議員
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議員(ぎいん)は、議会を組織し、その議決に加わる資格を有する者。主要な国では、通常、選挙によって選出される。ここでは、主に現代日本における議員制度(国会議員、地方議会議員)について記載する。議員への呼び方であるが、国会の衆議院議員へは代議士と呼ぶが、議員全般へは先生などと呼ぶことが有る。
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[編集] 国会議員
選挙区選出議員も比例代表区選出議員も日本国憲法第43条より、一部の地域、政党団体の代表ではなく、国民全体の代表とされ、その様な行動を期待される。
議員の定数については、公職選挙法により規定されている。
衆議院議員と参議院議員を兼ねることはできない。これは両議院の独立を担保するためである。
国会議員は当選後に資産公開が義務付けられており、任期開始日に保有する資産の報告書を100日以内に所属議院の議長に提出しなければならない。資産の対象は土地・建物、預貯金、有価証券、ゴルフ会員権などである。
[編集] 特権
国会議員には憲法により3つの特権が認められている。
- 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない
- 国会法第33条
- 各議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されない。
- 免責特権(日本国憲法第51条)
- 議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われることはない。
- 歳費特権(日本国憲法第49条)
- 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。
- なお、主な内訳は、
- 月収132万8000円(年間1593万6000円)
- 歳費手当(つまりボーナス)は年間635万4480円
- 文書通信交通滞在費は月100万円(年間1200万円)
- 合計3429万480円の歳費が毎年国会議員1人1人に支払われる。
その他の特権としては、
など、優遇しすぎと批判のある特権もある。もっとも、中田宏が著書『国会の中はこうなっている』で述べたところに拠れば、JRの議員パスや航空運賃の無料分は、民間で言う通勤手当に相当する費用支給だという。
[編集] 各種記録
[編集] 地方議会議員
地方公共団体では、原則として議会を置くものとされ、その議会は当該地方公共団体の住民の公選した議員で構成される。
地方公共団体の議員には、前述した不逮捕特権及び免責特権は与えられていない。
[編集] 選挙権
以下の要件をすべて満たしている者は、地方公共団体の議会の議員の選挙権を有する。(地方自治法第18条)
- 日本国民
- 年齢満20年以上
- 引き続き3ヶ月以上市町村の区域内に住所を有する者
[編集] 被選挙権
以下の要件をすべて満たしている者は、地方公共団体の議会の議員の被選挙権を有する。(地方自治法第19条第1項)
- 普通地方公共団体の議会の議員の選挙権を有する者
- 年齢満25年以上
[編集] 定数
議員の定数は、条例で定める。 その定数は、地方自治法で定める上限の数の範囲内でなければならない。
[編集] 任期
議員の任期は原則として4年である。
[編集] 兼職禁止規定
普通地方公共団体の議会の議員は、衆議院議員又は参議院議員と兼ねることができない。
普通地方公共団体の議会の議員は、地方公共団体の議会の議員及び常勤の職員等と兼ねることができない。(地方自治法第92条)
[編集] 兼業禁止規定
普通地方公共団体の議会の議員は、
たることができない。(地方自治法第92条の2)
- ここでいう請負とは、民法上の請負のみならず、広く営業としてなされている経済的・営利的取引であって、一定期間にわたる継続的な取引関係に立つものを含むものと解される。
これは、地方公共団体の事務の客観的公平さを担保することを目的としている。
なお、請負が禁止されるのは、議員個人のみであり、その家族は含まれない。
議員が兼業禁止に該当するか否かの決定は、議会が行う。 この場合において、出席議員の三分の二以上の多数によりこれを決定する。(同法第127条第1項)
[編集] 除斥
普通地方公共団体の議会の議長及び議員は、
- 自己若しくは父母、祖父母、配偶者、子、孫若しくは兄弟姉妹の一身上に関する事件又は
- 自己若しくはこれらの者の従事する業務に直接の利害関係のある事件
については、その議事に参与することができない。 但し、議会の同意があつたときは、会議に出席し、発言することができる。(地方自治法第117条)
[編集] 懲罰
普通地方公共団体の議会は、この法律並びに会議規則及び委員会に関する条例に違反した議員に対し、議決により懲罰を科することができる(地方自治法第134条)。 懲罰に関し必要な事項は、会議規則中にこれを定めなければならない(同法第134条第2項)。
懲罰には次のものがある(同法第135条)。
- 公開の議場における戒告
- 将来を諫める旨を申し渡す。
- 公開の議場における陳謝
- 公開の議場で議会の定める謝罪文を朗読させる。
- 一定期間の出席停止
- 一定期間、議会への出席を禁止する。同一会期中に限られ、後会にわたらない。
- 除名
- 議員の身分を剥奪する。
懲罰の動議を議題とするに当っては、議員の定数の8分の1以上の者の発議によらなければならない(同法第135条第2項)。 除名については、当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席し、その4分の3以上の者の同意がなければならない(同法第135条第3項)。
[編集] 懲罰議決に対する取消訴訟
最高裁判所は、地方議会議員に対する3日間の出席停止の懲罰議決の効力が争われた事件で、「自立的な法規範を持つ社会ないし団体に在っては、当該規範の実現を内部規律の問題として自治的措置に任せ、必ずしも、裁判にまつを適当としないものがある」として、この出席停止の懲罰はこれにあたると解した。ただし、除名処分は「議員の身分の喪失に関する重大事項で、単なる内部規律の問題にとどまら」ず、市民法秩序につながる問題であるから、司法審査が及ぶとした。(昭和35年10月19日最高裁判所大法廷判決)
なお、国会議員の場合は、各議院に憲法上高度の自律権が保障されていることから、除名についても司法権は及ばず、議院の判断が最終的なものとなると解されている。
[編集] 終身議員待遇者(議員待遇者)
多くの市町村、特別区においては複数回当選し議員の職責を果たした者に対して、落選または引退により議員の身分を失った場合に一定の要件を満たしていることを条件(大体、市町村8年から12年程度。市町村による)として、議員待遇者の資格を付与する。議員待遇者の特典は主にその地位・資格を定める市町村にもよるが、感謝状、記念章或いは議員待遇者記章、名誉議員の称号授与、市町村の行なう式典への招待、死亡の際における相当の礼をもつてする弔慰、その他市長が必要と認める事項などの待遇を定められている(※複数の事例をまとめて例示)。
[編集] 名誉議員の称号
国会或いは都道府県、市町村議会においては、議員として一定年数を務め、功労ある者には名誉議員の称号を贈る制度がある。
国会議員としては尾崎行雄、三木武夫が衆議院名誉議員の称号を贈られた。