負け犬
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負け犬(まけいぬ)とは
- 喧嘩に負けて逃げる犬。
- (上に准えて)勝負に負けた人間。
- ボストンコンサルティンググループが開発したPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)理論の中で、成長性にも収益性にも乏しいと位置づけられる事業ポートフォリオ。
- 酒井順子がベストセラー・エッセイ『負け犬の遠吠え』(講談社エッセイ賞、婦人公論文芸賞受賞)の中で、独身女性が自ら幸せだと言うと世間の反感をかうことに配慮し、「どんなに美人で仕事ができても、30代以上・未婚・子なしの3条件が揃った女は負け犬」だと甘んじてレッテルを貼られておいたほうが世間とうまくやっていける、と独身女性の処世術を説いたことから転じて、30代以上の独身女性のことを指すこともある。(これについては後述。)
[編集] 概要
イヌは本来、群れを形成し集団で生活する社会的動物である。このため主従関係がはっきりしており、犬自身が強いと認めた相手には絶対に逆らわない。転じて人間関係に於いても、他に服従し使役される存在を指して「負け犬」と形容するほか、彼らは強い相手には牙を剥く事がない故に戦う前から負けを認めているとしてこのように形容する。ただし、通常は強い侮蔑を含む語である。
また、慣用句としての「負け犬の遠吠え」とは、弱い犬は我が身が絶対安全な場所にあると判断している場合にのみ殊更大きな声で吠える事から、いわゆる負け惜しみも含め立場的に弱い(はずの)人間の弁が立つ様子を揶揄した言葉である。呑み屋で上司の悪口を言うなどこの典型であろう。一方で、客観的に立場の弱い人間が失当な発言をしていれば単に放置されることも多いのであって、自分より劣っているはずと思っている相手から、鋭い発言や癪に障る発言があった際に、相手を否定する煽りの言葉として使われることも多い。
[編集] 負け犬ブーム
酒井順子が、前述のエッセイ『負け犬の遠吠え』に於いて、30代超・子供を持たない未婚女性を指してこう表現する事で逆説的にエールを送った。「負け犬の遠吠え」は2004年度流行語大賞のトップテン入りも果たした。
ただし、当の『負け犬』という言葉については、著者が述べたのとは違う意味で理解され、言葉そのものが一人歩きしてしまったという点がたびたび指摘される。
日本では、結婚・子育てこそ女の幸せとする価値観が根強い一方、結婚よりも仕事、家庭よりもやりがいを求めて職業を全うする女性が1980年代以降増加の一途を辿っており、結果、気が付いた時には「浮いた話の一つも無い30代」という女性が、職場では相応の地位を獲得しつつも結婚できないというジレンマに陥ることもあるという。
近年では主夫の増加など、社会の役割に於ける性別が伝統的な価値観に必ずしも当てはまらず、また結婚はしていなくても相応の社会的地位から安定した生活を送っているこれらの女性が半ば自嘲的に「負け犬」と自称し、一種のブームになっている観がある。
また、このような風潮を後押しに、かつては体裁が悪いとして忌避されていた離婚や不倫も、女性側から積極的に行われるケースも増えているとされる。