高炉
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高炉(こうろ、blast furnace)は製鉄所の主要な設備で、鉄鉱石から銑鉄を取り出すための炉。溶鉱炉と呼ばれることもある。大型のものでは高さ100メートルを超え、製鉄所のシンボルとなっている。
銑鋼一貫製鉄所という、鉄鉱石から高炉、転炉、連続鋳造工程を経て最終製品を生産する大規模な製鉄所のみが高炉を所有している。このような製鉄所を持つ鉄鋼会社は高炉メーカーと呼ばれている。
目次 |
[編集] 高炉における生産プロセス
製鋼プロセスの例 |
鉄鉱石 |
高炉:鉄鉱石から銑鉄を取り出す |
溶銑予備処理:不純物を酸化させる |
転炉:不純物を取り除き鉄鋼にする |
二次精錬:成分を微調整する |
連続鋳造:一定の形の半製品をつくる |
圧延:半製品を加工して所定の形状の製品にする |
出荷 |
高炉上部から、鉄鉱石等の原料と、コークスなどの燃料、石灰石を入れ、下部から高温で熱する。内部ではコークスが燃え、鉄鉱石を溶かし、そして炭素による鉄の還元反応が起こる。こうして鉄鉱石は、銑鉄とスラグに分離される。また、最近は上部から入れる燃料の中に古タイヤを入れる事もある。
高炉で産出された銑鉄は溶銑予備処理を施した後、転炉へ入れられる。転炉で銑鉄は鋼鉄へと転換される。
[編集] 主な反応
- 炭素の燃焼
- 鉄の反応をまとめると、以下の式になる。
上の式を細かく分けていくと、以下のようにして還元反応が進んでいる。
この反応プロセスは、温度Tによって異なる。
- 320℃ < T < 620℃
- 620℃ < T < 950℃
- 950℃ < T
[編集] 不純物の除去
原料鉱石には SiO2 などの不純物が存在する。これを取り除くために高炉中に石灰石(主成分 CaCO3)を入れ、以下の反応により粘性が小さく除去しやすいスラグを生成する。スラグはCaSiO3などの形となって生成する。
なおこの反応のプロセスは以下のとおりである。
[編集] 歴史
現在知られている最も古い溶鉱炉は、中国の前漢時代(紀元前1世紀頃)のものとみられる。しかし、紀元前5世紀頃と見られる鋳鉄が中国で発見されており、それよりも古い溶鉱炉があった可能性がある。初期の溶鉱炉は、内壁が粘土で作られており、リンを含む鉱石を使用していたと見られる。西洋における最初の溶鉱炉は、スウェーデンで1150年から1350年の間に作られたらしい。この溶鉱炉が、独自の技術で作られたのか、モンゴルからもたらされた技術によって作られたのかははっきりしていない。
コークスを使う近代的な高炉が最初に作られたのは1709年で、エイブラハム・ダービーによって開発された。ヨーロッパの森林破壊によって木炭が減少し、そのために石炭が使われたのであるが、その結果製鉄のコストが大幅に下がることになった。
日本における最初の近代高炉は、釜石市の大橋高炉である。南部藩の大島高任が設計・操業に携わり、安政4年(1857年)11月26日火入れ、12月1日初出銑に成功する。この日はのちに鉄の記念日に制定された。 これが日本の近代製鉄の始まりである。なお、大島はオランダ人ヒューゲニンの著作を「鉄熕鋳鑑」として翻訳したが、この際に「hoog oven」を「高炉」と訳し、以後この表記が現在に至るまで使用されている。