すもので、また『奥入』の「空蝉」巻で、

一説には、二(イ巻第二)かヽやく日の宮このまきなし(イこのまきもとよりなし)。ならひの一はヽ木ヽうつせみはおくにこめたり(イこのまきにこもる)。

という記述についても、「輝く日の宮」が別個にあるのではなく、それは現在の「桐壺」巻の第3段である藤壺物語を指し、「輝く日の宮」を「桐壺」巻から分離し第2巻とし、これを本の巻とし、「空蝉」巻を包含した形の「帚木」巻と「夕顔」巻とをそれぞれ並一・並二として扱う意味であると理解しようとした。 寺本は結論として、並とは本の巻とひとそろい、ひとまとめになることを示し、巻々を分けまた合わせる組織・構成に関係づけた。

[編集] 第一部二系統説

武田宗俊の説によれば、『源氏』第一部はa系(紫の上系)、b系(玉鬘系)に分けられるという。(「並びの巻」説との違いは、「帚木」と「玉鬘」が「初音」以下と同じ系統に入ること。「玉鬘」以下を「玉鬘十帖」と通称する。)

武田によればa系がオリジナル(原『源氏物語』)であり、b系はそれを補うかたちで後から作られ、補入されたために、(1)a系だけで話が通じる、(2)b系の女君(空蝉、夕顔、末摘花、玉鬘など)はa系に全く登場しない、(3)a系とb系の帖が前後にあるとつながりがわるい、(4)b系は時間的にa系と重なりがちである、などという事情が生まれたのではないかと推測されるという。

丸谷才一は大野晋との対談でこの説をさらに深め、(1)b系は空蝉、夕顔、末摘花、玉鬘を中心に源氏の恋の失敗を描いた帖であることが共通する、(2)筆がa系よりもこなれており叙述に深みがある、などの点から、a系第一部の評価が高くなったのちに、今度は御伽噺の主人公のように完璧な光源氏(実際にa系の源氏はそう描かれている)の人間味を描くために書かれたのがb系ではないかと述べている。またb系には、後に「雨夜の品定め」と呼ばれる女性論や、「日本紀などはただかたそばぞかし」と源氏に語らせた物語論もあり、たいへん興味深いものとなっている。

[編集] 第3部と宇治十帖

「匂宮」巻以降は源氏の亡き後、光源氏・頭中将の子孫たちのその後を記す。特に最後の10帖は「宇治十帖」と呼ばれ、宇治を舞台に、薫の君匂宮の2人の男君と宇治の三姉妹の恋愛模様を主軸にした仏教思想の漂う内容となっている。

第3部および宇治十帖については他作説が多い。主なものを整理すると以下のとおりとなる。

  • 匂宮」「紅梅」「竹河」は宇治十帖とともに後人の作を補入したものであるとの小林栄子による説。
  • 宇治十帖は大弐三位(紫式部の娘賢子)の作であるとする説。 一条兼良の『花鳥余情』、一条冬良の『世諺問答』などによる。また与謝野晶子は「若菜」以降の全巻が大弐三位の作であるとした。
  • 別人の作説 安本美典「宇治十帖の作者─文章心理学による作者推定」[1957年]、文部省(現文部科学省)の統計数理研究所(「雲隠」までと宇治十帖の名詞助動詞の使用頻度が明らかに異なるという研究結果による)

なお、通説では、第3部はおそらく式部の作(第2部執筆以降かなり長期間の休止を置いたためか、用語や雰囲気が相当に異なっているが、それをもって必ずしも他人の作とまで言うことはできない)、というものである。また、研究者のあいだで通説においても「紅梅」「竹河」はおそらく別人の作であるとされる。(「竹河」については武田宗俊、与謝野晶子の説でもある。)

[編集] その他の説

  • 原『源氏物語』短編説 - 原『源氏物語』は、「若紫」「蛍」程度の短編であるとの説。和辻哲郎による。
  • 後挿入説 - 一部の帖があとから挿入されたという説。「桐壺」1帖(室町時代の『源氏物語聞書』、与謝野晶子の説)、「帚木」「空蝉」「夕顔」3帖(風巻景次郎の説)など。

[編集] 主要テーマの諸説

『源氏物語』は、なぜ藤原氏全盛の時代(作者の紫式部も藤原氏で、その上『尊卑分脈』注に「紫式部是也(中略)御堂関白道長妾」とあるなど藤原道長の愛人とされる)に、かつて藤原一族が安和の変で失脚させた源氏朱雀天皇以降、皇后に源氏がなったことはなく、常に藤原北家からの皇后である。)を主人公にし、源氏が恋愛に常に勝ち、源氏の帝位継承をテーマとして描いた(王朝物語の全てが源氏が勝利する(例えば『狭衣物語』の狭衣中将)ことを含む)のかを問題としたのは推理作家である藤本泉以外はいない。

