鉢巻
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鉢巻(はちまき)とは、主に日本において精神の統一や気合の向上のために用いられる、頭に巻く細長い布である。通常は赤や白の古びた綿の布が用いられることが多い。大きさは、通常幅約5cm、長さ120cm程度のものが多い。 主に男性が着用するが、最近では女性も多く用いる。 また、布を堅くよじってロープ状にしたものは「ねじり鉢巻」と呼ばれる。
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[編集] 用途
精神統一や士気の向上が必要な多くの場合に用いられるが、典型的な着用例としては運動会の選手や応援団員、入学試験に向けて勉強中の受験生などが挙げられる。
また、騎馬戦のメジャーなルールとして、騎手役の選手が着用し、他の馬に鉢巻を奪い取られたら敗北、というものがある。
この場合を含め、鉢巻は帽子と共に色によってチームを識別する、簡易ユニフォームの役目を果たすことがある。この場合は、頻繁に色を変えることを想定して、紅白鉢巻と呼ばれる裏表でそれぞれ色の違う、リバーシブルなものが使用される。
また、アイドルや声優等のライブコンサートにおいても比較的安価なため、応援の目的でサイリウムと共に広く用いられる。基本的には形状・目的は従来のものと同じだが、対象を象徴する色として、赤や白以外の色が用いられる場合も多くある。
[編集] 模様・文字
基本的に模様はないが、参加している社会運動やイベント、信念に関係しているスローガンやモットーなどの文字が書き込まれる場合がある。また、中央にシンボルマークや紋章などを配置する場合がある。
また、写真のようなねじり鉢巻は、祭礼での使用や板前、土木建設業作業員が使用する場合が多く、文字などは見えなくなってしまうため、書き込まれないことが多い。
[編集] 歴史
鉢巻の起源は神話上、アメノウズメ命が天岩戸から天照大神を誘い出す際に額にツタを巻いたことに求められる。
もちろんこの神話は後世の創作であろうが、出土品などから鉢巻の起源は古墳時代頃まで遡れるであろうと考えられている。 初期の鉢巻は神話のように、自然の植物を巫女などが髪に巻いて神々を招く目的に用いたものといわれている。
天皇家が日本の統治者となってからも、その名残としてか重要な神事の際には天皇のみ冠の上から額に白い布を巻く風習が近代まで続いた。
中世(鎌倉中期以降)において武士が戦闘の際に着用した鉢巻は、鳥帽子の上から鉢巻を締めてその上に兜を被っていた。 後に足軽などの簡易な戦闘スタイルとなり、額を割られないないめの鉢金を付けたものが出現した。
鉢巻は普通無染色のものを用いたが、江戸時代には、漢方薬としても用いられる染料の紫根で染めた絹を病気平癒のために巻く病鉢巻を、歌舞伎「助六由縁江戸桜」の舞台上で主人公の勘気封じとして左右逆に締めさせた姿が粋だともてはやされた。
幕末の新撰組などは大型の鉢金を付けたものを使用していた。また武器である手裏剣を挿すなどしても使用されることもあった。
第二次世界大戦において、日本軍の戦闘機や攻撃機のパイロットが日の丸と「必勝」や「七生報国」と書いた物を用いた。現在では世界中に広がりアラブゲリラ等が「神(アラー)は偉大なり」のスローガンを書いたものを使用している。