運転指令所
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運転指令所(うんてんしれいじょ)とは、鉄道において列車乗務員、駅等に業務指示をしたりする現業機関である。呼称は事業者や業務内容により異なる。運輸指令所(うんゆしれいじょ)と呼ぶ事業者もある。
JRにおいては、JR各社ともに本社内あるいは支社の社屋内に指令所を設置している。自前の線路をほとんど持たないJR貨物にも「貨物指令」があり、各地域の旅客会社の指令所に併設されている。また、私鉄、第三セクター鉄道においても、JRと同様に各鉄道会社の本社屋や主要駅の駅舎内などに指令所を設置している場合が多い。なお、大部分の鉄道会社はテロ、犯罪関連、運行妨害等の防止のため詳しい所在地は公表せず、一般人はもちろん指令業務に携わらない社員さえも許可が無ければ入れぬ様、厳重に管理されているのが殆どである。
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[編集] 業務
列車乗務員や駅など現業に対する指揮、指示が業務であるが、事故など異常がなければ列車の運行状況や機器の動作の監視が主な業務となる。一旦ダイヤの乱れが発生すると、ダイヤの整理、振替輸送の依頼、設備の復旧作業指示、場合によってはバス代行の手配等多忙な状態となる。
[編集] 指令員
指令所で指令業務を行う職員のことを、指令員という。特に、列車の運行に直接関わる輸送指令(後述)で従事する指令員を輸送指令員または運輸指令員という。輸送指令員は日本の場合乗務員経験者・助役出身者が多い。これは指令員が乗務員経験者であれば路線の線路配線や線形などに精通しており、迅速且つ的確に指令に関する判断が出来るという考えからである。
日本国外(スペインなど)では乗務員の経験がない指令員も多い。指令の仕事に乗務員の経験は必ずしも必要ではないという考えがあるためである(ヨーロッパでは職種別に採用を行い、運転系と営業系、現場系や事務系は採用段階で分かれていることも多い)。
[編集] セクション
指令業務は、内容によりセクションを細分化している事業者が多い。そのセクションの分け方や呼称は事業者により異なる場合があるが、代表的なセクションと業務内容は以下の通り。
- 輸送指令
- 駅や管下のCTCセンターなどから情報を得、列車がダイヤ通りに運行されているか常時監視。列車の遅れなど異常事態が発生した際には、臨時速度規制などの措置の指示を行い、平常ダイヤへの早期復旧調整などを行う。列車の運行に直接携わる、指令所の中で最も中心的なセクション。
- 旅客指令
- 列車の接続手配や乗客の忘れ物の捜索手配など、乗客からの問い合わせなどに対応。緊急時には車両手配、接続手配、代替輸送の手配等を行う。
- 運用指令
- 車両や乗務員の運用を監視・把握。ダイヤの乱れ等の緊急時には輸送指令などと検討のうえ、予備の車両や乗務員を手配する。
- また車両故障発生時には、列車乗務員への応急処置のアドバイスも行っている。
- 電力指令
- 信号通信指令
- 施設指令
- 線路や沿線施設、沿線の気象状態を常時監視し、大雨・強風・地震など異常発生時には運転見合わせ手配や速度規制の指示、線路設備や沿線設備の保守を行っている保線区などに巡回点検の指示や復旧手配を行う。
- 貨物指令
- 主に管内路線に貨物列車が運行されている指令所に設置され、検査貨車等の回送手配や、発送需要による全国的な空コンテナの操配、列車乱れ時の手配等を行っている。ただし、貨物列車の運行主体会社には運行管理権が無いため、列車遅れ時でも旅客会社がダイヤを決定している。なお、機関車の運用手配は、貨物会社の機関車であっても各旅客会社が行っている。