空間識失調
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空間識失調(くうかんしきしっちょう)とは、平衡感覚を喪失した状態。バーティゴ(vertigo)ともいう。
[編集] 疾病
[編集] 航空操縦
主に航空機のパイロットなどが飛行中、一時的に平衝感覚を失う状態のことをいう。健康体であるとないとに、かかわりなく発生する。
機体の姿勢(傾き)や進行方向(昇降)の状態を把握できなくなる、つまり自身に対して地面が上なのか下なのか、機体が上昇しているのか下降しているのかわからなくなる、とても危険な状態。しばしば航空機事故の原因にもなる。
濃い霧の中や夜間の飛行など、地平線(水平線)が見えない状況で飛行する場合に陥りやすく、また視界が広くとも雲の形や風などの気象条件、地上物の状態などの視覚的な原因、機体の姿勢やGの変化などの感覚的な原因によって陥ることがある。
身近な例では、大型の旅客機に搭乗した際、よほど窓の外を注視していなければ空港の周囲を旋回しているのか、真っ直ぐに上昇しているのかがわからないことも、常に重力が真下にかかるためにおこる、ひとつの空間識失調といえる。真っ暗な海の上を飛ぶ場合などには、パイロットも無視界に近い状態のため、同じ感覚を覚えることになる。 超音速のジェット戦闘機では、旅客機とは比較にならない速度とG(重力加速度)のために、真昼でも海と空の区別がつかなくなることもあるという。
ベテランのパイロットといえども程度の差こそあれ必ず陥る症状でもある。空間識失調に陥った場合は、自身の感覚よりも水平儀や高度計、昇降計、航法表示器などの計器を信じて操縦することが最善とされる。ゆえに計器の誤差や故障は死活問題となる。