井沢元彦逆説の日本史などで、恨みをはらんで失脚していった源氏の怨霊を静める為だという説を挙げている。

もっともこれらの説は学説ではない憶説である。

[編集] 本文

[編集] 概要

写本については池田亀鑑の説では「青表紙本系」、「河内本系」の2系統と、そのどちらにも属さない「別本」の計3種類に分けられるとされる。ただしその後もこの分類について妥当か研究されている。

  • 青表紙本系 藤原定家が校合したもの。その表紙が青かったことからこう呼ばれる。定家の直筆『定家本』4帖を含む。一般的には最も紫式部の書いたものに近いとされている。
  • 河内本系 大監物 源光行親行の親子が校合したもの。彼ら2人とも河内守を経験したことがあることからこう呼ばれる。表題は『光源氏』となっているものも多い。
  • 別本 「青表紙本系」および「河内本系」のどちらでもないもの。特定の系統を示すものではない。一般には「青表紙本系」と「河内本系」が混合し、崩れた本文であると考えられるが、中には藤原定家らによって整理される以前の形態を残すものもあると考えられている。

ただし流通しているものは、混合している。

近世以前に印刷されたものはほとんど仏典に限られ、そうでないものは写本によって流通していた。また、筆写の際に文の追加・改訂が行われ、書き間違い、錯簡も多く、鎌倉時代には21種の版があったとされる。そこで藤原定家はそれらを原典に近い形に戻そうとして整理したものが「青表紙本」系の写本である。ただしその写本も定家自筆のものは4帖しか現存せず、それ以降も異本が増え室町時代にはには百数十種類にも及んだ。

参考

[編集] 本文の伝承の始まり

紫式部の書いた『源氏物語』の原本は現存していない。また『紫式部日記』の記述によれば紫式部の書いた原本をもとに当時の能書家によって清書された本があるはずであるが、これらもまた現存するものは無い。『紫式部日記』の記述によると、そもそも作者の自筆の原本の段階で草稿本、清書本など複数の系統の本が存在し、作者の手元にあった草稿本が道長の手によって勝手に持ち出されるといった意図しないケースを含めてそれぞれが外部に流出するなど、『源氏物語』の本文は当初から非常に複雑な伝幡経路をたどっていたことが分かる。確実に平安時代に作成されたと判断できる写本は現在のところ一つも見つかっておらず、この時期の写本を元に作成されたと見られる写本も非常に数が限られている。このため現在ある諸写本を調べていけば何らかの一つの本文にたどり着くのかどうかさえ議論に決着がつかない状態である。そのため現在では紫式部が書いた原本の復元はほぼ不可能であると考えられている。

なお、平安時代末期に成立したと見られる『源氏物語絵巻』には、絵に添えられた詞書として『源氏物語』の本文と見られるものが記されており、その中には現在知られている『源氏物語』の本文と大筋で同じながら現在発見されているどの写本にも見られない本文が含まれている。この本文は、現在確認されている限りで最も古い時代に記された『源氏物語』の本文ということになるが、「絵巻の詞書」というその性質上もともとの本文の要約である可能性などもあるため本来の『源氏物語』本文をどの程度忠実に写し取っているのか解らないとして本文研究の資料としては使用できないとされている。

『源氏物語』は完成直後から広く普及し多くの写本が作られたと見られる。しかしながら鎌倉時代以降の『源氏物語』が古典として重要な教養の源泉であるとされた以後の時代に作成された写本は、証本となしうる信頼できる写本を元に注意深く写しとって、きちんと校合などもした上で完成させることが一般的であったが、それ以前、平安時代には『源氏物語』等の物語は広く普及し多くの写本が作られており、その中には従一位麗子本等の身分の高い人物が自ら作ったと見られる写本もあったのであるが、物語という作品の位置付けが「絵空事」「女子供の手慰み」といったものであり、勅撰集等公的な位置付けを持った歌集はもちろん、そうでない私的な歌集等と比べても極めて低いものであった。そのため当時は筆写の際にかなり自由に文の追加・改訂が行われるのがむしろ一般的であったと見られる。この際、作者の紫式部が受領階級の娘であり妻であったという、当時の身分・階級制度の中では高いとは言えない地位にあったことも、本文を忠実に写し取り伝えていこうとする動機を欠く要因になったとする意見も学者の中には多い。

