不倫
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
不倫(ふりん)
不倫は配偶者のある男や女が、配偶者以外の異性と恋愛し、性交を行うことをいう(配偶者のいない男や女が、配偶者がいる異性と恋愛し、性交を行う場合も含む)。古くは姦通、不義密通といった。くだけた表現では浮気と呼ばれる。この言葉は未婚の恋人同士でも使われる。
TBSのテレビドラマ「金曜日の妻たちへ」(1983年)が、「不倫」という言葉を「男女間の不義密通」という意味に変化(固定)させたきっかけと言われている。それ以前のテレビドラマでは「よろめき」(主として、夫のある女性が、他人の男性に心を寄せる)という言葉が一般的に使われていたが、「金妻」以降はほぼ死語になっている。(なお“よろめき”は三島由紀夫が1957年に発表したベストセラー小説『美徳のよろめき』に由来する)
目次 |
[編集] 代償
最悪の場合、不倫の代償は非常に大きく、家庭や友人関係を一気に崩壊させる危険をはらみ、経済的・精神的に深刻な打撃を受け、社会的信用をも失う危険がある。家庭崩壊の場合は配偶者に訴訟を起こされる事もあり、実子がいる場合は、年齢に関係なく心を激しく傷付けトラウマを植え付けてしまう。なお、子供が心身を激しく傷つけられた場合には不倫をした本人だけでなく、その相手の異性も訴訟を起こされることもある。また、その異性が損害賠償を支払わされた例もある。
芸能人などはスキャンダルとしてバッシングを受け、政治家などにいたってはイメージ悪化に繋がり、潔癖な人間からの支持を大幅に失う。ただしお国柄によってはスキャンダルとはならないこともある(フランスなどは寛容だといわれる)。
関係の解消の際には、今までの関係を暴露すると脅されたり、口止め料や手切れ金を要求される場合もあるため、これらのトラブルも代償とされる。
重婚的内縁関係に於いては、実子を邪魔な存在と感じて児童虐待に及ぶケースも後を絶たない。
[編集] 不倫を正当化する主張
古代日本においては、一夫多妻制の上に招婿婚(妻問婚)という社会制度のため、夫が妻(正室)の家へといつもいる訳ではないこともあり、夫が他の女性の家へと行っている時には別の男性が来る事も普通にあったらしく、また男性が恋人の女性の家へと行くと、すでに他の男性が来ていたということもあった(「古今和歌集」に収録されている歌にも、多くその時に歌われたと思われるものがある)。ただし、その夫や恋人がそのことに対して声高に訴えたり、ましてや公にする事は、面子もあって滅多に無かったようだ。
平安時代では、やはり男は多くの女の元へ通うのが常識であり、一人の女性しか愛さない男は真面目人間として軽く見られた。しかし人の妻を奪うことは非常識とされ、世間の非難を浴びた。
近世(江戸時代)以前には、婚姻者以外との性交渉は珍しいことではなく、近代に入っても戦前では特に農村などではその風潮が一部に残っていた。女性の姦通が破廉恥な行為だとする常識が定着したのは、刑法で姦通罪が定められてからのようである。
近代に入ってから近年までの間は、「浮気は男の甲斐性」などと男の不倫に限り、容認する風潮が長く続いていた。当時男性が愛人を持つことは容認されても女性が浮気をすることは容認されないとされており、女性の不倫は1947年までは姦通罪という罪に問われた(現在の法律では刑事的責任を問われることはない)。
近年になってからは、恋愛感情と結婚生活を一体のものと考えるロマンチック・ラブの思想が男女双方に受け入れられ、不倫を罪悪であると考える者は男女問わず多い。しかし、現在の日本では、中年の富裕な男性とそれより年下の独身女性による不倫はよく見られる。また、既婚者同士の不倫も広がりを見せている。
[編集] 肯定論:女
「恋愛と結婚は別物」とする割り切った考え方も一部の女性には根強く、富裕な女性を中心に「結婚とは別に恋愛をしたい」という女性も存在している。「女性の不倫は男性の不倫とは違い、純愛であり美しいもの」とする、既婚女性の不倫を擁護する意見が一部の女性の間に存在する。このような一部の女性は、既婚女性の不倫を「婚外恋愛」と称して、既婚男性の不倫と区別することが多いが、論理的・倫理的な正当性はまったくない。
そもそも不倫を正当化している女性(未婚、既婚にかかわらず)が既婚男性の不倫の相手方となった場合では、男性の不倫とは違って純愛だとする主張が矛盾してしまい破綻する。
よくある言葉に「好きになってしまったものは仕方がない」や「たまたま好きになった相手が既婚だっただけ」と打算のない愛を強調する釈明がある。この観点には、相手のパートナーと子どもへ対しストレスや心的外傷を与える可能性、さらに自身が子どもを授かった際のそれ、裁判で係争になった場合のそれ、などなど多く他人を巻き込んだ重い負担に関する未来像についての考察が欠落しており、社会性を持たない。
