簡易郵便局
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簡易郵便局(かんいゆうびんきょく)とは、日本郵政公社(以下、公社という。)から地方公共団体や組合、個人等に窓口業務を委託している郵便局である。一部取り扱いが出来ない業務がある。また、一般の郵便局とは営業時間や休業日が異なる簡易郵便局も多く存在する。
ただし、2007年(平成19年)10月に郵政民営化が実施されるため、業務内容や設置方法等が大規模に変わる。
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[編集] 設置
[編集] 委託基準
公社が、郵便局の窓口業務を委託したほうが運営上適切(経費節減・リストラ)であると認めたときであり、利用者数や山間部、損益の有無は関係ない。
- 百貨店などに設置されているような大都市型簡易郵便局(シティポスト)も存在している。
- 最近では、取扱量の極端に少ない特定郵便局を廃止し、その跡に簡易郵便局を新設する例がある。この場合、特定郵便局長は任を解かれ、退職し、その簡易郵便局の受託者となることが多い。逆に、取扱量が大きい簡易郵便局の受託を解除し、その跡や付近に特定郵便局を新設して、その元受託者を局長に任用される場合もある。
[編集] 受託者資格
受託できるのは以下の者に限られる。
- 組合員に出資させない漁業協同組合・農業協同組合(非出資組合)であっても、受託することができる。
- 民間等(国以外)によって運営される。国立大学や国立病院内に設置される簡易局の受託者は国(各省庁)や独立行政法人、国立大学法人、公立大学法人等ではない。
- 学校や病院内にある簡易局の場合、法律上、学校法人や医療法人が受託者となることができないため、名目上、代表者や簡易郵便局業務を扱う職員名義での個人受託という形をとることが多い。
- 地方公共団体が受託している場合でも、個人に実質的な再委託(業務代行者)がされている場合もある。
[編集] 委託契約
公社が、総務大臣認可基準にしたがって締結する。
[編集] 委託業務範囲
郵政窓口事務の委託に関する法律施行規則(昭和24年7月14郵政省令第7号)第2条により以下の通りであるが、公社は、業務の運営上支障があると認めるとき事務の全部若しくは一部を委託しないことができることとされている。
[編集] 郵便
- 内容証明郵便物を除く郵便物の引受け。
- 外国来郵便物で関税又は内国消費税及び貨物割を課されたものを除く郵便物の交付
- 郵便切手類の販売に関する事務
- お年玉付郵便葉書の金品の支払又は交付
[編集] 郵便貯金
団体取扱い、財形貯蓄を除く
- 通常郵便貯金
- CTMによるオンラインでの積立郵便貯金の取扱、
- 定額郵便貯金及び定期郵便貯金並びに預金者に対する貸付
- 国際ボランティア貯金
[編集] 郵便為替
- 普通為替
- 電信為替
- 定額小為替
[編集] 郵便振替
- 郵便振替
- 災害ボランティア口座
[編集] 簡易生命保険
- 契約の申込受理
- 保険料の受入れ
- 保険金及び年金の支払
- 貸付金の支払及び弁済
- 契約者配当金の支払
[編集] 印紙
- 印紙の売りさばき
[編集] 政府関係
[編集] その他
- 宝くじの売りさばき及び当せん金品の支払又は交付
- 郵便貯金及び預金等の受払事務の委託及び受託に関する法律 (平成十年法律第七十八号)第四条第一項 の規定により同法第二条第一項 の金融機関から委託された金銭の受入れ又は払渡し等に関する事務
[編集] 委託事務従事者
受託事務に従事するものは、みなし公務員とされる。
[編集] 組合委託の利用
農業協同組合・漁業協同組合・消費生活協同組合の事業・施設等の利用は、本来、組合員・准組合員に限定されるが、受託者は組合員以外にも公平に利用させる義務があるので、組合員以外も当然、利用できる。
[編集] 郵便切手・印紙の販売
郵便切手・印紙の販売については、郵便切手類販売所等に関する法律(昭和24年法律第91号)による郵便切手類販売者とみなされる。
- 切手類の販売に関しては、コンビニ等の売捌所と同じ扱いであり、受託者が公社から買い受けた物を販売する。一定期間分を後日支払うというような売り掛けではなく、また貯金の扱いも2件で数十円ということから受託者の負担が大きいという指摘がある。
[編集] 設置の公表
改廃その他の情報は、その簡易郵便局局頭に掲示されるほか、普通郵便局・特定郵便局と併せ、郵便局開局等情報(日本郵政公社サイト内)で公表されている。
[編集] 特徴
- 「郵便局」と称しているが、性質的には「民間による郵政の代理店」である。(ここでいう民間とは、国以外という意味であり、地方自治体なども含む)
- 大都市のショッピングモール内にあるシティポストのように簡易局が設置されることもある。したがって、必ずしも過疎地だけにあるというわけではない。
- 要員は局長を含めて2名以上配置となっている。なおショッピングセンター内にある簡易局などでは郵政窓口経験者などのOB・OGを採用している場合もある。
- 過疎地の小規模な局では状況により局内に1人しかいなかったり、担当者が外出していて一時的に窓口が閉まることもある。
