議員記章
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議員記章(ぎいんきしょう)とは、衆議院議員及び参議院議員並びに都道府県、市町村、特別区の議会議員などが着用する記章。いわゆる議員バッジのこと。都道府県や市町村の場合、正式名称は議員徽章や議員き章(徽の字が常用漢字ではないため条例でひらがなを用いていることによる)、議員章と称するところもある。以下、議員バッジという。
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[編集] 議員バッジに関する義務並びに特典
国会では国会議員が本会議場に入場する際、議員バッジを着用しなければならない。これは国会議員にはカード式の身分証明書は交付されないため、議員記章が身分証明となるためである(中田宏は議員時代、バッジ以外の身分証明が鉄道の無料パスしかない為に、国会議員であると証明するのに苦労した事があるという。著書「国会の中はこうなっている」より)。しかし、2005年以降のクールビズに対応して、本人が申請すればカード式身分証が交付される。
地方議会においては、必ずしも会議場に入場する際に議員バッジを着用する義務を課していない場合がある。そのため、議員バッジを着用せずに議会に臨む地方議員も存在する。
[編集] 議員バッジの意匠
議員バッジは、国会議員及び各地方自治体の議員それぞれ違った意匠のバッジを制定し、バッジにより各級議員の混同を避け、区別、識別できるようにしている。 概ねこれら議員バッジは、金色の金属製台座にモール(またはビロード)といわれる生地を張り、その中央に金属製の模様を配した特有の形状をしているが、地方自治体の中には企業の社員章と同様の全金属製バッジや七宝焼きを施したバッジを用いているところもある。
- 衆議院議員のバッジ 直径約20ミリの金属製台座に赤紫色のモールを取り付け、その中央に金色の金属製11弁菊花模様を配している。これら金属部分は、金メッキを施している。また紛失防止用に記章本体と裏の留め金部分を連結する正絹製の組紐が取り付けられている。
- 参議院議員のバッジ 直径約20ミリの金属製台座に紺色のモールを取り付け、その中央に金色の金属製11弁菊花模様を配している。この菊花模様は衆議院のものより一回りほど大きい。これら金属部分は、金張りを施している。また紛失防止用に記章本体と裏の留め金部分を連結する正絹製の組紐が取り付けられている。
- 都道府県議会議員のバッジ 都道府県議会議員の記章には、全国共通の記章があり、多くの都道府県でこの記章を採用している。共通記章は、直径約18ミリの金属製台座に紺色のモールを取り付け、その中央に金色の金属製花心(花のおしべやめしべ)模様を配している。これら金属部分は、金メッキ、金張り、更には台座や模様自体が8金から24金(純金)製のものまで様々あるようで、各都道府県の財政状況や議員の意識等により、その材質に差があると言われている。また紛失防止用に記章本体と裏の留め金を連結する正絹製の組紐が取り付けられている。この共通記章を採用していない自治体では、例えば花心部分をその自治体の県章などに置き換えた、独自の記章を制定して用いている。この独自記章も概ねモールの色は紺色である。
- 市議会議員のバッジ 市議会議員の記章にも全国共通の記章があるが、政令指定都市とその他の市(中核市、特例市、一般市)では異なる共通記章を制定している。これは政令指定都市の持つ権限が、その他の市とは一段異なった権限を持っていることに基づく差異ではないかと推測できる。
(政令指定都市議会議員) 政令指定都市議会議員の記章には、全国共通の記章があり、多くの政令指定都市でこの記章を採用している。共通記章は、直径約19.5ミリの金属製台座に赤紫色のモールを取り付け、その中央に金色の金属製桜花模様を配している。これら金属部分は、金メッキ、金張り、更には台座や模様自体が8金から24金(純金)製のものまで様々あるようで、各政令指定都市の財政状況や議員の意識等により、その材質に差があると言われている。また紛失防止用に記章本体と裏の留め金を連結する正絹製の組紐が取り付けられている。この共通記章を採用していない自治体では、例えば桜花部分をその自治体の市章などに置き換えた、独自の記章を制定して用いている。この独自記章も概ねモールの色は赤紫色である。