[編集] 肯定論:男
過去の歴史背景を根拠に、また哺乳類の雄であることを根拠に「男とは元来そういうものだ」とする主張が一般的である。
「不倫は男の甲斐性」と、過去でのみ意味があった歴史背景を現代へ適用しようとしたり、「雄は多くの種を撒き散らす本能がある」という人間社会で暮している現実を度外視した主張(人間の性的活動が意志で制御、解消できることを無視)、「たまたま好きになった相手が既婚だっただけ」「好きになってしまったものは仕方がない」という一部の女性同様の見解もあるが、これらは社会性を持っていない。
近年では、男性の不倫を強く非難する意見がマスコミや女性文化人などから多く出されるためか、男性の不倫に肯定的な意見を公の場で述べることを忌避する者が多い。[要出典]
[編集] 法律上の不倫
法律上、不倫は「不貞行為」(貞操義務の不履行)という。
- 夫婦がお互いに他の異性と性的交渉を持たない義務に反する行為である。
- 一度きりの性的交渉も不貞行為とされるが、離婚理由になるには反復的に不貞行為を行っていることが必要とされる。
- 男女間の密会が性的交渉を伴わない場合は「不貞行為」にはならない。
[編集] 既婚者の同性愛
既婚者でありながら同性の恋人やセックスフレンドをもつ者もあるが、これについては不倫ととらえる人と不倫とは別物ととらえる人がいる。
男性同性愛者には妻を持ちながら同性との性交渉を求める者も少なくない。妻が夫がゲイであることを納得済みで結婚したのであればあまり問題にはならないが、男性が自らがゲイであることを隠して結婚していた場合、重大なトラブルに発展することもある。夫がありながら女性の交際相手を求める女性も多いが、「主婦レズ」などと呼ばれ、女性同性愛者のコミュニティでは排除されがちである。
同性愛者なのに結婚している事については「偽装結婚」「結婚相手がかわいそう」と非難する声もあれば、結婚せざるをえない事情を慮って、同情する意見もみられる。
[編集] 不倫にまつわる有名な発言
- 石田純一-「不倫は文化だ」との発言をしたと言われているが、実際は「日本には古来より忍ぶ恋というものがあり、そのような男女の思いが優れた文学などの文化、芸術を生み出してきたということもある」という婉曲的な表現であり、前述の発言はマスコミによってセンセーショナルに伝えられた結果である。
- 布袋寅泰-マスコミへのFAXで「いやぁ、火遊びが過ぎました(笑)」とコメントを寄せた。
- 森本レオ-「メシ友」「異文化交流」などの言葉を残した。
- ミッテラン元大統領(フランス)-「Et alors?(それがどうしたの?)」。妻以外との女性問題について質問した記者に対し、応えた言葉。(関連…エ・アロール それがどうしたの)
- ビル・クリントン元大統領(アメリカ)-「ルインスキーさんと不適切な関係を持った」(I did have a relationship with Ms. Lewinsky that was not appropriate.)。1998年に起こったモニカ・ルインスキー事件で、共和党から弾劾訴追を受けて、そう告白せざるを得ない状況に追い込まれた。この「不適切な関係」は同年の流行語となった。
[編集] 不倫がテーマとなった小説、漫画、TVドラマ等
文学・映画・テレビドラマの中には、こうした不倫をテーマにする作品が少なくない。こうした作品の中では、配偶者の疑惑、不安や嫉妬がよく描かれる。夫が妻の浮気を知りながら黙認したり、公認したりする夫婦が描かれることもある。
古典的なものとしては、『源氏物語』(この場合の不倫とは人の妻を寝取ること)や、中世ヨーロッパの『トリスタンとイゾルデ』物語が挙げられる。近代以降の作品には次のようなものがある。
- 『ボヴァリー夫人』(フローベール)
- 『緋文字』(ナサニエル・ホーソーン)
- 楽劇『トリスタンとイゾルデ』(リヒャルト・ヴァーグナー)、戯曲『ペレアスとメリザンド』(メーテルリンク)(トリスタン物語に基づく)
- 『アンナ・カレーニナ』(レフ・トルストイ)
- 『クロイツェル・ソナタ』(レフ・トルストイ)
- 『暗夜行路』(志賀直哉)
- 『郵便配達は二度ベルを鳴らす』(ジェームズ・M・ケイン)
- 『ユリシーズ』(ジェイムズ・ジョイス)
- 『人間失格』(太宰治)
- 『失楽園』(渡辺淳一)
- 『愛の流刑地』(渡辺淳一)
- 『金曜日の妻たちへ』(TVドラマシリーズ)
- 『東京タワー』(江國香織)
- 『海猫』(谷村志穂)
- 『不信のとき・ウーマンウォーズ』(2006年TVドラマ)
- 『今週、妻が浮気します』(2007年TVドラマ)
[編集] 関連項目
カテゴリ: 出典を必要とする記事 | 家庭 | 恋愛 | 倫理