特定郵便局
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特定郵便局(とくていゆうびんきょく)は、日本郵政公社の営業所である郵便局の一種であり、日本郵政公社の社内規定上の定義は「特定郵便局長を長とする郵便局」である。郵便局には他に普通郵便局と簡易郵便局があるが、全郵便局の約4分の3が特定郵便局である。1871年の郵便制度発足時に、全国にいち早く郵便制度を浸透させるために考えられた「三等郵便局」制度に由来する。普通郵便局とは上記の定義以外には明確な線引きはないが、下記の特徴を一般的に有している。
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[編集] 現状
おもに、市中の市街地や住宅地に存在する窓口専門の郵便局である。その設置数は小学校並みと言われ、身近な存在である。集配特定局については、市町村の「町・村」における普通局並みの業務をしており、その町村における重要な公共機関となっている。1つの市町村に複数以上の集配特定局がある場合もあるが、これは遠隔地にある場合が多い。なお、郵便局の設置基準は日本郵政公社法に基づく総務省令により規定されており、日本郵政公社は、同法の施行の際現に存する郵便局ネットワークの水準を維持することを旨とすることとされている。
集配特定局については普通局で局内作業をして、無集配となった特定局に郵便物を先送り(前送:ぜんそう)して、その局を中継拠点にすることとしている。この方法で集配特定局を削減する。集配業務を廃止した特定局がその先、無集配特定局として存続することは保障されていないものの、郵便局の設置基準は日本郵政公社法に定めるところにより設けられており、その存続の判断は、法に定める設置基準によるところとなる。
[編集] 任用
特定郵便局長の任用は公募制で、身分上は一般職国家公務員である。おおむね55歳以下で公務員としての欠格事由に該当しない場合には応募することができる。過去においては、ほとんどにおいて募集が公開されておらず、採用までの経過はほとんど不明であった時期もあり、そのため世襲制と批判される原因となっていたが、現在は募集や試験の時期、任用の手続などについて日本郵政公社のウェブサイト上で公表されている。最近の傾向としては、特に都心部の特定局で普通局に勤務する管理者から転用される例がある。この場合、特定局とはいっても実質上普通局に近い任用となる。このような例は、大規模の集配特定局にも見られる。
任用について少々変わった事例もあり、局舎設置の際の条件として、局の所有者(個人に限らない)から推薦を受けた者を任用する場合がかつてはあったとされる。つまり所有する法人の関係者の再雇用先となっているときがあった。このように、民間企業が所有する特定郵便局(ショッピングセンターの中などに多い)では、その企業の出身者が局長をしていたりすることも多い。
任用の性格上、局そのものが廃局になった場合、特定郵便局長はそのまま任を解かれる。一般職員として転勤の上継続して勤務するという規定は書類上は存在しない。
特定郵便局の一般職員は、国家公務員採用試験に合格した職員か、非常勤の国家公務員(ゆうメイト)である。
[編集] 業務運行
特定郵便局における業務指導や集団的営業推進のため、特定局業務推進連絡会が組織されている。この項では、顧客対応の基本となる郵便局レベルから記述する。
- 複数の特定局をまとめて、部会という組織を編成している。部会においては月に一度程度、代表者が集まり定例会を開いている。部会は公的な会議であるが、かつて私的組織である局長会の会議が、部会と連続して開催されたときには、公私混同ではないかという批判があった。
- 部会の上位組織として、連絡会というものが存在する。
[編集] 局舎
特定郵便局の局舎は、それぞれの局により異なるが、国営局舎、自営局舎(個人・企業他)とあり、その他に郵政福祉などの外郭団体が有している場合もある。
国営局舎は日本郵政公社が所有しており、改築等も公社の費用により行われる。ほとんどが集配特定局だが、普通局から改定された局など、一部の無集配局にも国営局舎が存在する。
自営局舎は、その名の通り特定郵便局長が個人で土地、局舎を有しており、書類上、日本郵政公社が借り上げている形になっている。一般に世襲局といわれるのはこの自営局舎であることが多い。
自営局舎は、局長が自腹で建設費用を準備するのだが、改築の際にその資金を全国特定郵便局長会から借りて建てることがある。この場合つまり局舎使用料の殆どが局長会への返済に消えてしまい、あまり「うま味」はないらしい。ところが、全国特定郵便局長会はそのまま、自民党の支持団体となっていた時期があるとされ、改築費の貸付金の返済→局長会から自民党への献金、という金の流れが自民党の裏の資金調達となっているという批判があった。
この批判は郵政公社も認知しており、表面上は自営局舎は今後削減し、営繕費を安くできる外郭団体の所有に切り替えていく方針をとっている。このため局舎料が無駄に高い局が契約打ち切り、移転となった事例もある。
一方特定郵便局長会は自営局舎が特定局長制度の根幹の一つとしており、この方針には当然反対している。局長会内では自営率の向上について勉強会も開かれているが、今後自営局舎がどうなるかは不明である。
民間企業が特定郵便局舎を所有していることもある。大規模商業ビル、鉄道の駅ビルや空港ビルが多い。
この他、県庁や市役所、公営団地の敷地内などに特定局がある場合もある。
[編集] 要員配置
基本的に要員は局長を含めて2名以上の配置となっている。
[編集] 集配局
- 最低定員は局長を含めて8人(Dランク局)である。一部離島では4人局もある。
- 基本的に内務と外務に区分される。
- 外務職員は貯金・保険兼務がほとんどで、局によっては郵便・貯金・保険兼務という所もある。
- 普通郵便局格下げ局や比較的大きい集配局になると郵便係・貯金係・保険係(貯金保険係)・総務係が設置されている。なおこれらの係には普通郵便局に配置されている課長・課長代理の配置はなく、代わりに各係ごとに総務主任が配置されている。また副局長が配置されている。
- 普通郵便局とは違い局長室はない。これは普通郵便局からの格下げ局も同様で、普通郵便局時代は局長室があったが、格下げ後はカウンター内に局長席が設けられている。
[編集] 無集配局
- 最低定員は局長を含めて2人である。しかしながら業務量の兼ね合いから3~5人定員が主流である。
- 局長を含め、定員が4名以上の局には総務主任が配置される。6名以上の局には局長代理(または副局長)が配置される(例外あり)。ただし局情により若干の例外がある。副局長を配置する局もあるが、その数は少ない。
- 複数の特定局をまとめて、部会という組織を編成しているが、各部会に巡回総務主任を配置している(配置の無い部会も存在する)。これは各局を兼務し、業務その他を指導するという趣旨であるが、時として欠員発生時の補充要員に用いられる場合がある。