列車無線
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列車無線(れっしゃむせん)とは、列車の乗務員と運転指令所等が音声通話する際に用いられる無線である。鉄道無線の一種である。
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[編集] 概要
基本的には、列車乗務員と運転指令所等が情報提供や状況報告の連絡をするために用いられる。
特に鉄道においては、鉄道事故発生の際は多くの人命に関わる事態に発展する可能性があるため、列車乗務員と運転指令所等が直接連絡をとることが出来る列車無線の整備は、鉄道事業者にとって極めて重要である。
[編集] 電波伝送方式
- 空間波無線方式(SR方式)
- 誘導無線方式(IR方式)
- 漏洩同軸ケーブル方式(LCX方式)
[編集] 周波数について
周波数は主にVHFやUHFを使い、隣接する鉄道事業者同士では別々になっているが、遠隔地の鉄道事業者とは同じ周波数になっている場合もある(列車無線に用いられる周波数の割当てが少ないため)。なお誘導無線方式使用地区では、近隣の鉄道事業者であっても同一周波数を使用している場所もある(例:東京都交通局都営地下鉄浅草線と北総鉄道北総線)。
全国組織であった国鉄を前身にもつJRグループでは、JR会社間の直通運転も全国的に多数運転されていることもあって、国鉄時代に使用していた周波数を現在でも全社共通で使用している。
なお、具体的な周波数は総務省が公開しており、電波利用ホームページ(地域周波数利用計画策定基準一覧表の備考 付表C)で閲覧することが出来る。
[編集] 新幹線
デジタル無線:在来線のデジタル列車無線導入に先駆け、2002年11月より東北・上越新幹線で導入されている。従来のアナログ式に比べ音声用・データ通信用のチャンネルが増加し、データ通信時の転送速度も従来の1.2kdpsから最大64kdpsに向上した(データ量の少ない通信用として最大9.6kdpsに抑えたチャンネルもある)。 データ通信用に扱えるチャンネルが増えたことから、在来線の運行情報配信、文字によるニュースやPRの表示、モニターを使用した乗務員向け通告伝達、指定席の券売・利用状況の伝達などに利用されているほか、車両故障時にモニターに表示された情報を運転指令所に転送することもできる。 また音声用は運転指令所との通話のほか、旅客一斉情報装置からの音声も受信・録音できる。
2009年春をめどに東海道新幹線は導入を予定している。
[編集] JR在来線における方式のちがい
JR在来線においては、Aタイプ・Bタイプ・Cタイプと3種類の方式がある。
- Aタイプ:列車無線のうち、複信方式のものを指す。1981年に、山手線と京浜東北・根岸線のATC導入と共に配備されたが、国鉄分割民営化後に首都圏の他線区やミニ新幹線にも導入された。特に首都圏の在来線に配備されたものは新Aタイプと呼ぶこともある。基地局が352MHz帯、移動局が336MHz帯にそれぞれ対となる8チャンネルが割り当てられ、路線ごとに使い分けしている。なお、通話の無いときは、基地局から空線信号を出している。
- Bタイプ:列車無線のうち大都市圏を中心に配備されたもので、半複信方式である。Aタイプのうち5チャンネル分を路線ごとに使い分けしている。Aタイプとは通信方式の違いのみで、上位互換がある。Aタイプ同様、通話の無いときは基地局から空線信号を出している。
- Cタイプ:鉄道無線の乗務員無線を参照。
- デジタル無線:JR東日本では、首都圏の新Aタイプ区間のほとんどを2007年度から3年間でデジタル化の予定。機能や受話器、使用周波数はほとんど新Aタイプと変わらないが、運転台のモニター上に通告内容が表示できるようになるなど、デジタル化により容易となるデータ通信にも対応する。
[編集] 私鉄
大手私鉄では、ほとんどで列車無線を導入しているが、中小私鉄では未整備のところもある。一般的に、運転本数の多い路線は複信もしくは半複信、運転本数の少ない路線は単信が導入される傾向がある。特に首都圏では、基地局にMSKによる空線信号が出ているところが多い。この方式を、メーカー名からNEC式私鉄列車無線と呼ぶこともある。
また、無線導入後の国鉄やJRから分離した第三セクターや、JRとの直通運転を頻繁に行う路線では、JRと共通の無線設備を導入しているところが多いほか、地下鉄との直通運転を頻繁に行う路線では、誘導無線を導入しているところもある。
このほか、つくばエクスプレスでは、日本で最初となる在来線のデジタル多重無線を2005年の開業時から導入している。
[編集] 地下鉄
トンネル内に電波を送るため、長波を使った誘導無線が使われる。最近では、長波よりも安定した通話やデータ伝送を行えるVHFを使うため、LCXをトンネル内に敷設している路線も増えてきている。
[編集] 傍受について
聴くだけであれば違法ではないが、その内容を第3者に公開することは以下の通り電波法で禁じられている。
- 第59条(秘密の保護)「何人も法律に別段の定めがある場合を除くほか、特定の相手方に対して行われる無線通信を傍受してその存在若しくは内容を漏らし、又はこれを窃用してはならない」
“別段の定め”とは、関係機関に通報しなければ人命に関わる事態が発生すると予想される、遭難通信・非常通信などに関する規程の事。
[編集] 関連項目
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