また『更級日記』の中の、作者が『源氏物語』の一部分だけを読む機会があって最初からすべてを読みたいと願ったという記述に見られるように、『源氏物語』のような大部の書物は常に全体がセットになって流通しているというわけではなかったと見られる。写本による流通が主であった時代には大部の書物は全体の中から自分が残したい、あるいは人に読ませたいと考えた部分だけを書き写しすといった形で流通することも少なくなかったと考えられる。このようないくつかの現象の結果として、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけてのころには多くの『源氏物語』の写本が存在しているものの、家々が持つ写本ごとにその内容が違っており、どれが元の形であったのか分からないという状況になっていた。

[編集] 「青表紙本」と「河内本」の成立

『源氏物語』が単なる「女子供の手慰み」という位置づけから『古今集』等と並んで重要な教養(歌作り)の源泉として古典・聖典化していった平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて、『源氏物語』の本文について2つの大きな動きが起こった。1つは藤原定家によるもので、その成果が「青表紙本」系本文であり、もう1つが河内学派によるものでその成果が「河内本」系の本文である。これ以後20世紀末ころから「別本」系本文の再評価が始まるまでの長い間、『源氏物語』の本文についてはこの2つの本文をめぐって動くことになる。

この両者の作業はいずれも乱れた状況にあった『源氏物語』の本文を正そうとするものであったが、その結果は若干異なったものとなった。現在ある「青表紙本」と「河内本」の本文を比べると、「青表紙本」の方を見ると意味が通らない多くの箇所で「河内本」を見ると意味が通るような本文になっていることが多い。これは「河内本」が意味の通りにくい本文に積極的に手を加えて意味が通るようにする方針で校訂されたのに対して、「青表紙本」では意味の通らない本文も可能な限りそのまま残すという方針で校訂されたためであるからだと考えられている。このことは藤原定家と源光行らが共にほぼ同じ資料を前にして、当時の本文の状況を「さまざまに異なった本文が存在し、その中のどれが正しいのかわからない。」と認識していたにもかかわらず、定家は「その疑問を解決することはできなかった。」という意味のことを述べ、源光行は「さまざまな調査の結果疑問をすっきりと解決することができた。」という意味のことを述べるという正反対の結論に達していることともよく対応していると考えられて来た。但し藤原定家の作り上げた「青表紙本」系統の本文が本当に元の本文に手を加えていないかどうかについては、近年になって藤原定家の『土佐日記』等の他の古典の写本作成に対する態度を詳細に調査することによってある場合には積極的に本文に手を加えることもあるということが明らかになってきたために、再検討の必要が唱えられている。

[編集] 室町時代・江戸時代

この2系統の本文のうち、鎌倉時代には「河内本」が圧倒的に優勢な状況であり、今川了俊などは、「青表紙本は絶えてしまった。」と述べていたほどであった。その最も大きな原因は、話の筋や登場人物の心情を理解するためにはそれ自体として意味のくみとれなかったり、前後の記述に矛盾のある(ように見える)箇所を含んでいる「青表紙本」よりも、そのような矛盾を含んでいない(ようにみえる)「河内本」のほうが使いやすかったからであると考えられている。それでも室町時代半ば頃から藤原定家の流れを汲む三条西家の活動により古い時代の本文により忠実だとされる「青表紙本」が優勢になり、逆に「河内本」の方が消えてしまったかのような状況になった。ただし三条西家系統の「青表紙本」は純粋な「青表紙本」と比べると「河内本」等からの混入が見られる本文であった。

その後江戸時代に入ると、版本による『源氏物語』の刊行が始まり、裕福な庶民にまで広く『源氏物語』が行き渡るようになってきた。「絵入源氏物語」、「首書源氏物語」、「源氏物語湖月抄」といった版本の本文は当時最も有力であった広い意味での「青表紙本」系統の三条西家系統の本文にさらに「河内本」や「別本」からの混入が見られる本文であった。写本や版本によって本文が異なることはこの時代すでに知られており、本居宣長などもその点に付いての指摘を行ったこともあるが本格的な本文研究に進むことは無かった。この時代、良質な写本の多くは大名や公家、神社仏閣などに秘蔵されており、どこがどのような写本を所蔵しているのかということすらほとんどの場合明らかではなかったため、複数の写本を実際に手にとって具体的に比較することは事実上不可能であった。

