鉛フリーはんだ
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鉛フリーはんだ(なまりフリーはんだ:Lead-free solder alloy)とは、鉛を含まないはんだのこと。
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[編集] 概要
鉛と錫の合金であるはんだ(いわゆる含鉛はんだ)も電子回路などの基板に電子部品を搭載するために大量に使用されているが、鉛は人体に有害であるばかりか自然環境に対する悪影響も強い。含鉛はんだの代替品として、鉛を含まない鉛フリーはんだというはんだの開発、普及が進められている。
[編集] 弊害
鉛フリーはんだは下記のような問題点があることから2006年時点では含鉛はんだを完全に置き換えるまでには至っていない。
- 合金の溶融温度がこれまでより数十度上昇するため、素子の熱破壊や劣化の危険性が高くなる。
- 融点が高い種類の鉛フリーはんだでは、従来の共晶はんだ用に温度固定されたはんだごてでは温度が低く使用出来ないため、対応したこてを使う必要がある。
- 手作業によるはんだ付けにおいて、適切にハンダ付けされていても表面に艶のあるはんだ面と成らない(引け巣)ため不良との区別が付きにくく、実際の不良を見逃しやすくなるおそれがある。
- 機械によるはんだ付けの場合は、従来の鉛を含むはんだと組成が異なるために自動はんだ漕を化学的に浸食して穴を開けるなどの問題エロージョンが発生し、それを防ぐためにはんだ槽材質の変更が必要となる。
- 含鉛はんだと比較してウィスカー(針状の金属結晶)が発生し易くなり、ウィスカーによる端子間のショートによるトラブルが問題となる(特に嵌合時に応力が掛かるコネクタ類の端子に発生し易い)。
- エロージョンと同じ現象により、プリント配線板上においても銅パターンやスルーホールが鉛フリーはんだにより溶解される銅食われが発生することがある。銅食われが悪化すると断線や信頼性が低下する。
- 共晶はんだに比べて経年劣化や接続信頼性など、対環境性が低下することがある。
欧州連合はRoHS指令として、2006年7月1日から鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭化ビフェニル、ポリ臭化ジフェニルエーテルの電子・電気機器への使用禁止を予定している。これにより、2006年以降、従来の鉛を含むはんだは欧州連合内に輸出するパソコン、テレビ受像機などへの使用ができなくなる。このため、各メーカーで鉛フリーはんだへの切り替えを進めている。
[編集] 材質
鉛フリーはんだは使用される金属の種類により数種類ある。 スズ・銀・銅やスズ・ビスマスの合金が多く利用されている。
- SnAgCu系:Sn(錫)、Ag(銀)、Cu(銅)を含むもの。加速試験などの対環境性に優れるが一般的に融点が最大220℃程度と高いためプリント配線板や部品への影響を考慮する必要がある。電子情報技術産業協会(JEITA)はSn-3.0%Ag-0.5%Cuを標準組成として推奨している。
- SnZnBi系:Sn(錫)、Zn(亜鉛)、Bi(ビスマス)を含むもの。融点は共晶はんだと同等の183℃近辺だが、SnAgCu系に比べて加速試験などの対環境性に劣ると言われている。
- SnZnAl系:富士通が開発したもの。米国特許(Patent No.:US 6,361,626 )取得
- 上記鉛フリーはんだの問題点である引け巣の発生しにくいSn/Cu/Niはんだというものもある。