炭疽症
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炭疽症(たんそしょう)、炭疽(たんそ)とは、炭疽菌による感染症。ヒツジやヤギなどの家畜や野生動物の感染症であるが、ヒトに感染する人獣共通感染症である。ヒトへは、感染動物との接触やその毛皮や肉から感染する。ヒトからヒトへは感染しない。感染症法における四類感染症、家畜伝染病予防法における家畜伝染病である。以下、とくに断りがない限りヒトにおける記述である。
炭疽とは「炭のかさぶた」の意味であり、英語名のAnthraxはギリシャ語で「炭」の意味である。この名称は皮膚炭疽の症状で黒いかさぶたができることにちなむ。
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[編集] 炭疽症の種類
[編集] 皮膚炭疽症
炭疽菌が顔、首、手などの皮膚の小さな傷から侵入すると、そこが潰瘍となり、高熱が出る。炭疽症の大部分はこれに含まれる。
[編集] 肺炭疽症
炭疽菌が空気とともに肺に吸入された場合、高熱、咳、膿や血痰を出し呼吸困難となる。
[編集] 腸炭疽症
炭疽菌が食物とともに口から入ると、高熱、おう吐、腹痛、膿や血の混じった下痢がおこる。
[編集] 予防と治療
[編集] 予防
炭疽症にかかった家畜は殺して焼却し、汚染物は焼却するか厳重に消毒するようにする。また、原因不明の病気にかかった家畜の肉は食べないようにすることである。 また、ワクチンは日本には無く、アメリカで1社が製造するのみ。しかし、3~6回の摂取が必要で、副作用の可能性が高く、予防接種はあまり推奨されない。 除染法は、汚染場所にヨウ素・塩素などの殺胞子剤を撒く。緊急時には、塩素系漂白剤を10倍に薄めて霧吹きなどで噴霧する。殺菌用の紫外線放射機器を使用してもよい。
[編集] 治療
抗生物質により治療可能。ペニシリン・テトラサイクリンなど。他人には感染しないので、隔離の必要は無い。手遅れでなければ治癒する。
[編集] 炭疽菌の特徴
ヒト・家畜を問わず、死亡率・感染力が高い。世界各地で見られる。潜伏期間は1~7日間と短いが、環境の変化などには芽胞の状態で何十年も生き続ける。 培養しやすく、増殖力が強い。
[編集] 生物兵器
炭疽菌はその致死率の高さから生物兵器としての開発が行われ、旧日本陸軍では、関東軍防疫部所属の731部隊が炭疽菌・ペスト菌の細菌爆弾を作り人体実験を行ったとされている。アメリカ、ソビエト、イラクなどが保有した。特に旧ソ連では炭疽菌の芽胞を量産し、これをICBMに搭載した生物兵器を配備していたとされている。
1993年、オウム真理教は、亀戸の支部からこれを散布するバイオテロを実行したが、ワクチン並の毒性しかなかったため、失敗に終わった。
2001年のアメリカ同時多発テロ事件の後、炭疽菌の粉末(芽胞)が郵便で送られるという事件が頻発した。
[編集] 関連項目
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