劇画

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劇画（げきが）は、絵とセリフでストーリーを描く表現技法で、漫画の一分野である。現在、一般的にはデフォルメされた作画の漫画に対して、写実的な作画で青年向けのシリアスなストーリーを描くものを指して劇画と呼ぶことが多い。広義には漫画に加えて紙芝居も劇画と呼ばれる。

[編集] 概要

現在は漫画の一分野であるものの、そもそも劇画は「漫画」とは別ジャンルのものと言える。雑誌の作品として発表される「漫画」に対して、劇画は貸本屋で貸し出される作品を指していた。「漫画」は子供向けでストーリーよりも笑いを重視した他愛のないものであり、ストーリー（劇）を画にしたものを劇画と呼んだ。貸本という連載作品のような形で締め切りに追われることのないメディアで展開されたため、劇画は比較的よく練られた良質な作品が多く、息の長い長編作品も生まれた。 1960～70年代にかけて劇画はブームを巻き起こした。

しかしその後、「漫画」も画力・ストーリーとも急成長したことで、写実的な作画もシリアスなストーリーも「漫画」の守備範囲に含まれるものになってしまった。加えて貸本屋が衰退したことで劇画の掲載メディアも雑誌が中心になり、現在では元々の意味での漫画と劇画の境界は存在しない。従って現在ではセックスや暴力描写をタブーとしない青年向け作品を中心に、作家や出版社あるいは読み手の任意で劇画という呼称を用いている。

いずれにせよ劇画のほとんどはシリアスなストーリー作品だが、いわゆるギャグ漫画の一部に劇画調の画を取り入れるという手法もしばしば用いられる。古くは赤塚不二夫、藤子不二雄A、みなもと太郎などに見られる。また全編通して劇画調の絵によるギャグマンガや四コマ漫画、例えば泉昌之、田中圭一の初期作品や野中英次の作品など、もある。

[編集] 描画

漫画的な絵(左)と劇画的な絵(右)(古典的な表現)

劇画調な絵といっても作者によって様々であるが、一般的に「写実的な表現」と「ダイナミックな描線」という特徴がある。

頭身(頭に対する身長の比)が現実の人間と近い。また、人体のパーツは原則として省略しない。たとえばギャグマンガではよく首を描かないことがあるが、劇画ではそういうことはない。

描線の点では、おもにGペンを使用し、強弱のついた描線によって迫力のある画面を構成する。動線や筋肉表現などにも多くの線を使う。

したがって初期の手塚治虫のようなかつてのまんが絵に比較すれば写実的といえるが、大友克洋のような抑制の利いた表現に比べれば、漫画的な誇張やデフォルメの大胆さは一目瞭然である。そのため、1980年代以降、大友克洋の影響を受け一般的になった丸ペンを中心にする細い線の場合は、劇画的様式を重苦しいとして避け、軽い表現が好まれることもあって、あまり「劇画的」とは思われない。

一般的に「漫画的表現」よりも「劇画的表現」の方が高度であり、上手い絵だと思われる傾向があるが、描線の少ない漫画的表現には特有の難しさがあり、どちらが簡単だとは一概に言えない。