額縁放送
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額縁放送(がくぶちほうそう)とはデジタル放送のテレビ受像機視聴において映像が画面の中央部に枠付きで一回り小さく表示される現象。
2006年現在は、16:9ワイドサイズ画面テレビと4:3スタンダードサイズ画面テレビの移行過渡期にあたり、4:3型テレビで地上デジタル放送番組を視聴する場合は、額縁放送となる番組の放送形態が半数近くに及ぶ状態にあり、4:3型テレビの所有者には極めて不評となっている。また、ワイド型テレビの視聴では、深夜アニメや古い映画作品を中心に、額縁放送の枠部分がさらに多いスーパー額縁放送(後述)と呼ばれる形態も見られる。特にスタジオジブリの映画作品では意図的な「スーパー額縁放送」(HD映像の違法なネット配信等を懸念しているためといわれている)が行なわれており、テレビ局に対する不満が多く寄せられている。
[編集] 原因1. 画角情報によるもの
この現象は縦横比(但し表現は横:縦)4:3画面サイズのテレビ(テレビ受像機・モニターなどの画像表示装置。以下、単にテレビと省略)でのみ発生する。
デジタル放送においては、16:9のワイド画面サイズでの視聴を前提としている。そのため、4:3の映像を放送する場合、放送局側は16:9の画面比率に合わせるため、映像の左右に黒い帯を付加する(番組によっては、左右に番組タイトルやお知らせなどの映像を付加することがある)。
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この映像をワイド画面サイズのテレビで視聴する場合は映像信号の縦横比と表示画面の縦横比が一致しているため問題はないが、4:3の標準画面サイズテレビで視聴する場合、16:9の映像を4:3の画面に表示させるため、チューナー側で映像の上下に黒い帯を追加する(この状態をレターボックスと呼ぶ)。結果、四方に黒い帯が付き、額縁がついたような映像になってしまう。これが額縁放送である。
この問題は、デジタル放送におけるハイビジョン映像信号の4:3識別信号(通常は画角情報とよばれ、放送信号の映像フォーマットのアスペクト比情報とは別な付加情報)を放送局側が正しく運用することで解決できる。
4:3識別信号の運用やその運用に因る影響などの詳細については、画角情報の記事を参照のこと。
ユニデンなどが発売している地上デジタルチューナーは、画角情報にかかわらずパンスキャン(4:3の画面サイズいっぱいに拡大)表示する機能があり、額縁状態を避けることが可能である。(※ユニデン製チューナーの場合は画角情報の識別に対応しておらず、常に手動での切り替えが必要。)
[編集] 原因2. 映像ソースによるもの
この現象はワイド画面サイズのテレビと4:3画面サイズのテレビの両方で発生する。
映画などの映像ソースはワイド画角であるが、アナログ放送では画面比率4:3が標準であったため、放送局の映像ライブラリには、上下に黒い帯を付加して4:3画面に合わせたもの(レターボックス)が数多く存在する。
これをデジタル放送で放送する場合、
- そのまま画角情報4:3の映像として送出する
- 放送局側で映像の左右に黒い帯を付加して画角情報16:9の映像として送出する
の2通りの方法がある。
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前者の場合は、ワイド画面サイズのテレビではチューナー側で左右に黒い帯が付加され、結果的に上下左右に黒い帯が入った額縁状態となり、
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4:3画面サイズのテレビでは単に上下のみに帯が入る通常のレターボックス放送(ソース映像通りに表示)となる。
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後者の場合、放送局での送出前の映像で既に額縁化が発生しており、ワイド画面サイズのテレビで額縁放送(ソース映像通りに表示)になるほか、
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4:3画面サイズではハイビジョン映像(画角情報16:9)を受信したと認識する事で、元の額縁状態の映像にさらにチューナー側が上下に黒い帯を付加する、いわゆる「スーパー額縁放送(超額縁放送)」という表示状態になる。
2003年12月の地上デジタルテレビジョン放送開始時に、総務省からアナログ放送のサイマル放送でもデジタルハイビジョン放送の割合向上の指示が出た。このため民放の放送局は従来のSD映像の横に黒帯を入れて16:9の信号に変換して送るアップコンバート方式のハイビジョン番組を当初は多用し、全画面表示されないアップコンバートハイビジョン「スーパー額縁放送」映画が民放では多く放送されていた(地上デジタルテレビジョン放送を参照)。
映像ソースが原因で発生する額縁問題の根本的な解決策としては、映像ソースから黒枠部が見えなくなり画面全体に表示される程度までズームするようなアップコンバート等が考えられるが、「著作者に無断の映像の加工にあたる」という解釈がある為、著作権上の問題を回避する目的であまり採用されていない。一方、同じ番組であっても放送局によってズームで放送するところと額縁状態で放送するところがある。