降下救助員
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海上自衛隊の回転翼航空士「センサーマン」の副任務。SH-60JまたはSH-60Kに搭乗している。レスキュースイマーとも呼ばれる。
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[編集] 経緯
海上自衛隊では平成5年頃から、降下救助員の養成を開始した。当初は、厚木航空基地でのアメリカ海軍機の夜間飛行訓練に対する支援策の一環であったが、次第に任務領域を拡大していき、友軍の救助のみならず、民生支援も考慮されている。従来のヘリコプターからの救助方法は、ホイストと呼ばれる救助用ウィンチにスリング(救命浮環)を装着し、遭難者を揚収するものであったが、遭難者が自力で救命浮環を捉えることができない状況も容易に想像できる。そこで、センサーマンが降下遊泳し、遭難者を救助するよう任務が追加されていった。
降下救助員は、精神的にも体力的にも強靭であり、自ら志願して特別警備隊で活躍する者もいる。センサーマンは、この降下救助任務を追加されたことで「エイトマン」と呼ばれるようになった。これはSS-1(ソナー員)、SS-3(レーダー員)、機上通信員、フライトエンジニア、機上電子整備員、機上武器整備員、ロードマスターとしての任務に加え、降下救助任務が付与されたからである。
創設時には、米海軍救難ヘリコプター部隊、海上自衛隊救難飛行隊、第1空挺団などで基幹要員の訓練が行なわれた。現在は各航空隊で自隊養成が行なわれている。実任務を想定した養成訓練は、隊員から地獄の特訓と称され、陸上自衛隊のレンジャー訓練に並ぶものとされている。また、厳しいエリミネート基準もあり、要員養成の厳しさについては、海上保安庁と比肩しうるとも言われる。
航空自衛隊の救難作業では、フライトエンジニアがホイストウィンチを操作し救難員が要救助者を確保するが、降下救助員は、降下救助員2名でこの任務を行なう。
平成16年の丹後由良川大洪水では、舞鶴航空基地の降下救助員がバスの天井部に取り残された被災者を救助した。
[編集] 採用基準
- 海上自衛隊航空電子整備員(センサーマン)である男性曹士隊員。
- 教育航空隊を修了し、部隊配属後約2年以上経過したもの
- IQ 250以上
- 連続水泳能力 800m以上
- 潜水能力25m以上
- 呼吸停止 1分以上
- 自由形50m 48秒未満
- 平泳ぎ50m 52秒未満
- 立ち泳ぎ 5分以上
- 赤十字水上安全法救助員受講者(部内養成者を含む)
- 訓練最終日には、ヘリコプターからの海上へ夜間降下救助を実施する。
[編集] 装備品
降下救助員には、救助用の特殊装備が付与される。
- 水中眼鏡、シュノーケル、足ひれ
- ウェットスーツ(寒冷時はドライスーツを使用)
- 無線機
- 救助用スリング(救命浮環)
- スキューバダイビング用具一式