菩提もと
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菩提酛(ぼだいもと)は、平安時代中期から室町時代末期にかけて、もっとも上質で定評のある清酒であった南都諸白のとりわけ奈良菩提山(ぼだいせん)正暦寺(しょうりゃくじ)で産した銘酒『菩提泉(ぼだいせん)』を醸していた酛。
または、その酛を用いて造る、酒の製法そのものを指す。
時代が下るにつれ、やがて正暦寺以外の寺の僧坊酒や、奈良流の造り酒屋の産する酒にも用いられた。
室町時代初期『御酒之日記』、江戸時代初期『童蒙酒造記』などにその名を残し、当時の日本酒の醸造技術の高さを物語っている。
今日でいうザルの一種である笊籬(いかき)を使うことから「笊籬酛」とも呼ばれた。
[編集] 製法
新酒を仕込むのに残暑の厳しい日を選び、笊籬の中に蒸米を入れ、水中であらかじめ乳酸醗酵させて酛をつくる。猛烈な臭いを発するが、高温で醗酵が早く進み、夏でも安全に酛が造れるという。 蒸米は強く仕掛ける。ふつう三回おこなう添(そえ)は二回にする。
麹によってデンプンが糖化して甘みを出し、味見を続けて、さらに渋みと辛味が加わったときに添をおこなう。麹は、酛も添も蒸米の六割にする。