[編集] 明治時代以後

明治時代に入ると活字による印刷本文の発行が始まった。当初は江戸時代に発行された刊本をそのまま活字化するだけであったが、次第により古い、より原本に近いと考えられる本文を求めるようになり、「首書源氏物語」の本文と「源氏物語湖月抄」の本文とではどちらが優れているのかといった議論を経て1914年(大正4年)に「首書源氏物語」を底本にした校訂本である源氏物語が有朋堂文庫から出版され、広く普及した。やがて明治末年ころから学問的な本文研究の努力が本格的に始まった。多くの学者の努力によって「大島本」などの「青表紙」系統の写本や当時はすでに失われてしまったと考えられていた「河内本」系統の写本など多くの古写本が発見され、学問的な比較作業が行われた。その結果は池田亀鑑により『校異源氏物語』および『源氏物語大成 校異編』に結実した。

池田亀鑑は集められた多くの写本を「青表紙本系」と「河内本系」の2つに分け、それに属さない写本を「別本」として1つにまとめ、3種類の系統に分けた。古注の中等で言及されており、言葉だけは広く知られていた「青表紙本」と呼ばれる写本のグループと「河内本」と呼ばれる写本のグループが本当に存在することはこの時代になって初めて明らかになったと言うことが出来る。この3分類法はいろいろな別の分野での研究結果とも一致すると考えられたこともあって、説得力のある見解として広く受け入れられるようになった。但し、池田はそれぞれの写本をどの分類に入れるかを決めるに当たってはそれぞれの写本の奥書(その写本がどのような写本からいつ誰によってどのように写されたのかといったことを記してある部分)の内容等のそれぞれの写本の外形的なものを重視した。

しかしこのような歴史的経緯や写本を外形的な特徴に基づいて分類することが本文そのものの内容の分類として正しい、妥当なものであるのかどうか、そもそも「青表紙本」や「河内本」が成立したのは事実であるとしても本文の系統としてそのような区分を立てることが妥当なのかどうかについての検討をすることも無かった点には注意を払う必要がある。

このように、その後の研究によってこの3分類法はいろいろと問題点も指摘されるようになってはいるが、現時点でも一応は有効なものとされている。

これらの3分類を見直すべきだとする見解としては、阿部秋生による、「奥書に基づいて写本を青表紙本、河内本などと分類することが妥当なのかどうかは、本文そのものを比較しそういう本文群が存在することが明らかになった後で初めて言えることであって、その手続きを経ることなく奥書に基づいて写本を分類することは本文そのものを比較するための作業の前段階の仮の作業以上の意味を持ち得ない。」あるいは、「もし青表紙本がそれ以前に存在したどれか一つの本文を忠実に伝えたのであれば、河内本が新しく作られた混成本文であるのに対し青表紙本とは別本の中の一つであり、源氏物語の本文系統は青表紙本・河内本・別本の3分類で考えるべきではなく別本と河内本の2分類で考えるべきである。」といったものがある。[1]

[編集] 実際の写本

古い時代に作られ現在まで伝わっている実際の写本は、出来上がった写本が完成当時の姿をそのまま伝えられていることは少なく、一部が欠けてしまったり、その欠けた部分を補うために別の写本と組み合わせたり、別系統の本文を持った写本と校合されていることも少なくない。またこのような状態の写本を元にしてそのまま写した写本を作成したために最初に完成した時点ですでに巻ごとに異なった系統の本文になったと見られる写本も存在する。

例えば「青表紙本」系統の写本の中で最も良質な本文であるとされ、現在多くの校訂本の底本に採用されている飛鳥井雅康筆の「大島本」の場合でも、「浮舟」を欠いた53帖しか現存しておらず、「初音」帖は他の部分と同じ飛鳥井雅康の筆でありながら本文自体は「青表紙本」系統の本文ではなく「別本」系統の本文であり、「桐壺」と「夢浮橋」は後世の別人の筆である。またほぼ全巻にわたって数多くの補筆や訂正の跡が見られるが、その内容は「河内本」系統の写本に基づくと見られるものが多い。

