燃料気化爆弾
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燃料気化爆弾(ねんりょうきかばくだん、Fuel-Air Explosive, FAE または FAX)とは、爆弾の一種である。なお日本では「燃料」が抜けて、単に気化爆弾とも呼ばれる。また、貧者の核兵器という呼称も持つ。
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[編集] 概要
燃料気化爆弾は、火薬ではなく酸化エチレン、酸化プロピレン、ジメチルヒドラジン等の燃料を空中で放出し、空気と攪拌させ適度な混合率になった時点で着火させ爆発をおこさせる爆弾である。広範囲に衝撃波を発生させるため、特に人体に多大な影響を与える事で知られる。戦後、日本で多発したプロパンガスの爆発事故をヒントに開発が始まった。しかしプロパンの爆発を人為的にコントロールするのは難しいようで、研究の結果、上記の燃料が適当であるとわかった。
音速で飛行する航空機や、一定高度にあるヘリコプターから落下させる事で作動させる。形状的には細長い円柱形に安定翼が付くなどミサイルまたはロケット弾に似るが、その性質上、自力で推進力を発生させて飛行する能力は無い。ただし大陸間弾道弾などに多段式ロケットのように積載する事は可能と見られている。
都市ガスによるガス爆発事故のように、爆鳴気の爆発は空間爆発であって強大な衝撃波を発生させ、12気圧に達する圧力と2,500-3,000度の高温を発生させる。加害半径は爆弾のサイズによって様々であるが、一般的には 数百m と推定されている。
[編集] TNTとの比較
- 酸化エチレン物性
- 液体比重0.887kg/L 気体比重1.788kg/KL 爆発範囲3-80% 発熱量50306KJ/Kg
- 酸化エチレン1kgで4%混合気を作った場合の混合気の体積と質量
- 1kg÷気体比重1.788kg/KL÷4%=混合気体積13.98KLx空気比重1.2kg/KL=概略混合気質量16.78kg
- 燃焼後定積状態での温度と膨張後のガス体積
- 発熱量50306KJ/Kg÷混合気質量16.78kg÷空気定積比熱0.717=昇温4182度(実際には膨張しながら定圧昇温するので2980度昇温)=膨張後ガス体積=13.98KL(1+4182度/273度)=228KL
- 発生ガス膨張後体積228KL
- TNT物性
- 1kg燃焼後発生ガス量730L、ガス主成分:一酸化炭素・水蒸気 発生ガス比重1.37KG/KL 1kg燃焼熱量3790kJ/kg
- 爆発直後の発生ガスの体積と質量
- 1kg燃焼後発生ガス量730L/発生ガス比重1.37=発生ガス質量1kg
- 燃焼後定積状態での温度と膨張後のガス体積
- 発熱量3790KJ/Kg÷発生ガス質量1kg÷発生ガス定積比熱(仮定)0.77=昇温4922度)=膨張後ガス体積=0.73KL(1+4922度/273度)=14KL
- 発生ガス膨張後体積14KL
- TNTとFAEの比較
- 1kgの燃焼ガスの熱膨張「前」体積/質量 FAE:14KL/17kg TNT:0.7KL/1kg
- 1kgの燃焼熱エネルギー FAE:50300KJ/kg TNT:3800KJ/kg
- 1kg燃焼後の燃焼ガスの熱膨張「後」体積 FAE:228KL TNT:14KL
- 結論としてFAE125ポンドの爆風殺傷半径はTNT2000ポンドに近い可能性がある。しかし爆風による殺傷威力は距離の3乗に比例して減衰するので、半径10mで即死。25mで死傷するに過ぎず、FAEの爆圧殺傷半径ですら、断片による100mを超える殺傷半径に遠く及ばない。(資料1t爆弾の表記は直径)。そのため、大型の衝撃波球を発生させて上空に無駄な殺傷範囲を発生させる代わりに小型の衝撃波球を数多く地表に発生させたほうが小さい爆弾で広い殺傷面積が得られるため、最近の米軍のFAEは500ポンドクラスタ弾に125ポンドFAE子弾を4個搭載したものが主流。この場合500ポンド1発でほぼ100m角の敵兵士を、蛸壺壕に入っていても(気密構造でなければ)内臓破裂ないしショック死させる事が可能。FAEが有効な理由は従来の500ポンド爆弾が着弾点から12メートル離れると、粗末な蛸壺壕にも効果がないため、上陸作戦などでは事前に爆撃したにもかかわらず、蛸壺壕でそれを回避した敵兵が多数生残り米兵を殺傷した問題に対して、解決を与える兵器なので今後使用が検討されている。日本に於いても、沖縄などの島嶼を占領され、それを奪還するために逆上陸する場合はFAEによる事前の砲爆撃は不可欠で、それを使用しなかった場合、硫黄島などの過去の経験から見て、味方の多大な人命を喪失することになると思われる。
