航空宇宙軍史
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『航空宇宙軍史』(こうくううちゅうぐんし)は谷甲州原作のハードSF小説のタイトル。 この項ではこの作品と同一の世界設定を用いた作品群を含めて航空宇宙軍史シリーズとして扱う。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] 航空宇宙軍史シリーズ
航空宇宙軍の発足から、外惑星連合(木星・土星の衛星による連合)との2次に渡る戦争(外惑星動乱)、そして汎銀河連合との恒星間戦争に至る人類文明史を背景に展開する、ハードSF作品群。
相対軌道・相対速度を利用した爆雷等の兵器をはじめ、航宙に年単位の時間がかかる(ワープの類は出てこない)、実際に計算された星間軌道など、今日の科学的知見と技術的蓄積の延長線上にある「嘘っぽくない」宇宙戦争が魅力である。また戦争の背景となるべき社会の資源・技術・エネルギー収支・新技術の実運用面等の考察を踏まえている点は注目に値する。
[編集] 作品
作品に描かれている時代を元に分類する。大きく分けると、長編がメインストーリーで、短編は局地戦を描いたものが多い。
[編集] 外史・前史
- 戦闘員ヴォルテ
- 137機動旅団 —— 雑誌掲載のみ
- ガネッシュとバイラブ
- 惑星CB-8越冬隊
[編集] 第1次外惑星動乱
- カリスト-開戦前夜-
- 開戦前夜のカリスト。航空宇宙軍に対する戦略をめぐってカリスト軍幹部たちは議論を重ねるが、非公然組織であるがゆえの統制の甘さをついて主戦派は戦争準備につきすすむ。早期の開戦に反対する戦略情報部長エリクソン准将は、この動きを阻むべく、独自の活動を開始した…。
- タナトス戦闘団
- 慎重派のクーデターの失敗から、主戦派が主導権を握ったカリスト。開戦劈頭の奇襲作戦決行の準備を命じられたタナトス戦闘団隊長ダンテ中佐は、月面都市に潜入する。しかし、カリスト軍幕僚会議の思惑と航空宇宙軍警務隊の隙の無い警戒の間で、事態は思わぬ方向に進んでゆく。
- 仮装巡洋艦バシリスク —— 短編集
- 火星鉄道一九(マーシャン・レイルロード) —— 短編集
- 巡洋艦サラマンダー(クルーザー サラマンダー) —— 短編集
- 星の墓標 —— 短編集
[編集] 第1次外惑星動乱終結後
- 最後の戦闘航海
- エリヌス-戒厳令-
[編集] 汎銀河文明との対決と航空宇宙軍の終焉
- 終わりなき索敵
中央公論社より、電子書籍として全面改稿された『カリスト-開戦前夜-』と『タナトス戦闘団』が発売されている。
[編集] 航空宇宙軍
航空宇宙軍は航空宇宙軍史に登場する架空の軍事組織。 作中では元々はアメリカ合衆国軍の同一部門から独立発展した組織とされている。 便宜上地球-月連合の指揮下に置かれているが、実質は独立した国家並の権限を持ち合わせていると思われる。
22世紀後半以降、天王星の衛星エリヌスに総司令部が置かれた。大きく分けて内宇宙艦隊、外宇宙艦隊の二系統に分かれる。
[編集] 内宇宙艦隊
平時は太陽系内の治安維持を主目的とする艦隊組織。 フリゲート艦と警備艦を主戦力として構成される。
太陽系内での有事の際は主戦力として敵勢力と交戦。
- ゾディアック級フリゲート艦(スコーピオン、タウルス、アクエリアス、アリエス、サジタリウス、カプリコーン)
- フリゲート艦ジェミニ、オフィユキ、オリオン
- 特設砲艦レニー・ルーク
- オルカ・キラー
[編集] 外宇宙艦隊
時期によって三段階にその主目的は変質した。