(政令指定都市以外の市議会議員) 政令指定都市以外の市議会議員の記章には、全国共通の記章があり、多くの市でこの記章を採用している。共通記章は、直径約15ミリの金属製台座に赤紫色のモールを取り付け、その中央に金色の金属製左ひねりの透かし10弁菊花模様、更にその中央には円に囲まれた直径3.7ミリの「市」の文字を配している。これら金属部分は、金メッキ、金張り、更には台座や模様自体が8金から24金(純金)製のものまで様々あるようで、各市の財政状況や議員の意識等により、その材質に差があると言われている。政令指定都市以外の市議会議員の記章には、紛失防止用の組紐はない。この共通記章を採用していない自治体では、例えば透かし菊花部分をその自治体の市章などに置き換えた、独自の記章を制定して用いている。この独自記章も概ねモールの色は赤紫色である。
市議会議員の永年勤続バッジ 政令指定都市以外の市議会議員の議員には、永年勤続を表彰するため全国市議会議長会により特別仕様の永年勤続バッジが設けられ、贈呈されている。この永年勤続バッジは、市議会議員勤続10年以上で金属部分が白金張に、それ以上では通常のバッジ中央に配されている「市」の文字の部分に宝石がはめ込まれ、15年以上でルビー、20年以上スビーネル、25年以上ジルコン、30年以上ゴールデンサファイヤ、35年以上エメラルド、40年以上アメジスト、45年以上でガーネットとなる。さらに議長職の永年勤続は別の基準が設けられ、在職4年以上で金属部分が白金張、8年以上でルビー、12年以上スビーネル、16年以上ジルコン、20年以上ゴールデンサファイヤ、24年以上エメラルド、28年以上アメジスト、32年以上はガーネットとなっている。
- 特別区の区議会議員のバッジ 東京都の特別区の区議会議員の記章は、それぞれの区によって独自の記章を制定しているようである。その記章も概ね直径は17ミリで金属製台座に赤紫色のモールを使用するなど特徴は共通化されているようで、その中央に各区の区章やその他、各区の特徴を現す文様を配したものを用いているようである。
- 町村議会議員のバッジ 町村議会議員の記章には、全国共通の記章があり、多くの町村でこの記章を採用している。共通記章は、直径約18ミリの金属製台座に紺色のモールを取り付け、その中央に金色の金属製12弁菊花模様、更にその中央には「議」の文字を配しており、この「議」の文字は、一般の議員は銀色だが、議長のみ金色のものを着用する。これら一般議員の「議」の部分を除く金属部分は、金メッキ、金張り、更には台座や模様自体が8金から24金(純金)製のものまで様々あるようで、各町村の財政状況や議員の意識等により、その材質に差があると言われている。また紛失防止用に記章本体と裏の留め金を連結する正絹製の組紐が取り付けられている。この共通記章を採用していない自治体では、例えば菊花部分をその自治体の町村章などに置き換えた、独自の記章を制定して用いている。この独自記章も概ねモールの色は紺色である。
[編集] 前議員記章(前議員バッジ)
- 国会議員
衆議院並びに参議院では現職議員が落選し、前議員となった場合、申請により前議員記章(前議員バッジ)を交付される。前議員バッジの特典は国会の本会議において前議員席または公衆席に限り入場できる。議院の各委員会にも自由に入場できる。他の議院(前衆議院議員の場合は参議院、前参議院議員の場合は衆議院)の本会議は公衆席に限り入場することができる。各委員会室については議院運営委員会以外は自由に入場できるなどの特典がある。前衆議院議員の場合はモール部分が黄色、前参議院議員の場合は緑色のバッジが交付される。
- 地方議員
また地方議会でも前議員記章や名誉議員記章、議員待遇者記章など国会議員の前議員記章と同様な意義を持ったバッジを前議員や元議員等に配布している。モールの色やバッジの大きさ、形までも様々で、モール部分の色には蝦茶色、濃茶色、茶色、緑色、青色などを用いることが多く、現職の議員と区別できるようにしているようだ。このバッジで発生する特典などは各自治体により様々で、概ね自治体の行う行事、式典への招待、自治体が発行する刊行物の贈呈、死亡時には遺族に対して弔祭料の贈与等が一般的であるが、中にはその自治体の公営交通機関の優待乗車券の贈呈や公営文化施設(美術館、博物館、動物園、水族館等)等の入場料無料などの特典を付与している自治体もある。
[編集] 議員バッジにまつわる話
- 2005年、衆議院議員の太田誠一により、議員バッジが権威の象徴として政治の後進性を助長させているとして議員バッジ廃止案を提案している。
- 業界団体やその他民間の団体などの特に役員用の記章において、議員バッジに類似した形状をした「議員バッジ式記章」を用いているところがある(議員バッジと同じ製造業者の場合もあり、業者内では議員バッジと議員式バッジが混同される場合がある)。