- 下記のリンクを参照すれば、従来の爆弾の殺傷原理は「爆弾外殻の断片が高速で飛んできて人体の頭や腹を切裂く」という原理に頼って1発で100mを超える殺傷半径を得ていることが判る。しかし、この効果は蛸壺壕で防げてしまう。なので、爆風衝撃波による殺傷を殺傷原理とし、その効果を強化したFAEに更新されようとしている。
- 爆弾の殺傷半径解説資料・従来爆弾は外形以外変わっていないので現在でも有効。
[編集] 機能・性質とその扱い
破片による被害は少ないが、急激な気圧の変化による内臓破裂などを起こさせる。
また、気密構造でない粗末な壕や一般建築物に避難/隠匿された兵士やミサイル車両(たとえばスカッドや核ノドン)の破壊には有効だが木造建築物さえ倒壊半径は殺傷半径の1/3であり、気密構造の建築物ごと倒壊させて殺傷する場合、有効半径は1/6-1/3、5-12mになり、実行困難な程多くの航空機や爆弾が必要になってしまう。つまり絨毯爆撃で所在の掴めない隠匿されたミサイルや火砲を破壊する場合、FAEは従来爆弾に比べ効果の確実性がより高いとはいえ依然完璧ではない。崖に簡易な横穴を掘って隠匿したミサイル車両の破壊は従来爆弾では難しく、FAEではある程度可能だが、気密扉が付いた堅固な横穴ならFAEでも中に隠匿されたミサイル車両の破壊は困難である。
また、燃料に使われている酸化エチレンや酸化プロピレンは、どちらも殺菌や殺虫などに用いられる薬品で、日本では労働基準法施行規則別表第一の中で有害性が中度な有害物に指定されている。つまり燃え残った燃料が大地に広がっただけでも危険という事である。同兵器を開発・保有している米国では、積極的に運用したがる傾向も見られる。特に広範囲に敷設された対人地雷の処理には、この兵器による対象地域の一掃が「最も効率がよい」と考えられているようだ。
なお1990年代初頭の湾岸戦争において、広範囲の砂漠に分散して砂中に隠されたイラク軍戦車部隊や随伴歩兵らの兵力を削ぐべく同兵器が使用されたが、これにより多数のイラク兵が同兵器作動時に発生する巨大な火球によって塹壕や戦車の中で蒸し焼きになって焼き殺されたり、衝撃波で(目立った外傷も無く)圧死した。この状況は、反戦活動家の格好の攻撃材料となった。
しかし、従来爆弾の殺傷形態も断片で頭を半分に切り取られたり腹を切り裂かれて死ぬし、共産圏はむしろFAEに熱心なので(中国軍は歩兵にバズーカのようなFAE発射筒を配備しつつある。)「米国は残虐なFAEを使っている」という非難の妥当性には疑問が残るという指摘もある。ただし、FAEが位置のわからない相手を面制圧する兵器であり、「従来爆弾や過去の焼夷弾同様」に精密誘導兵器よりは付随被害が発生しやすい性格なのは事実である。しかし現代の技術では隠匿・擬装された車両/歩兵の上空からの発見は、擬装を解き移動したり発砲するまでは極端に困難であり、また広範囲に散開した敵歩兵一人一人を精密に殺傷するのは不可能なので、面制圧兵器は当面なくなりそうもない。
また、人件費の安い途上国の軍隊は歩兵の数が多くなりやすく、先進国は人件費が高く予算が限られているので砲兵や戦闘攻撃機の火力に依存した構造になる。両者が戦闘した場合、先進国側は戦闘攻撃機や砲兵火力で途上国側の歩兵を殺傷して数を減らしてから戦わないと(人件費が高くて歩兵が少ないので)勝利できないという事情がある。それが一方的虐殺だというなら先進国側は歩兵を数倍に増やさねばならないが、そんなことをすれば軍事予算が数倍に膨張してしまうし、仮に強行して戦闘攻撃機による殺傷を歩兵同士による相互殺傷に変更しても自国の未亡人を増やす自殺行為に終わり、国民の非難を浴びるだけである。そもそも先進国側が予算の関係で兵力を削ってきたのに、途上国側が兵力をあまり減らさなかったので「兵力格差が開きすぎた」という現実が背景にある。途上国の兵力と先進国の火力の相互削減が実施できるのが望ましいが、まだそこまで進んでいない。極東で言えば北朝鮮核問題が片付いた後なら、北朝鮮90万・中国160万・韓国50万の過剰兵力の相互削減と6カ国の半島でのFAE不使用協約も討議開始は可能と思われるが、核問題解決自体まだ予断を許されない状況でFAEと兵力の相互削減交渉は話題にも上っていない。
[編集] 燃料気化爆弾に関する誤解
一部マスコミでデイジーカッターを燃料気化爆弾と報道している場合があるが、別物である。また、燃料気化爆弾は周囲を酸欠にしてその場にいる人間を窒息死させると言われることがあるが、これも間違いである。実際には、燃料気化爆弾が酸素を奪う範囲内にいる人間は、爆発の瞬間に過圧で即死するはずである。これを免れた場合でも、火球が消えたあとには周囲から空気が流れ込んできて酸欠状態は短時間で終わるため、窒息死することはあり得ない。これはおそらくナパーム弾と混同した誤解である。
[編集] 関連項目
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