濾過摂食
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濾過摂食(ろかっせっしょく、Filter Feeding)とは、動物の餌の取り方の類型の一つで、触手や鰓などを用いて漉し取るように餌をとるやり方を指す。主として水産動物に見られる。
[編集] 概説
濾過摂食というのは、よく発達した鰓や触手などを濾紙やザルのように用いて、それに引っ掛かる餌を食べるような餌の取り方をさす言葉である。この方法で餌をとる動物を濾過摂食者(Filter Feeder)という。
普通、この方法で餌を取るのは、自分よりはるかに小さい餌をとるものである。とにかく餌のありそうなところを攫って、含まれる餌を流し込む、という形になることが多い。たいてい、餌になるのはプランクトンである。1mm前後までの中型プランクトンが対象になるといったところ。ジンベエザメやマンタ、あるいはヒゲクジラなど、巨大な動物には往々にプランクトン食者があるが、それらの摂食法はたいていこれである。鳥類ではフラミンゴがこうした摂食を行う。
しかし、ザトウクジラなどは小型の魚類くらいまでを大きな口でがばっと掬い、水だけを吐き出しているのもこれに近い。この場合には、あらかじめ小魚を追い集める行動を取るようである。
この方法を使う動物は、水中性、特に海産のものに多い。その方が、空間に浮かんでいる餌が、圧倒的に多いからである。海産の固着性動物にも例が多い。空中では、あまり浮いている餌はないし、それを攫える網のような構造を維持するのも難しい。それに近いのは、クモ類、ヨタカくらいであろう。
[編集] 濾過の装置
この方法で餌を取るためには、水を漉し取る装置が必要である。
魚など、水棲動物は、鰓を持つものが多く、ここを水が多量に通るから、その際に同時に餌を漉し取るのもよく見られる方法である。イワシなどは口を大きく開けて、同時に鰓ぶたも大きく開け、大量の水が通るようにする。
やや変わっているのは、髭鯨類で、歯を先がすだれのようになった構造に変え、これを使って多量の水を濾過できるようになっている。
触手を発達させるものもよくある。一連の触手動物、ケヤリムシやカンザシゴカイなどの多毛類、フジツボなどの蔓脚類などがその例である。テヅルモヅルなどもその例に含まれよう。クラゲの触手は、漉し取るという表現にはあたりにくいが、働きとしてはそれに近い。ヨタカは口の回りに髭を発達させ、これに虫を引っ掻けるとも言う。
体に濾過装置を発達させるのではなく、体外にそれを作り出すものもある。オタマボヤ類はゼラチン質を分泌して、これによって巣を作り、そこにかかるものを食べる。巻き貝類のヘビガイは、口から粘液質の網を分泌し、これを回収して食べる。淡水では、流水性のシマトビケラやヒゲナガカワトビケラが糸を分泌して網を張り、これに引っ掛かる微粒子を餌としている。クモの網も似たような働きと見ることができる。
[編集] 繊毛粘液摂食との関係
繊毛粘液摂食というのは、触手などの表面に粘液を分泌し、ここに微粒子を吸着させて、それを繊毛で口に運んで食べる摂食方法である。つまり、多量の水をそこに通してその中から餌を拾うので、濾過摂食とは似た点が多い。
厳密には濾過摂食は濾過装置に餌を引っ掻ける事で餌を集めるのに対して、繊毛粘液摂食はその表面に餌を吸着させるのだから、区別はある。対象とする餌も、濾過摂食が濾過装置に引っ掛かる大きさのものであり(したがって小型プランクトン程度)、繊毛粘液摂食の場合はむしろさらに小さなデトリタスである。しかし、どちらであるかの判断がつきにくい場合もある。また、考え方として、繊毛粘液摂食を濾過摂食の中に含めることもある。
例えば二枚貝類は水を吸い込んで鰓を通して吐き出し、同時に鰓で集めた餌を食べるが、これはかつては濾過摂食であるとされた。しかし、実際には鰓の間を水が抜けて行くわけではなく、恵良の表面を流れるようである。現在では、むしろ繊毛粘液摂食であると考えられている。触手を広げるものの場合も、その表面に繊毛をもち、粘液を分泌しているものも多い。触手動物はそう見てよい。
また、ケンミジンコ類などは摂食用の足に多数の棘状の毛を持ち、これを用いて濾過摂食するものと考えられていた。しかし、あまりに小さいため、濾過の形で餌を捕らえるのは無理(レイノルズ数が大きすぎる)らしい。詳しく調べられているものでは、どうやら濾過するのではなく、つまみ取るようにして食べているといわれている。