[編集] 登場人物

本項目:源氏物語の登場人物一覧 - Category:源氏物語の登場人物

源氏物語の登場人物は膨大な数に上るため、ここでは主要な人物のみを挙げる。

光源氏
第1部・第2部の主人公。桐壺帝と桐壺更衣の子で桐壺帝第二皇子。臣籍降下して源姓を賜る。いったん須磨に蟄居するが、のち復帰し、さらに准太上天皇に上げられ、六条院と称せられる。原文では「君」「院」と呼ばれる。妻は葵の上、女三宮、事実上の正妻に紫の上。子は、夕霧(母は葵の上)、冷泉帝(母は藤壺中宮、表向きは桐壺帝の子)、明石中宮今上帝の中宮。母は明石の御方)。ほか養女に秋好中宮(梅壺女御)(六条御息所の子)と玉鬘(内大臣と夕顔の子)、表向き子とされる薫(柏木と女三宮の子)がいる。
桐壺帝
光源氏の父。子に源氏のほか、朱雀帝(のち朱雀院)、蛍兵部卿宮、八の宮などが作中に出る。冷泉帝は、桐壺帝の実子でなく、源氏の子。
桐壺更衣
桐壺帝の更衣。源氏が3歳のとき夭逝する。
藤壺中宮
はじめ藤壺女御として登場。桐壺帝の先帝の内親王。桐壺更衣に瓜二つで、そのため死後後宮に上げられる。源氏と密通して冷泉帝を産む。
葵の上
左大臣の娘で、源氏の最初の正妻。源氏より年上。母大宮は桐壺帝の姉妹であり、源氏とは従兄妹同士となる。夫婦仲は長らくうまくいかなかったが、懐妊し、夕霧を生む。六条御息所との車争いにより怨まれ、生霊によって取り殺される。
頭中将/内大臣
左大臣の子で、葵の上の同腹の兄。源氏の友人でありライバル。恋愛・昇進等で常に源氏に先んじられる。子に柏木、雲居雁(夕霧夫人)、弘徽殿女御(冷泉帝の女御)、玉鬘(夕顔の子、髭黒大将夫人)、近江の君など。主要登場人物で唯一一貫した呼び名のない人物。
六条御息所
桐壺帝の前東宮(桐壺帝の兄)の御息所。源氏の愛人。源氏への愛着が深く、その冷淡を怨んで、葵の上を取り殺すに至る。前東宮との間の娘は、伊勢斎宮、のちに源氏の養女となり、冷泉帝の後宮に入り、秋好中宮となる。その屋敷を、死後源氏は改築して、壮大な邸宅を築いた(六条院の名はここから)。
紫の上
藤壺中宮の姪、兵部卿宮の娘。幼少の頃、源氏に見出されて養育され、葵の上亡き後、事実上の正妻となる。源氏との間に子がなく、明石中宮を養女とする。晩年は女三宮の降嫁により、源氏とやや疎遠になり、無常を感じる。
明石の御方
明石の入道の娘。源氏が不遇時にその愛人となり、明石中宮を生む。不本意ながら娘を紫の上の養女とするが、入内後再び対面し、以後その後見となる。

女三宮
朱雀院の第三皇女で、源氏の姪にあたる。藤壺中宮の姪であり、朱雀院の希望もあり、源氏の晩年、二番目の正妻となる。柔弱な性格。柏木と通じ、薫を生む。
柏木
内大臣の長男で、女三宮を望んだが、果たせず、降嫁後、六条院で女三宮と通じる。のち露見して、源氏の怒りをかい、それを気に病んで病死する。
夕霧
源氏の長男。母は葵の上。母の死後しばらくその実家で養育されたのち、源氏の六条院に引き取られて、花散里に養育される。2歳年上の従姉である右大臣の娘雲居雁と幼少の頃恋をし、のち夫人とする。柏木の死後、その遺妻朱雀院の女二宮(落葉の宮)に恋をし、強いて妻とする。

第3部の主人公。源氏(真実には柏木)と女三宮の子。身体からよい薫がするため、そうあだ名される。宇治の八の宮の長女大君、その死後は異母妹の浮舟を相手に恋愛遍歴を重ねる。
匂宮
今上帝と明石中宮の子。第三皇子という立場から、放埓な生活を送る。薫に対抗心を燃やし、焚き物に凝り、匂宮と呼ばれる。宇治の八の宮の中君を、周囲の反対をおしきり妻にするが、その異母妹浮舟にも関心を示し、薫の執心を知りながら奪う。
浮舟
八の宮が女房に生ませた娘。母が結婚し、養父とともに下った常陸で育つ。薫と匂宮の板ばさみになり、苦悩して入水するが横川の僧都に助けられる。

[編集] 影響・受容史

中古期における『源氏物語』の影響は大まかに2期に区切ることができる。第1期は院政期初頭まで、第2期は院政期歌壇の成立から新古今集撰進までである。

第1期においては、『源氏物語』は上流下流を問わず貴族社会でおもしろい小説としてひろく読まれた。当時の一般的な上流貴族の姫君の夢は、後宮に入り帝の寵愛を受け皇后の位に上ることであったが、『源氏物語』は、帝直系の源氏の者を主人公にし彼の住まいを擬似後宮にしたて女君たちを分け隔てなく寵愛するという内容で彼女たちを満足させ、あるいは人間の心理や恋愛、美意識に対する深い観察や情趣を書きこんだ作品として貴族たちにもてはやされたのである。この間の事情は菅原孝標女の『更級日記』にくわしい。