- かつてはオンライン化されていない局もあった。2005年(平成17年)4月1日を以て東の川簡易郵便局(奈良県)が廃止・的場簡易郵便局(山形県)が一時閉鎖されたため、現在は郵便貯金を扱う全ての簡易局にCTM(窓口係員が操作する貯金・保険の端末機。カウンター・ターミナル・マシンの略)が配備されている。
- 逆に、貯金・簡易保険業務を扱わない局にはCTMはないため、通常CTMで発行する普通為替証書を昔ながらの手作業で発行する。
- 農協が受託している場合、農協貯金との兼ね合いから郵便貯金を扱っていないことが多い。昭和50年代後半から平成1桁年代の郵貯オンライン化の過程で貯金業務を廃止してしまった簡易局が多い。またいったんCTMを設置しながら後で撤去した局もある。
- 学校や病院内にある簡易局の場合、その学校・病院の都合や、受託者本人の都合、地域行事等により臨時休業する場合もある。大東文化大学内簡易郵便局、東京電機大学内簡易郵便局は、大学が休暇に入る度に一時閉鎖される。
- 白馬山頂簡易郵便局や白山山頂簡易郵便局のように、自動車道の通っていない山小屋に簡易郵便局が委託されている例もある。毎日麓と山頂を歩いて往復する人によって、郵便物は収集されている。
[編集] 郵政民営化と簡易郵便局
郵政民営化により、簡易郵便局は次のように変わる。
[編集] 根拠法の改正
根拠法は『郵便窓口業務の委託に関する法律』に改題される。これは郵便事業株式会社から郵便局株式会社への郵便窓口業務及び印紙の売りさばきに関する業務の委託並びにその再委託に関するものになり、郵便局について定めるものとなる。郵便貯金・簡易保険等事務については本法から削除される。
[編集] 委託方法
郵便局株式会社が、郵便事業株式会社から法律上委託させられる業務と、郵便貯金銀行・ 郵便保険会社から任意に委託されるかも知れない業務で、郵便局株式会社が委託しようと考えるものを、簡易郵便局の受託者に再委託する方法となる。
[編集] 委託範囲
再委託される窓口業務は次の範囲である。
- 郵便物の引受け
- 郵便物の交付
- 郵便切手類の販売
- 付随業務(このなかに、郵便貯金銀行と郵便保険会社の業務が入る可能性がある。)
[編集] 再委託契約
郵便局株式会社は、総務大臣の認可を受けて定める基準に従って、郵便局株式会社の指定する場所において再委託業務を行う契約を締結しなければならない義務を負うことになる。
[編集] 経過措置
郵政民営化により、法的根拠のある受託は郵便のみとなる。郵便貯金・簡易保険等は次の通りとなる。
民営化後に新設・変更の場合は、簡易郵便局の受託者や従事者が、適用法令の基準に合致するように自分で登録や資格の取得をしなくてはならず、事実上、現行の簡易郵便局は消滅する。
[編集] 郵便貯金銀行関係
- 郵便貯金・郵便振替・郵便為替に関する業務は、郵便局株式会社と郵便貯金銀行の協議で決まるものであり、当然、再委託されるものではない。
- 郵便貯金事業の国債に関する事業については、日本郵政株式会社の定める承継計画に、承継後にその簡易郵便局に業務を行わせることが入っている場合に限り、特例として現行法令の基準等にかかわらず、郵便貯金銀行を所属証券会社とした証券仲介業として登録をしたものとみなされる。その業務を行う受託者の役員・使用人は、承継計画に、承継後にその簡易郵便局で国債専門の証券外務員(国債証券等募集員)として従事することが入っている場合に限り、特例として現行法令の基準等にかかわらず、外務員登録原簿に登録をしたものとみなされる。
- 郵便貯金事業の確定拠出年金に関する事業については、郵政民営化の承継計画に、承継後にその簡易郵便局に業務を行わせることが入っている場合に限り、特例として現行法令の基準等にかかわらず、確定拠出年金運営管理施設として登録したものとみなされる。
[編集] 郵便保険会社関係
- 簡易保険事業の募集に関する事業については、承継計画に、承継後にその簡易郵便局に業務を行わせることが入っている場合に限り、特例として現行法令の基準等にかかわらず、郵便保険会社を所属保険会社とした特定保険募集人として登録をしたものとみなされる。その業務を行う受託者の役員・使用人は、承継計画に、承継後にその簡易郵便局で生命保険募集員として従事することが入っている場合に限り、特例として現行法令の基準等にかかわらず、郵便保険会社を所属保険会社として生命保険募集員に登録をしたものとみなされる。
[編集] 受託者関係
受託者が農業協同組合・漁業協同組合・消費生活協同組合の場合は、その組合に関する法律の規定にかかわらず、承継計画に、承継後にその簡易郵便局に業務を行わせることが入っている場合に限りその業務を行うことができる。
これらの組合が民営化後には、法律上、純粋な郵便業務と付随業務を除くの組合員以外への利用が認められなくなるので、郵便貯金銀行・郵便保険会社関係業務を組合員以外が利用することが禁止される。農業協同組合・漁業協同組合では、准組合員として利用する方法もあるが、そこに居住する個人に限定されているので、法人や団体の取扱いは不可能となる。
[編集] 地方公共団体関係
受託者が地方公共団体の場合には、民営化までに簡易郵便局を業務として行える規定を条例で定めなければならない。民営化後に受託する場合には、郵便業務と付随業務以外は、極めて困難となる。