離婚
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離婚(りこん)とは、生存中の夫婦が、有効に成立した婚姻を、婚姻後に生じた事情を理由として将来に向かって解消することをいう。有効に成立した婚姻を事後的に解消する点で、当初から婚姻の成立要件に疑義がある場合に問題となる婚姻の無効・取消しと区別される。
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[編集] 日本における離婚
日本では、民法(明治29年法律第89号)第763条から第771条に離婚に関する実体的規定を置いているが、その他、戸籍法(昭和22年法律第224号)、家事審判法(昭和22年法律第152号)、人事訴訟法(平成15年法律第109号)及びこれらの附属法規が離婚に関する手続規定を置いている。
日本では平成元年から平成15年にかけて離婚件数が増加している。厚生労働省「人口動態統計」によると、平成元年の離婚件数は約20万件、平成14年は29万組となっている(結婚数との比較でいえば、3人が結婚すると1人は離婚するということになる)。現在は横ばいとなっているが、2人に1人が離婚していた明治時代に比べれば少ない[1](これは、明治時代の女性は処女性よりも労働力として評価されており、再婚についての違和感がほとんどなく、嫁の逃げ出し離婚も多かったこと、離婚することを恥とも残念とも思わない人が多かったことが理由とされている[2])。現代の離婚の原因の主なものは「性格の不一致」である。また、熟年結婚が熟年夫婦による離婚の数値を押し上げている。
現行法は、離婚の形態として、協議離婚(協議上の離婚)、調停離婚、審判離婚、裁判離婚(裁判上の離婚)を規定している。
[編集] 協議離婚
夫婦は、その協議で、離婚をすることができる(第763条)。夫婦双方の合意が必須となるため、夫婦の一方が勝手に離婚届を作成して提出すると文書偽造罪で罰せられ、離婚は無効となる。
この制度は日本が世界で初めて法律で認められた。旧ソ連でも子供がいないことを条件に認められているが、無条件で認められているのは現在も日本だけである。
[編集] 調停離婚
家庭裁判所の調停において、夫婦間に離婚の合意が成立し、これを調書に記載したときは、離婚の判決と同一の効力(ここでは、いわゆる広義の執行力)を有する(家事審判法21条本文)。
離婚の訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に調停の申立てをしなければならない(同法18条、17条)。これを調停前置主義という。
[編集] 審判離婚
調停が成立しない場合においても、家庭裁判所が相当と認めるときは、職権で離婚の審判をすることができ(家事審判法24条1項前段)、2週間以内に家庭裁判所に対する異議の申立てがなければ、その審判は、離婚の判決と同一の効力(「調停離婚」の項を参照)を有する(同法25条3項、1項)。
[編集] 裁判離婚
協議離婚、調停離婚が成立せず、審判離婚が成されない時に、判決によって離婚すること。裁判離婚の成立は離婚総数の1%程度である。
[編集] 条文
(裁判上の離婚)民法第770条
- 夫婦の一方は、以下の場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
- 裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
[編集] 概要
離婚の訴えは、家庭裁判所の管轄に専属する(人事訴訟法4条1項、2条1号)。つまり、家庭裁判所に訴えを提起する必要があり、地方裁判所での審理を希望することは不可能である。
離婚の訴えに係る訴訟において、離婚をなす旨の和解が成立し、又は請求の認諾がなされ、これを調書に記載したときは、離婚の判決と同一の効力(「調停離婚」の項を参照)を有する(同法37条、民事訴訟法267条)。
[編集] いわゆる渉外離婚
以上のように日本では協議離婚の制度が認められているが、離婚するか否かを当事者の完全な意思に委ねる制度を採用する国は比較少数であり、離婚そのものを認めない国、一定の別居期間を経ないと離婚が認められない国、行政機関や裁判所による関与を要求する国などがある。
このように国によって離婚の要件や手続(特に手続に国家が関与する方法・程度)が異なるため、ある国での離婚の効力が、別の国では認められないこともありうる。例えば、裁判による離婚制度しか存在しない国では、当事者の意思に基づく協議離婚はありえないから、日本で成立した協議離婚の効力が認められるとは限らないし、裁判所が関与する調停離婚についてもその効力が認められる保障がない。
このような事情があるため、裁判離婚しか認めていない国の国籍を有する者が日本で離婚する場合は、離婚の準拠法の問題もあり、当事者による離婚の合意ができている場合でも、前述の審判離婚や裁判離婚をする例が少なくない。
[編集] ペーパー離婚
法律婚の夫婦が事実婚に移行する離婚をペーパー離婚と呼ぶ。夫婦別姓を目的とする場合が多い。また、何らかの不当利得を目的とする場合もある。(生活保護や児童扶養手当の不正受給、いわゆる資産隠し、など)
法律婚夫婦の改姓配偶者が公的書類において旧姓を使用したい時に、一時的に離婚して旧姓に戻り目的の手続きを完了した後に再婚するというように、何らかの目的を持って同じ相手と離婚再婚を繰り返すことをペーパー離再婚と呼ぶ。
ただし、離婚届を提出した以上法的にも離婚したことになるので、仮にペーパー離婚中に配偶者が死亡して相続が発生した場合、「配偶者」に対する法定相続分は無いことになる。
[編集] 家庭内離婚
実際には夫婦関係が失われているが、何らかの事情があるために同居を継続しつつも法的には離婚していない状態は、俗に家庭内離婚と呼ばれている。
[編集] 関連項目
[編集] 参照
- ^ 『明治の結婚 明治の離婚―家庭内ジェンダーの原点』 湯沢 雍彦
- ^ 福岡県弁護士会のコラム