すぐれた作品が存在し、それを好む多くの読者が存在する以上、『源氏物語』の享受はそのままこれにつづく小説作品の成立という側面を持った。中古中期における『源氏』受容史の最大の特徴は、それが『源氏』の文体、世界、物語構造を受継ぐ諸種の作品の出現をうながしたところにあるといえるだろう。11世紀より12世紀にかけて成立した数々の物語は、その丁寧な叙述と心理描写のたくみさ、話の波乱万丈ぶりよりも決めこまやかな描写と叙情性や風雅を追求しようとする性向において、あきらかに『宇津保物語』以前の系譜を断ちきり、『源氏物語』に拠っている。それがあまりに過度でありすぎるために源氏亜流物語という名称さえあるほどだが、例えば『浜松中納言物語』『狭衣物語』『夜半の寝覚』などは『源氏』を受継いで独特の世界をつくりあげており、王朝物語の達しえた成熟として高く評価するに足るであろう。(なお、後期王朝物語=源氏亜流物語には光源氏よりもの人物造型がつよく影響を与えていることが知られる。源氏物語各帖のあらすじの「第三部」参照。)

平安末期には既に古典化しており、『六百番歌合』で藤原俊成をして「源氏見ざる歌詠みは遺恨の事なり」と言わしめた源語は歌人や貴族のたしなみとなっていた。このころには言語や文化の変化や流れに従い原典をそのまま読むことも困難になってきたため、原典に引歌や故事の考証や難語の解説を書き添える注釈書が生まれた。

その一方、仏教が浸透していく中で、「色恋沙汰の絵空事を著し多くの人を惑わした紫式部は地獄に堕ちたに違いない」という考えが生まれ、「源氏供養」と称した紫式部の霊を救済する儀式がたびたび行われた。これは後に小野篁伝説と結びつけられた。

江戸時代後期には、当時の中国文学の流行に逆らう形で、設定を室町時代に置き換えた通俗小説ともいうべき『偐紫田舎源氏』が書き起こされ、「源氏絵」(浮世絵の一ジャンル)が数多く作られたり歌舞伎化されるなど世に一大ブームを起こしたが、天保の改革であえなく断絶した。

明治以後多くの現代語訳の試みがなされ、与謝野晶子谷崎潤一郎の訳本が何度か出版されたが、昭和初期から「皇室を著しく侮辱する内容がある」との理由で、光源氏と藤壺女御の逢瀬などを二次創作物に書き留めたり上演することなどを政府から厳しく禁じられたこともあり、訳本の執筆にも少なからず制限がかけられていた。戦後はその制限もなくなり、円地文子田辺聖子瀬戸内寂聴などの訳本が出版されている。また、原典に忠実な翻訳以外に、橋本治の『窯変源氏物語』に見られる大胆な解釈を施した意訳小説や、大和和紀の漫画『あさきゆめみし』や小泉吉宏の漫画『まろ、ん』を代表とした漫画作品化などの試みもなされている。

また、1882年末松謙澄の英訳出版を皮切りに、世界に紹介されるようになり、英語ドイツ語フランス語ロシア語中国語などの翻訳本が知られている。中でもアーサー・ウェイリーの英訳("The Tale of Genji"、1925-1933年発表)は名訳として親しまれている。(海外における源氏物語

[編集] 参考文献

[編集] 校訂本

ここには本文校訂のみに特化した文献のみをあげる。この他に個別の写本を翻刻したものや校訂本としての役割を兼ねた注釈書も多く出版されている。

  • 『校異源氏物語』(全4巻)池田亀鑑
  • 『源氏物語大成』(校異編)池田亀鑑(中央公論社、1953年-1956年)
  • 『源氏物語別本集成』(全15巻)伊井春樹他源氏物語別本集成刊行会(おうふう、1989年3月~2002年10月)
  • 『源氏物語別本集成 続』(全15巻の予定)伊井春樹他源氏物語別本集成刊行会(おうふう、2005年~)
  • 『河内本源氏物語校異集成』加藤洋介編(風間書房、2001年)ISBN 4-7599-1260-6

[編集] 注釈書

多くは校訂本も兼ねており、現代語訳と対照になっているものもある。また注釈などの内容を簡略化した軽装版や文庫版が同じ出版社から出ているものもある。

  • 『源氏物語』日本古典文学大系(全5巻) 山岸徳平(岩波書店、1958年~1963年)
  • 『源氏物語評釈』(全12巻別巻2巻) 玉上琢弥(角川書店、1964年~1969年)
  • 『源氏物語』日本古典文学全集(全6巻) 阿部秋生他(小学館、1970年~1976年)
  • 『源氏物語』新潮日本古典集成(全8巻) 石田穣二他(新潮社、1976年~1980年)
  • 『源氏物語』完訳日本の古典(全10巻) 阿部秋生他(小学館、1983年~1988年)
  • 『源氏物語』新日本古典文学大系(全5巻)室伏信助他(岩波書店、1993年~1997年)
  • 『源氏物語』新編日本古典文学全集(全6巻)阿部秋生他(小学館、)

