豊竹屋
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豊竹屋(とよたけや)は落語の演目の一つ。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] あらすじ
一つの芸事に精進せず、あれこれかじってばかりというのは、いつの時代もあまり好ましいことではない。 ある男、豊竹屋 節右衛門(とよたけや ふしえもん)は、自分が見たり聞いたりしたものを節にして語る浄瑠璃を趣味としており、黙っている時がない。
風呂屋へ行き、湯船に浸かりながら湯加減について浄瑠璃風に語っていたが、歌に熱中するあまりのぼせてしまい、湯船から出る際に床で滑って転んでしまう。 他の客に介抱されながら、そんなことをしていては体に悪いと諭されるも、懲りない節右衛門。 帰路もやはり歌にしながら帰宅し、家内にも同様にたしなめられるが、飯を食べながらもなお語り、味噌汁をこぼしてしまう。
とその時、同様に節をまわして唄いながら、節右衛門を訪ねて来た者が玄関に立っている。 名前を花梨 胴八(かりん どうはち)、聞けば即席の口三味線を得意としており、どんな節にも合わせられるという。 そこで、2人で即興の浄瑠璃を語ることにする。 お互いに「先に」「先に」と順番を譲っているうちに、セッションが始まる。
- 「先に旗持ち踊りつつ、三味や太鼓で打ちはやす」(節右衛門の歌、以下同)
- 「チン、チン、チンドンヤ(チンドン屋)」(胴八の口三味線、以下同)
そこへ、隣家の洗濯に使う水音が聞こえて来る。
- 「水をじゃあじゃあ出しっぱなし、隣の婆さん洗濯」
- 「ジャジャ、シャボン、シャボン(しゃぼん)」
どんどん興に乗る2人。
- 「去年の暮れの大晦日、米屋と酒屋に責められて」
- 「テンテコマイ、テンテコマイ(てんてこ舞い)」
- 「25日のお祭りは」
- 「テンジンサン、テンジンサン(天神さん)」
- 「子供の着物を親が着て」
- 「ツンツルテン、ツンツルテン」
- 「蜜柑のようで蜜柑でない、橙のようで橙でない、それは何かと尋ねたら」
- 「キンカン、キンカン(金柑)」
- 「夏の売り物、蕎麦に似れども蕎麦でない、うどんに似れどもうどんでない、酢をかけ蜜かけ食べるのは」
- 「トコロテン(心太)、カンテン(寒天)」
- 「食べ過ぎてお腹を壊して駆け行く先は」
- 「セッチン、セッチン(雪隠)」
その時ふと節右衛門が見上げると、棚の上のネズミが餅を引いて行くのが見える。 その様子を歌にすると、ネズミが「チュウチュウ」と合いの手を入れる。 それを見た胴八が「さすが節右衛門さんとこのネズミは心得てますな」と褒めると、節右衛門は
「いいえ、かじってるだけです」