零売
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零売(れいばい)とは、医療用医薬品が、医師等の処方箋に基づくことなく、市中のドラッグストア等で売買されることをいう。
2005年3月までの要指示医薬品、同年4月以降の処方せん医薬品は、原則として零売することはできない。分割販売と称するものもいるが、これは医薬品の包装等を開封して、個々の患者の必要量だけを分割して販売することに由来する。
処方せん医薬品への薬事法改正は、この零売を防ぐことを一つの目的として実施された。しかしながら、いまなお医療用医薬品に処方せん医薬品以外の医薬品が数多く存在し、それらの医薬品については、零売が留まることのないのが現状である。
2006年の薬事法改正(2009年施行予定)により、医療用医薬品の小売りは薬局にのみ認められ、ドラッグストア等での販売は禁止されることとなった。
同一成分の薬剤の、薬価基準に収載されている医療用医薬品の薬価と、一般用医薬品(OTC)の希望小売価格を比較すると、多くの場合医療用医薬品の薬価の方が安く設定されている。これは本来、保険医療における患者の負担を軽減するためにそのような設定がなされているのだが、この安価な設定を利用し、医療用医薬品の薬剤の方が同一成分の一般用医薬品より安いことを示して、本来企図されていない医療用医薬品の販売を行うものが見られ、問題となっている。
処方箋に基づいて医療用医薬品を販売する場合には、多くの患者が保険医療に拠っているため、薬価基準に従う必要性が生ずるが、医療用医薬品を零売する場合には、薬局や医薬品販売業者の裁量による価格設定が可能である。そのため、医療用医薬品と一般用医薬品で同一成分の薬剤が発売されている場合、前述のように多くの場合医療用医薬品の薬価の方が安く設定されていることから、薬局や医薬品販売業者は、医療用医薬品を薬価よりも高く、一般用医薬品の価格より安い価格で販売することで、多くの差益を得ることができるものと考えられる。ゆえに、零売は減少傾向にあるとは言え、いまだ多くの薬局や医薬品販売業者により行われているのが実情である。
医療用医薬品には、一般に、日本商品分類番号・承認番号・薬価収載などの記述のある添付文書が添付されている。このような添付文書を添付されている医薬品は、ドラッグストア等でも少なからず販売されているが、これは医療用医薬品であり、本来は医療行為に用いられることが企図されている医薬品である。