[編集] 派生作品

[編集] 擬作・補作

 後人が『源氏物語』の欠を補った作。作者が別人であることを明かしているので偽作とはいえない

  • 山路の露(やまじのつゆ)』(鎌倉時代、作者不詳、一説には建礼門院右京大夫とも) -宇治十帖「夢浮橋」の後日譚。薫と浮舟の再会を書く
  • 『雲隠六帖』(室町時代、作者不詳) -源氏物語の後日譚。1雲隠(源氏の出家失踪)、2巣守(匂宮の即位と薫、浮舟の結婚)、3桜人、4法の師(薫、浮舟の出家)、5雲雀子(薫の霊が息子に出家のすすめ)、6八橋(匂帝に帝位のまま悟るようにとの教え)、あとがき(康平元年戊戌年(1058年)正月大僧都、信誉のものと元応元年(1319年)9月藤原親兼の2系統)
  • 『手枕』(1763年、全1巻、本居宣長) -「桐壺」と「帚木」の間を埋める。六条御息所と光源氏のなれそめを書く
  • 『源氏の君の最後の恋』Le Dernier Amour de Prince Genghi(1984年、短編集『東方綺譚』に収録、マルグリット・ユルスナールMarguerite Yourcenar) -「雲隠」を補完する短編。源氏の最期を花散里が看取る
  • 『輝く日の宮』(2003年、全1巻、丸谷才一) -最後の章を失われた「輝く日の宮」の復元にあてる
  • 『紫式部物語―その恋と生涯』The Tale of Murasaki(2000年、日本語版は上下2巻、ライザ・ダルビーLiza Dalby)-紫式部の娘から孫に伝えられた、紫式部が自らの生涯を記した日記という形で、「源氏物語」執筆の背景などを描く
  • 『稲妻』(2000年、ライザ・ダルビー)-上記「紫式部物語」下巻・巻末に収録。「夢浮橋」の後を補う巻。薫と浮舟のその後を書く
  • 『藤壺』(2004年、全1巻、瀬戸内寂聴) -「輝く日の宮」を補完する短編。光源氏と藤壺が初めて結ばれるまでを書く。現代文の他、古文体も併記。

[編集] 注釈書

[編集] 現代語訳

  • 「新訳 源氏物語」(1912-13年、全4巻、与謝野晶子
  • 「全訳 源氏物語」(1926年、全1巻、鈴木正彦)
  • 「潤一郎訳 源氏物語」(1939-41年、全26巻、谷崎潤一郎
  • 「潤一郎新訳 源氏物語」(1951-53年、全12巻、谷崎潤一郎)
  • 「潤一郎新々訳 源氏物語」(1964-65年、全11巻、谷崎潤一郎)
  • 「源氏物語」(1972-73年、全10巻、円地文子
  • 「源氏物語」(1996-98年、全10巻、瀬戸内寂聴
  • 「新訳 源氏物語」(1997-98年、全4巻、尾崎左永子)
  • 「現代京ことば訳 源氏物語」(1991年、全3巻、中井和子)

[編集] 意訳小説

  • 「新源氏物語」(1978-79年、全5巻、田辺聖子
  • 「私本・源氏物語」(1980年、全1巻、田辺聖子) -光源氏の従者・惟光の視点から書く
  • 「女人源氏物語」(1988-89年、全5巻、瀬戸内寂聴) -光源氏の女君たちの視点から書く
  • 「窯変 源氏物語」(1991-93年、全14巻、橋本治) -光源氏、薫からの視点から書く

[編集] 翻案小説

  • 「偐紫田舎源氏(にせむらさきいなかげんじ)」(合巻。1829-42年、38編172冊、柳亭種彦作、歌川国貞画) -足利将軍の子・光氏が浮名を流しながらお家騒動を解決する勧善懲悪もの。「桐壺」から「真木柱」まで。

