貸本劇画
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貸本劇画(かしほんげきが)とは、貸本文化から生まれた若手漫画家のムーブメントであり、その後の流行語となった劇画の創成期を表す言葉である。
なお、劇画の命名は辰巳ヨシヒロによってなされたという説が有力である。
日活アクション映画の影響を受けたアクション漫画を発展させ、最盛期にはさいとう・たかをを中心として劇画集団という漫画家団体を組織した。従来の少年漫画に対抗し、アクション性の高いストーリー漫画を劇画と呼んで、数人の漫画家による書き下ろしアンソロジー形式の単行本『影』『街』などを中心に貸本店で人気を博した。
手塚治虫主催の雑誌COMや白土三平主催のガロなどの漫画専門誌の原点でもあり、それ以前の「漫画は子供の読むもの」という風潮を脱却し、青年層への漫画の定着の嚆矢となった。 テレビの普及等の社会の変化に加え、雑誌全体の発行部数の増加、週刊少年漫画誌の定着、青年漫画誌の登場などの理由により貸本漫画全体が衰退し主な出版社が倒産、ほとんどの漫画家は青年漫画誌や少年漫画誌に移っていった。この時期、劇画という活字が漫画雑誌に氾濫した。 これらの漫画家により、在来の漫画家は劇画の画風やコマ割り、スピーディーな展開、残酷シーンにおけるリアルな描写や、武器や自動車、メンズファッションなどの若者の生活スタイルを描く手法の影響を受け、その後の漫画界に大きな変化を及ぼした。
主な漫画家はさいとう・たかを、佐藤まさあきなど。当時の傾向として漫画家一人一人が代表的な主人公を創造してシリーズ化していることがある。さいとう・たかをの台風五郎シリーズ、佐藤まさあきの影男シリーズ、横山まさみちの独眼探偵シリーズ、南波健二のタックル猛牛シリーズ、江波譲二のトップ屋ジョーシリーズ、都島京也の猫シリーズなどの各シリーズはそれぞれが20巻を越えるヒット作となっている。
また、同時代に貸し本漫画界で活躍していたことから白土三平、小島剛夕、水木しげる、つげ義春、モンキー・パンチなどの漫画家を貸本劇画出身と見なす場合もある。