[編集] 初期
太陽系外の探査活動を主要業務としていため、観測艦とそれを支援する艦艇によって構成されていた。
[編集] 超光速シャフト(超光速空間流)及びSGとの接触後
所属艦艇に超光速航法実験艦が加わる。 SG情報によって汎銀河文明の探査に乗り出したのもこの頃である。 以降組織は肥大化し、その主任務は、汎銀河文明の探索、発見後支配する為の軍政組織に変質した。 戦闘艦艇が主力となり、航空宇宙軍内での主戦力化。
- オルフェウスシリーズ
- カンチェンジュンガ級宙域制圧戦闘母艦
[編集] 末期
圧力的軍政に失敗し、汎銀河連合軍との交戦。 超光速航行艦による主力艦隊を構成。
- ミンダナオ級高加速戦闘艦
- ガンガ級主力戦闘艦
[編集] 外惑星連合
本作品中における航空宇宙軍の対抗勢力の一つ。 地球-月連合、惑星開発局、さらに航空宇宙軍の間接・直接の支配に対して自然発生的に締結された衛星国家の連合政体。中核は木星系のカリスト、ガニメデ。それにイオ、エウロパ、土星系のタイタン及び最終的には両トロヤ群が参加した。
しかしながら、実質的な活動の主体となったのは木星系の2大国であり、他の諸国の影響力は小さかった。また、土星系とは足並みの乱れが目立ち、結束の度合いは疑わしかった。
[編集] 外惑星連合軍
[編集] 第1次外惑星動乱まで
外惑星連合加盟国の宇宙軍の連合体。航空宇宙軍の監視に対する配慮から、当初は武官の連絡会議の体裁を取ったが、航空宇宙軍および地球月連合に対する対抗のための軍事戦略の研究が裏面では進められていた。第1次外惑星動乱の直前までは非公然組織であったが、そのことが統制の甘さを生み、一部軍人たちの独走を許したために、航空宇宙軍に介入の口実を与えてしまい、外惑星連合全体としての自立戦略の長期的な策定と実行を妨げることになった。いずれにせよ、実体は、航空宇宙軍の脅威に怯える各衛星国家の自衛軍を糾合したものに過ぎず、実質的に戦力となるのはカリスト、ガニメデ、タイタンの3カ国軍のみ。
第一次外惑星動乱前夜には多数の共通規格商船を改装した仮装巡洋艦を保有。
動乱後期には唯一の正規巡洋艦サラマンダーが竣工している。
- 巡洋艦サラマンダー
- 仮装巡洋艦バシリスク
- 無人砲艦ヴァルキリー
- オルカ戦隊
[編集] 第1次外惑星動乱終結から壊滅まで
第1次外惑星動乱終結後、公的組織としての外惑星連合軍は消滅したが、戦犯追及を受ける恐れのある旧軍人の逃亡を幇助する地下組織にその名は引き継がれた。主に木星系の旧軍人が中心となり、旧ガニメデ軍情報部の幹部たちが指導者となった。しかし、敗戦とそこに至るまでの過程での悲惨な状況に対し責任をとるべき人々を助けるばかりの活動に対する不満から内紛が発生し、旧軍幹部からなる指導層が一掃された。以後、航空宇宙軍と地球月連合の支配に抵抗する抵抗組織に再編されるが、長期にわたる活動のうちに内部の規律と統制は弛緩し、航空宇宙軍警務隊の作戦によって壊滅させられた。
- 『エリヌス-戒厳令-』
- 『最後の戦闘航海』
[編集] タナトス戦闘団
カリスト防衛軍警備隊の下部に設けられた陸戦部隊。山下准将隷下。指揮官はヘロム・"ダンテ"・フェルナンデス中佐、副隊長はローレンス・ブライアント少佐(ランス)、その他隊員として、ブロー、ラム、ロッド、ジョーなどがいる。戦前のアナンケ航空宇宙軍基地接収作戦、開戦劈頭の月面襲撃作戦、タイタンでのラザルス回収作戦、終戦直前のカリスト・クーデターなどで活躍したが、戦後、多くの隊員の消息は不明である。
- 『カリスト-開戦前夜-』
- 『タナトス戦闘団』