[編集] 漫画

  • あさきゆめみし」(1979-93年、全13巻、大和和紀
  • 「源氏物語」(1988-90年、全8巻、牧美也子
  • 「源氏物語」(1996-97年、全3巻、マンガ日本の古典、長谷川法世
  • 「月下の君」(2001-04年、全7巻、嶋木あこ) -平成時代に設定を置き換えた作品
  • 「源氏物語」(2001-05年、全7巻(「桐壺」から「紅葉賀」まで)江川達也
  • 「大掴源氏物語 まろ、ん?」(2002年、幻冬舎小泉吉宏
  • パタリロ源氏物語!」(2004年-、現在3巻まで刊行、魔夜峰央) -『パタリロ!』の名キャラクター、ジャック・バンコランが光源氏を演じる
  • 「GENJI 源氏物語」(2004-05年、全4巻(「桐壺」から「薄雲」まで)きら) -光源氏と紫の上、そして藤壺の三角関係を重点に置く。語り部は紫の上

[編集] テレビドラマ

  • 「源氏物語 浮舟」(1957年、TBS東芝日曜劇場、全1回、脚本:北条秀司、主演:松本白鸚 (初代)
  • 「ミュージカル・コメディ 源氏物語」(1958年、TBS東芝日曜劇場、全1回、脚本:北条秀司、主演:中村鴈治郎 (2代目)
  • 「源氏物語」(1959年、よみうりテレビ、全61回、主演:村山リウ)
  • 「源氏物語」(1965-66年、MBS、全26回、監修:市川崑、主演:伊丹十三)〈1966年度 アメリカ・エミー賞受賞〉
  • 「源氏物語」(1980年、TBS、全1回、脚本:向田邦子、主演:沢田研二) -「資生堂スペシャル」と冠す
  • 「源氏物語 上の巻・下の巻」(1991-92年、TBS、全2回、脚本:橋田壽賀子、主演:東山紀之片岡孝夫) -「TBS創立40周年記念番組 橋田寿賀子スペシャル」と冠す
  • 「映像詩 源氏物語 あさきゆめみし ~Lived In A Dream~」(2000年、NHKハイビジョン、脚本:唐十郎、音楽:三枝成章、監督:三枝健起、出演:宝塚歌劇団花組専科、ほか)

[編集] 映画

[編集] 宝塚歌劇

  • 「歌劇 源氏物語」(1952年初演)光源氏春日野八千代
  • 「新源氏物語 ─田辺聖子作『新源氏物語』より─」(1981年初演)
光源氏は'81の初演は榛名由梨1989年の再演は剣幸

[編集] 歌舞伎

  • 「源氏物語」(1951年初演)

[編集]

  • 碁(「空蝉」。復曲)
  • 半蔀(「夕顔」)
  • 夕顔(「夕顔」)
  • 葵上(「葵」)
  • 野宮(「賢木」)
  • 須磨源氏(「須磨」「明石」)
  • 住吉詣(「澪標」)
  • 玉鬘(「玉鬘」)
  • 落葉(「夕霧」。所謂「陀羅尼落葉」とは別の曲である)
  • 浮舟(「浮舟」)
  • 源氏供養

[編集] 音楽

[編集] 邦楽

  • 「葵上」(地歌箏曲)
  • 「桐壺」(箏曲{組歌})
  • 「須磨」(箏曲{組歌}。八橋検校作曲)
  • 「明石」(箏曲{組歌})
  • 「空蝉」(箏曲{組歌})
  • 「橋姫」(箏曲{組歌})
  • 「玉鬘」(箏曲{組歌})
  • 「四季源氏乙女の曲」(箏曲{組歌})
  • 「夢の浮橋」(地歌・箏曲)
  • 「新浮舟」(地歌・箏曲。松浦検校作曲)
  • 「夕顔」(地歌・箏曲。菊岡検校作曲)
  • 「新青柳」(地歌・箏曲。石川勾当作曲・石川の「三つ物」の一曲)
  • 「梓」(地歌・箏曲)
  • 「新玉鬘」(地歌・箏曲。幾山検校作曲)
  • 「葵の上」(山田流箏曲。山田検校作曲・山田の「四つ物」の一曲)
  • 「石山源氏」(山田流箏曲。千代田検校作曲)

[編集] 現代音楽

[編集] 外国語訳

[編集] 英語訳者

[編集] その他の言語での翻訳者

この節は執筆の途中です この節は、書きかけです。加筆、訂正して下さる協力者を求めています。

[編集] 関連項目

Wikimedia Commons
ウィキメディア・コモンズに、源氏物語に関連するカテゴリがあります。
文学
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その他作家

[編集] 脚注

  1. ^ 阿部秋生『源氏物語の本文』(岩波書店、1986年6月20日)

[編集] 外部リンク

与謝野晶子による現代語訳は1993年に著作権の保護期間が満了したため、パブリック・ドメインで利用できる。

[編集] 資料博物館

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